2024年05月10日( 金 )

G7サミットを終えて 核廃絶と脱原発こそ日本の歴史的使命

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元駐スイス大使 村田 光平 氏

 日本ビジネスインテリジェンス協会(BIS)より、元駐スイス大使の村田光平氏によるG7広島サミットへの所感を共有していただいたので共有する。村田氏は「核の軍事利用」と「核の平和利用」の犠牲国となった日本の立場からすれば脱原発と核廃絶は日本の歴史的使命であり、放射能の危険性を正当に判断するなら、福島の悲劇が今なお続く状況下での原発再稼働、ましてや「原発回帰」は強く糾弾されるべきとしている。以下の所感は、同氏が先日、小泉純一郎元総理に宛てたメッセージでもある。

小泉純一郎総理殿
令和5年5月21日

村田光平
(元駐スイス大使)

拝啓
 G7サミットの開催を控えて『月刊日本』及び『東京新聞』が、それぞれ私のインタビュー記事を掲載しましたのでお届けいたします。

 「核廃絶と脱原発こそ日本の歴史的使命だ」との『月刊日本』の見出しは、電力会社と緊密な協力関係にあり、核拡散の防止と原子力発電の促進という両立できない使命を与えられたIAEAは改革されねばならないとの年来の立場に由来するものです。廃棄物の処理方法のない原子力は不道徳・無責任です。世界の危機を招いた倫理の欠如の源泉です。脱原発を核廃絶の前提条件にすることなしに核廃絶の実現はあり得ません。

 放射性汚染水の海洋放出問題が国連担当官により初めて国連海洋法条約違反であるとの指摘がなされたことは、今後の進展に決定的影響を及ぼすと思われます。この問題の進展を有利に進める思惑から国際会議の共同声明の日本語訳の改ざんが行われたことが発覚したことは恥ずべきことです。

 「原子力ムラ」が内外で温存される限り人類は滅亡に向かい続けることが深刻に危惧されます。人力では如何ともし難いことは哲学の教えの三原則に委ねるほかはないと思われます。悠久の歴史を通じ、地球と人類を守り抜いてきた天地の摂理が救いです。

 <19日付『東京新聞』朝刊に掲載された野呂法夫編集委員の「視点」を別添お届けいたします。>
 坂本龍一さんから私に寄せられたメッセージ(「原発遺書」)に関して書かれたものです。
 貴総理のご活動ぶり、原自連の自然エネルギーによる原発代替の提言、原発の日本に向けられた核兵器同様の危険性にも言及があり、時宜を得た論考です。原子力村が温存され「原発回帰」など危険な影響力を及ぼす現状への警告として「原発遺書」を位置付けております。
 坂本龍一様から「原発遺志」を頂いたものとして明治神宮の樹木保護の問題を含め、その御遺志をかなえるために全力を尽くす所存です。

 貴総理の一層の御活躍と御健康を心からお祈り申し上げます。

敬具

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