2024年05月05日( 日 )

債務51兆円、財政危機にあえぐ中国貴州省(前)

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貴州省 イメージ    新型コロナウイルスの終息が公式発表され、経済も急回復していると盛んに国営メディアが伝えている中国であるが、経済は決して楽観視できない状態である。貴州省政府は4月12日に、財政状態がピンチ、という緊張感のある危険なシグナルを発した。

 貴州省発展研究センターが発表した「債務返済がまるで進まず独力での解決は不可能」との記事によれば、掲載時点の2022年12月現在で、隠れ債務を除いた省の 「明確債務」は1兆2,470億元(約24兆2,930億円)に達しており、内訳は省政府の分が2,035億元、省内各都市の分が1兆435億元である。

 この「明確債務」とは、中国人民銀行(中央銀行)で計上される政府の債券である。中国人民銀行の金融データによると、2022年12月末現在の政府債券残高は60.2兆元、うち国債が約25.6兆、地方債が34.6兆である。このなかで、貴州省の分かおよそ3.6%となっている。

 こうした債務問題について貴州省発展研究センターは4月12日、すでに各地方政府で重大かつ喫緊の課題となってはいるが、省の財政状態から見て返済は極めて困難であり、独力での解決はもはや不可能と明言している。

 明確債務の1兆2,476億元は実は、すべて貴州省政府の負担分というわけではない。財政省や発展改革委員会が計上予定の政府債券のほか、他の地方政府同様、省内各地の地方政府が各種の政府系投融資会社(LGFV)を大規模かつむやみに利用して、都市投資債を発行し、銀行融資や委託融資、信託貸付などの規格外債務を得ている上、計上困難な未払い金も存在するからである。

 貴州省には、政府系の都市投資会社が2022年末現在で計277社あり、委託融資や信託融資などが計4,130億元余り、銀行融資残高が6,551億元、隠れ債務の残高がおよそ1兆3,676億元(約26兆6,877億円)となっている。

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 すなわち、2022年12月現在の省内各地方政府の債務は、1兆2,470億元の明確債務に1兆3,676億元の隠れ債務を加えて、およそ2兆6,146億元(約51兆円)ということである。

貴州省内各地方政府のの債務返済力はどれほどあるのか?

 政府の債務は公共債務なので、返済はいずれも税収、ファンド、国有資本の営業収入など公共歳入に頼る。2兆6,146億元の地方債務を貴州省の人口の3,856万人で割ると、1人あたりの負担額は6.78万元(約132万円)となる。貴州省の2022年のGDPは2兆1,466億元で、レバレッジ比率は先進国の地方政府の10倍前後となる122%に達する。

 2022年、貴州省の一般公共歳入額は1,886億元、政府系ファンドの歳入額は2,041億元で、合わせて3,927億元にとどまり、これに対する債務の割合は666%という驚くべきレベルに達している。

 それに加えて、貴州省自体が移転支出によって収支を賄っている貧困省なのである。2022年の一般公共歳出額は5,849億元であり、独力での歳入ではその67%分しか負担できない状態である。

 貴州省は2022年、中央政府からの移転支出で3,673億元を、政府債券の再発行で2,085億元(不含都市投資債務)を手に入れた。省内各地方政府の収支は、100元の出費に対して税やファンドでの収入が40.5元にとどまり、中央政府の負担が37.9元、そして残りの21.6元が借金である。

 さらに深刻なことに、明確債務のうち債券発行で2,085億元を得たが、その70.9%にあたる1,479億元を債務の元金支払いに費やしてしまっている。つまり成長に使える分か3割に満たないのである。

 2兆元を超える巨額の負担を返済するには、利息を免除したうえに各地方政府や公的機関が飲まず食わず頑張っても、80カ月を要する。

(つづく)


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