2024年05月19日( 日 )

グローバリスト政府が強弁する「民主的プロセス」の実態〜仏年金改革法成立

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 フランスではここ3ヶ月、マクロン政権が打ち出した年金改革法案をめぐり、国民の激しい抗議行動が全土で繰り広げられてきたことは本サイトでも既報の通りである。

 さらには、これに対して政権が、憲法49条3項の特例規定(財政や社会保障に関わる法案について、首相は議会での審議を中止し、議員たちの採決を経ずにこれを成立させることができるという規定)を用いて強行突破の暴挙に出るかたわら、市中に重装備の機動隊を大量に投入し、理不尽を叫ぶ人々に放水車と催涙ガス、さらには棍棒を以って応えるようになったことも(「フランス革命、ふたたび?!」3月31日付)。

 野党や超党派グループは「問責決議動議」で対抗するも、3月20日、国民議会(下院)において僅差で否決された。さらには国民投票実施のための法案を提出する、違憲立法審査機関である「憲法評議会」に訴え出るなどしたが、4月14日、大統領、国民議会議長および元老院(上院)議長が3名ずつ任命した合計9名の評議員は、年金改革法案の大部分を合憲と判断。翌15日朝、マクロン大統領が署名し、国民の4分の3が反対するこの法律はついに成立したのである。

 同日、エリザベート・ボルヌ首相は与党内の会合で演説を行い、これが「民主的プロセスを踏んでいった、その終着点」であると述べつつ、満足の意と「諸改革をいっそう加速していく決意」を表明した。週明けの17日午後8時(現地時間)にはマクロン大統領からも同趣旨の演説が聞かれよう。だがこの週末、首都パリはじめ、主要都市のそこかしこで繰り広げられていたのは──ご覧あれ、これがグローバリストらが標榜するところの、「民主的プロセス」の正体だ。

「フランス・パリにて、金曜日、政府の年金改革法案の合法性に関する憲法裁判所の裁定が下されるにあたり、抗議者たちが集結するデモでみられた光景」
 

「催涙ガスから逃れようとするデモ参加者の一群に、警棒が雨あられと打ち下ろされる。パリでは緊迫した状況が継続中」
 

「『とっとと消えうせろ!さもなきゃ棍棒喰らわせるぞ!』 彼女の友人によれば、この若い女性はまず地面に押し倒され、その後一人の“ロボコップ”に乱暴に地面に叩きつけられた(4月13日、ナントにて)」
 

「パリ・バスティーユ広場にて、デモ参加者と警官隊との間で生じた、双方が拳を振り上げての激しい衝突(4月13日)」

 法案は成立してしまったが、国民の徹底抗戦の姿勢は微動だにしないどころか、ますます先鋭化の度を増している。新たな戦術として、法案を撤回しなければ2024年パリ五輪を開催不能に追い込もうとの呼びかけが、SNS上で目下拡散中。マクロン失脚まで一歩も引かぬ構えのフランス国民の闘いぶりに、わが日本国民は何を感じ取るだろうか。

「ハッシュタグ#PasDeRetraitPasDeJO(法案撤回なくば五輪なし)がSNSで上昇中。2024年パリ五輪開催に暗雲が漂い始めた」

【黒川 晶】

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