2024年04月15日( 月 )

【インタビュー】事務所の垣根を越え、中小企業を支援 連携が生む会計業界の新たな可能性

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(一社)共創経営推進機構
代表理事 山本 要輔 氏

 (一社)共創経営推進機構(通称:COMBO)は今年1月に新たに設立された一般社団法人だ。それぞれ異なる得意分野をもち、福岡、長崎、熊本に拠点を置く4つの会計事務所が共同出資し、4月から本格的に動き始めた。設立の背景には、税理士など士業を取り巻く環境が大きく変わっているという認識がある。設立の経緯や目指す目標などについて、代表理事の山本要輔氏に話を聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 緒方 克美)

組織の限界を超え、会計業界に新しい風を

 ──なぜ、(一社)共創経営推進機構をつくろうと思ったのでしょうか。

 山本要輔氏(以下、山本) いち会計事務所でできることに限界を感じるようになってきたことがそもそものきっかけでした。私はCOMBOの代表理事を務めさせていただく前から、IG会計グループにずっと勤めてきました。IG会計グループでは5年ほど前に事業承継があり、それにともない私は企業とともに伴走するいち担当者ではなく、営業責任者として新規開拓を任せられる立場になりました。さまざまな企業や経済団体、銀行と話す機会が増えたのです。直接話を聞くなかで、中小企業が抱えている問題の1つひとつがより難しく、スピード感が求められるようになってきていることを実感しました。今の時代、自分の事務所だけでクライアントの抱えている問題のすべてに対応することが厳しくなってきているわけです。専門性を増していく経営課題を解決するためには、一般企業とは別に会計事務所同士でも連携していかないといけません。

(一社)共創経営推進機構 代表理事 山本 要輔 氏
(一社)共創経営推進機構
代表理事 山本 要輔 氏

    私が所属するIG会計グループの「IG」は「intelligent group」の頭文字が由来になっています。これは自分たちの衆知を集めて、目の前のお客さまの困りごとの解決に貢献していくことを大事にしているという意味が込められています。要は、いち担当者の限界を組織の限界にしては駄目だということを表しているのです。個人でできないことがあるのならば、組織に持ち帰って皆で考える。それでも厳しい場合は、自身の会社とネットワークをもつほかの会計事務所にお願いしてでもお客さまのお悩みに貢献していかなければならない。私たちはずっとそういう考え方で仕事に取り組んできました。

 COMBOは私が所属するIG会計グループと、アイユーコンサルティンググループ、(税)アーリークロス、(株)優和マネジメントの4つの事務所がメンバーになっています。それぞれが特化した分野をもち、業界でも知名度を得ている事務所です。以前から事務所同士の関係性はあったのですが、もっと連携して何かできたら面白いのではないかと考え、思い切って声をかけさせていただいたのが始まりです。2年間ほどずっと水面下で動いており、ようやく今年1月に設立に至りました。 

 ──山本代表が初めに声をかけたのですね。 

 山本 はい。IG会計グループ代表の岩永經世に話してみたところ、共感してもらえたため、具体的に話を進めていくことになりました。岩永は9年前、東京で(株)日本BIGネットワークという会社を、未来会計に取り組んでいる会計事務所同士で共同出資して立ち上げています。現在、会員事務所は100事務所を超えており、研修を受け未来会計を事業化できた事務所が少しずつ増えているなど成果も現れていました。岩永はこの活動をより加速させていくためにも、地域会を新たに立ち上げたいという構想を練っていたようです。それがちょうど私の考えと親和性が高かったため、計画を進めていく後押しをしてもらえました。 

 COMBOが掲げる「倒産は博物館へ」という理念は、私自身の仕事観にもつながっています。私は母子家庭で育ちましたが、父が建築業を営んでいることは話に聞いていました。父が創業した会社は勢い良く成長したものの、衰退し倒産することになり、結果として父は倒産が原因で命を亡くしました。私は当時大学生で、この倒産によって数億円の借金が降りかかってくるかもしれないと言われました。俗にいう「負の相続争い」に巻き込まれたのです。最終的には弁護士に相談し、相続放棄をすることでことなきを得ましたが、私はこの経験を通して倒産がどのような問題を引き起こし、どのように人に影響をおよぼすのかを身をもって実感しました。私は倒産をなくしていかなければならないと考え、これをきっかけに会計業界に興味をもち、縁があって今のIG会計グループに入社しました。そこから17年間、MAS(マネジメント・アドバイザリー・サービス)監査という財務コンサルのサービスに携わっています。 

 ──弁護士や社労士も交えた総合的なサービスを提供する組織を目指す道もあったかと思います。COMBOのメンバーを会計事務所に絞った理由はなんでしょうか。 

 山本 COMBOの活動を通じて会計業界を盛り上げていきたいという面があるからです。先ほど述べたように、いち会計事務所が多岐にわたる業務のすべてをこなすことは難しくなってきています。さらに今後の業界の傾向として、100人を超える大きな事務所と10人にも満たない小さな事務所に分かれていくことが考えられます。リソースの限られる小さな事務所はなおさら、個別の課題に対応することの難易度が高くなっています。このように顧問業務の複雑さが増していくと、リスクも大きくなっていきます。年々会計業界を目指す人が少なくなってきているなかで、得られる報酬に見合わないような無理難題が課されてしまうと、業界はますます先細ってしまいます。AIが今後さらに発展していこうとも、経営者に寄り添いともに成長する会計人の仕事はなくなりません。COMBOは会計事務所同士の連携を促進することで、人材不足に悩む会計業界に変化をもたらしていくことも目的の1つにしています。

会員事務所、協業企業と中小企業の経営に貢献

 ──事業の構想についてお聞かせください。

 山本 COMBOでは会員事務所と協業企業、2つの方向から中小企業を支援していく構想をもっています。 

 1つ目は、会員事務所から依頼いただいた特殊業務をCOMBOの成員である4事務所が代行するというかたちでサービスを提供していきます。顧問業務を行っていると、承継や相続、DX、M&Aといった問題がその時々で立ちふさがってきます。COMBOに所属するメンバーはこういった特殊業務にそれぞれ特化した会計事務所です。顧問業務を担う会員事務所が、顧問先で自事務所では対応しきれないような専門性の高い問題に直面した際、依頼を受けたCOMBOがその業務を代行します。会員事務所は自身の得意とするコア業務に集中しつつ、クライアントに適切なサービスを提供することができます。自分たちの事務所では対応できない問題が目の前に生じたとき、クライアントを逃してしまう可能性も少なくなる。またCOMBOでは顧問業務ではなく、あくまで特殊業務を担うサービスを提供していく考えです。お客さまを取り合うのではなく、一緒に中小企業を支えていく仲間あるいは相談相手として活動していきたいからです。

 2つ目は、中小企業を取引先にもつ金融機関販売元やメーカーと業務提携するかたちを考えています。連携先の協業企業から経営課題を抱える取引先企業をCOMBOに紹介してもらい、COMBOはその問題の解決に取り組みます。取引先企業が倒産してしまえば、取引を行う企業にとっても大きな痛手になります。しかし、金融機関のなかには自分たちの組織内で内製化しているところもあるかと思いますが、支援できる専門知識や余力のない企業にとって、高度になっていく経営課題を解決していくことは年々難しくなっているはずです。そこでプロフェッショナルであるCOMBOの専門チームが問題解決と経営支援を手伝います。協業企業は取引先の倒産を防ぐことができると同時に、自社のサービスの一環としてCOMBOに紹介してもらうことで、満足度と信頼度の向上につなげることができます。 

 ──中小企業は、顧問の税理士と専門的な業務を担う事務所、2つを並行して活用していくことになるのですね。 

 山本 これからの時代はそうなっていくと思います。顧問業務自体がなくなることはないにせよ、それぞれの業務に特化していくことも選択肢の1つになっていくはずです。17年前、私が入社したときは社長さえ頑張れば良いという時代感がまだ残っていました。やがて「個」で戦う時代は終わり、段々と組織をつくっていかないと立ち行かなくなってきました。コロナ禍を経て、組織があるのは当たり前になり、さらにその組織同士でネットワークを構築していけるようにならないと生き残れなくなってきています。そして組織同士が連携し、ネットワークを構築しようというときに、個々の事務所の能力がまったく同じだとネットワークが成り立ちません。誰がやっても同じではお互いに補い合うことができないし、同じ仕事を取り合うことになりかねないからです。従って、各事務所がどの分野で中小企業に貢献していこうとしているのかを決めていかないといけません。そして選んだ強みを他に負けないくらい磨き上げ、それぞれの得意分野でコラボしていくことが今後、大事になっていくでしょう。そしてCOMBOはそれぞれ別の分野で突出した能力をもった4つの事務所が、同じ志をもって一緒に活動していこうとしています。これは良い事例だと考えていて、COMBOとしてこういった互いに協力し、中小企業に貢献していく事務所の在り方を理解していただくような活動もしていかなければと思っています。 

自分たちのノウハウを届け、倒産のない社会を目指す

    ──セミナーや勉強会を定期的に開催する予定とのことですが、どういった内容でお考えですか。 

 山本 会計事務所の職員向けと現場の責任者向けの2つを軸にしていこうと計画しています。会員事務所の職員にはそれぞれの得意分野をもつ4事務所から実践的な業務についてのやり方や事例を紹介していく予定です。会計事務所のなかには特殊業務に関する知識をもっていても、それを実務に落とし込み事業化するまでには至っていないところもあるかと思います。そういう事務所にとって、それぞれの業務に特化して顧客から信頼を得ているCOMBOのメンバーの事務所がもつノウハウは有益なものになるはずです。

 現場の責任者向けに会計に関する知識を身に着けてもらえる場を設けることなどを考えています。たとえば事業承継とは何か、財務コンサルとは何かを知る機会にしてもらい、協業企業様との共催セミナーというかたちで持続的な経営サポートにつなげてもらえたらと考えています。どちらの方向性においても、一方的に講師が説明するだけではなく、一緒に考えていけるようなセミナーにしていくつもりです。また、セミナーの際に懇親会を設けて、お互いに情報交換をしつつ関係性も構築していけるようにしたいですね。

 ──早速6月にセミナーを予定しているそうですね。 

 山本 6月末に設立記念セミナーを開催できるよう準備を進めています。会員事務所になり得る事務所やぜひ協業をと考えている地域の金融機関やメーカーにはすでに声をかけています。ここでCOMBOが設立された背景や趣旨、目指す方向性を共有し、一緒に中小企業の課題解決に貢献していくスタートを切っていきたいと考えています。同セミナーでは特別ゲストとして、(株)マネーフォワードの辻庸介社長にも登壇してもらう予定です。

 COMBOのメンバーは完璧な布陣だと自負しています。しかし、COMBOが今後成長し信頼を得ていくためには、まずはどれだけ多くの会計事務所や企業に私たちの掲げる理念やビジョンに共感してもらえるかがカギになると考えています。活動を通して、自分たちのもつノウハウをより広く中小企業に届けることで、倒産のない社会を目指していきます。

【文・構成:岩本 願】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:山本 要輔
所在地:福岡市博多区博多駅前4-15-6
設 立:2023年1月
URL:https://combo.or.jp/


<プロフィール>
山本 要輔
(やまもと・ようすけ)
1982年生まれ、長崎市出身。2005年長崎大学経済学部卒業、06年(株)IGブレーン入社。18年取締役、福岡営業所所長に就任。23年1月、(一社)共創経営推進機構代表理事に就任。上級経営会計専門家(EMBA)。

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