今年の株主総会の注目点:女性取締役不在企業は戦々恐々(前)
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上場企業の株主総会のシーズンがやってきた。5月下旬に開催される2月期決算企業の総会を皮切りに、6月下旬に3月期決算企業の総会のピークを迎える。
注目は、国内外の機関投資家が女性取締役の1人もいない企業に対し、取締役選任案に反対票を投じることを検討する動きが広がっていることだ。日本は全上場企業の女性役員比率が主要国と比べて低く、女性役員が1人もいない企業は対応を求められることになる。
岸田首相がプライム上場企業の女性役員比率30%以上を求める
岸田文雄首相は、4月27日に総理大臣官邸で開いた男女共同参画会議で、女性活躍と男女共同参画に向けた今年の重点方針「女性版骨太の方針2023」をめぐって意見を交わした。
各社の報道によると、岸田首相は企業の女性登用を加速させるため、東京証券取引所の最上位「プライム市場」に上場する企業の役員に占める女性の比率を、2030年までに30%以上にする目標を示したという。
2013年4月に、安倍晋三首相から経済界に「役員に1人は女性を登用していただきたい」と要請した。その後の推移を男女共同参画局のデータで見てみよう。
2012年から2022年の10年間で、上場企業の女性役員数は5.8倍に増え、着実に成果は上がっているものの、その割合は依然として9.7%(22年7月末時点)と低く、諸外国の女性役員割合と比較しても低い水準にとどまっている。
女性役員の割合は、フランス45.2%、イタリア42.6%、イギリス40.9%、ドイツ37.2%、カナダ35.5%、アメリカ31.3%だ。
G7サミット(先進7カ国首脳会議)の議長国である日本が、ジェンダーギャップ(男女格差)後進国と揶揄されるのも無理はない。岸田首相がプライム市場に上場する企業の女性役員の割合を30%以上に引き上げるよう求めたのには、他のG7と肩を並べたいという焦りが透ける。
ゴールドマン・サックスは女性取締役がいない企業にノーを突き付ける
政府が笛吹けど上場企業は踊らない。男社会に風穴を開けるには外圧に頼るしかない。「取締役会に女性がいない会社の取締役選任議案に反対する」。大手資産運用会社ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)は2020年4月、こんな議決権行使基準を定めた。日本で本格展開する運用会社で一歩踏み込んだ措置だ。
こうした動きが海外の機関投資家に一気に広がり、女性役員が非常に少ない日本企業にとって「黒船襲来」のような状況になってきたことを、日本経済新聞(2020年6月16日付)が『「取締役に女性起用を」海外投資家が迫る、ゼロなら社長選任に反対も、(女性)起用の日本企業6割』の見出しで報じた。
多くの機関投資家は、女性がゼロの場合には社長の選任に反対すると表明しているが、ゴールドマン・サックスはもっと厳しい。女性取締役がゼロの場合は、候補選定を担う取締役全員の選任に反対するというのだ。
(つづく)
【森村 和男】
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