2024年05月03日( 金 )

アメリカの凋落を象徴する老老対決:バイデンvsトランプ(後)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

高齢でスキャンダルまみれの2人

 起訴されたことは日本でも大きく報道されていますが、ストーミー・ダニエルズという女性に関しては、あまり関心の対象にはなっていません。彼女が最初にトランプと関係をもったのは、彼女が27歳の時で、そのとき、トランプは60歳でした。倍以上も年の差があったわけですが、トランプにとっては3番目の奥さんと結婚し、息子が生まれて3カ月のときの浮気です。

 チャリティのゴルフイベントで知り合ったとされていますが、当時からポルノ女優であるのみならず撮影の監督も務めていたストーミーはトランプを狙っていたと思われます。何しろ、ストーミーはその後、ルイジアナ州で上院議員選挙にも出馬するほど政治志向の強い女性です。

 しかも、家庭内暴力で夫に危害を与えた容疑で刑務所に収監された経験もあり、喧嘩っ早い性格で、トランプとも意気投合したに違いありません。現在も、トランプの「Make America Great Again」の向こうを張って、「Make America Horny Again(アメリカをもっと好色に)」の錦を掲げて全米ツアーを展開しています。

 といっても、彼女がキャンペーンで回っているのは各地のストリップ劇場やクラブが中心です。彼女の人気も絶大で、トランプ集会に負けない熱狂的なファンが会場を埋め尽くし、投げ銭は半端ありません。しかも、彼女はトランプ顔負けのツイッターのヘビーユーザーです。トランプ氏との思い出を面白可笑しく紹介しています。

 今では44歳になったストーミーですが、1人娘を育てながら、ポルノ出演と監督業に精力的に取り組んでいるようです。これまでさまざまな賞を受賞しており、最近ではテレビドラマや映画にも出演するなど、活動の範囲を広げています。要は、トランプと同じで、話題づくりと自己宣伝の天才と言っても過言ではありません。

 今回のトランプ起訴を受け、「いつでも裁判所で証言する」と、これまで以上に強気の姿勢を見せています。混乱と分裂のアメリカですが、見方を変えれば、実に多士済々ともいえるでしょう。ポルノ界出身の女性議員の誕生もアメリカならあるかも知れません。

 当面、アメリカではトランプ裁判と大統領選挙が同時進行で進むことになるでしょう。トランプ氏は、起訴人気の波に乗り、大規模集会を開催しては、「俺がホワイトハウスにカムバックすれば、その日のうちに、ウクライナ戦争を終わらせる」と、相変わらずのトランプ砲を炸裂させています。

ホワイトハウス イメージ    他方、バイデン大統領は昨年末から「おとなしの構え」でしたが、3月28日、ようやく本格的な再選キャンペーンを始めました。その目玉政策は「アメリカ投資計画」です。実は、トランプ前大統領はアメリカの国有地を生かした「フリーダム・シティ」構想をぶち上げています。

 それに対抗するかのように、バイデン大統領は全米20カ所を回り、クリーンエネルギーや電気自動車などハイテク、とくに半導体メーカーへの財政支援を強化すると訴える方針で、総額は4,350億ドルとのこと。現職の強みを生かした選挙キャンペーンに他なりません。

 対するトランプ氏の「フリーダム・シティ構想」ですが、具体的な金額は不明のまま。「これはまずい」と思ったのか、トランプ陣営では、バイデン大統領の投資計画は「アメリカ破産計画」だと批判を始めました。

 トランプ氏は「ウクライナへの財政支援でアメリカの国庫は空っぽだ。先ずはウクライナ戦争を終わらせ、アメリカ国内経済の立て直しが急務のはず」と述べました。トランプ氏の対抗馬と目されるフロリダ州のデサンティス知事もまったく同じことを言い始めています。要は、アメリカにはウクライナ戦争を支える資金が枯渇しているというわけです。

 要は、バイデンもトランプも年齢問題に加えて、バイデンは息子のラップトップ疑惑、トランプはポルノ女優口止め料疑惑と、スキャンダル満載の有り様。ケネディ神話の復活を意図するケネディ・ジュニアも奥さんに頭が上がらない模様。いずれも「帯に短し、たすきに長し」。残念ながら、超大国アメリカの衰退を象徴しているとしか思えません。

(了)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

(中)

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