2024年05月16日( 木 )

激変する業界環境で勝ち組目指す

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(株)大建設計
執行役員・九州事務所長 湯原 洋史 氏

 意匠・建築構造・建築設備・エンジニアリングシステムなど、総合的な計画・設計を得意とする組織設計事務所・(株)大建設計。九州においても幅広く事業を展開している。今年1月、九州事務所長に就任した執行役員・湯原洋史氏に、設計事務所の視点から見る福岡および九州の建設業界のこれまでと現状について、話を聞いた。

大建設計が設計を行った鶴丸海運㈱本社ビル(北九州市若松区)
大建設計が設計を行った鶴丸海運(株)本社ビル
(北九州市若松区)

独特な九州建設業界

 ──九州の建設業界に関わるようになって10年以上になるとうかがっています。これまでどのような経験をされてこられましたか。

 湯原 私が九州事務所に赴任したのは2009年で、当初は九州の建設業界の独特さに驚かされました。それは、行政やデベロッパー、施工関係者、各種メーカーなど、どの分野でも仲間意識が強く、仲間を大切にすることです。ただ、当初は信頼関係を築くのに大変苦労しました。さまざまな方々に助言をいただき、福岡市内にマンションを購入し、住民票も移して「本気で福岡で暮らしていく」ことを示したことで、ようやく聞く耳をもってくれる方が増え、仲間として認識していただけるようになりました。それは赴任から3年ほど経ったころでした。

(株)大建設計
執行役員・九州事務所長 湯原 洋史 氏

    開発のスピード感の違いにも戸惑いました。当時は天神ビッグバンがアナウンスされたばかりの時期でしたが、現在の再開発ラッシュまでには、やや時間がかかり過ぎた印象があります。ただ、今ではどんどんと新しい建築・建設の展開が生まれており、そのことについては驚きをもって眺めています。

 再開発で大規模オフィスや高級ホテルなどが建設され、雇用やインバウンドの拡大が見込まれます。なかでも訪問客が増えていくことには、大変注目しています。また、今後はベイサイド周辺も大きな変化を迎え、さまざまな建設案件が創出されるだろうと期待して見ています。

 ──九州全体で見るといかがですか。

 湯原 やはり注目しているのは、熊本県のTMSC半導体製造工場の建設を中心とする開発です。基礎工事の際には、九州にあるすべてのくい打ち機が集められたと聞きました。その結果、福岡県内の現場工事がストップしたともいわれました。私も現場を何度か視察しましたが、なかでもクレーンが異常な数で立っている様子には強い衝撃を受けました。周辺にはホテルや商業施設、マンション、学校、病院、保育施設などが次々に計画されており、総開発規模は1兆円を超えるビッグプロジェクトになると見られています。それは、福岡の再開発をも上回るスケールとインパクトであり、熊本の建設業界はまさに今、「旬」といえる状態になっているものと考えられます。

大建設計のホームページ
大建設計のホームページ

原価高騰で業界二極化へ

 ──福岡県内の建設業界は、改めてどのような状況にあると見ていますか。

 湯原 工事費や資材価格などの高騰も影響し、入札不調が激増しています。その結果、公共工事が激減しています。原価高騰などで、工事価格は従来の坪単価100万円が150万円になるケースもあります。電気代も同様で、そのため溶接工事にも大きな悪影響があるようです。そうしたことから、各自治体の予算をオーバーし、入札不調という結果を招いています。

(株)大建設計 執行役員・九州事務所長 湯原 洋史 氏    ──そうしたなかで、御社ではどのような展開を行おうとしているのでしょうか。

 湯原 当社の強みの1つに、プラント事業における設計業務があります。とくに福岡市周辺は人口増加が続いていますから、自治体などはそれに対処しなければならず、今後も安定的な事業継続が見込まれます。また、福岡の建設業界では、新築から改修へのシフトが顕在化しつつあります。そこに合わせて当社も、学校や病院、大学などさまざまな大型建築物に関して、設計だけではなく大型改修や調査も行うことで、収益の拡大を図ろうとしています。

 福岡の建設業界は今、大きな変化の時を迎えているように見られます。たとえば、これまで好調だったマンション市場は、価格高騰で縮小する可能性があります。建設業界では、今後の1年で勝ち組、負け組へと二極化していくことでしょう。当社としては、市場に合わせた設計業務を推進することで、勝ち組を目指していかなければなりません。

【田中 直輝】


<COMPANY INFORMATION>
(株)大建設計

代 表:菅野 尚教
所 在 地:東京都品川区東五反田5-10-8
      大建設計東京ビル
九州事務所:福岡市博多区住吉3-1-1
      富士フイルム福岡ビル
設 立:1948年4月
資本金:9,900万円
URL:https://www.daiken-sekkei.co.jp/

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