デザインで生み出す防犯効果 実践的指導と都市公園の賑わいづくり(3)
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福岡大学工学部社会デザイン工学科
景観まちづくり研究室 教授
柴田 久 氏2014年「グッドデザイン賞」、15年「第26回福岡市都市景観賞」大賞を受賞した福岡を代表する都市公園「警固公園」。この素晴らしいデザインをかたちにしたのが、福岡大学工学部教授の柴田久氏。そして、当時の教え子たちだ。単なる学び舎としてではなく、実践的な技術研鑽の場として活動を続ける同研究室にて、話を聞いた。
――卒業制作が警固公園というのは、大きな自信につながりますし、何より一生の思い出になると思います。
柴田 そうですね。警固公園の実態調査をして、周辺地域への騒音問題となっていた夜のスケートボード利用の抑制策として、芝生内にベンチを入れ込むアイディアを提案するなど、研究室に籠るのではなく、現場に出向いて初めてわかってくることがたくさんあります。プロジェクトに携わった学生たちが今の警固公園を見るたびに、そういった制作過程を思い出せるというのは良いことだと思います。ほかにも、障害を持った方も安心して利用できるようバリアフリー整備も実施しましたし、石は以前のものを再利用することで昔の警固公園の面影を園内に残しました。昔から警固公園を利用している方たちの記憶や愛着に配慮し、親しみやすくするためです。昔と今をどうつなげるのかという点も、デザイン的に苦労した部分ですね。
あと、これは本当に偶然なんですが、当時中心となって活動していた学生たちのほとんどが女性だったんです。だからこそ、しっかり検討できたアイディアとも言えるのが、石段ベンチの照明です。最初は真四角のベンチにする予定だったんですが、座面を少し長くすることで、照明の明かりが少しでも下に向くようにして、夜ベンチで休まれる女性の脚が綺麗に見えるように工夫が施してあるんです(笑)。また、ベンチの足下にはピンコロ石を張って、雨が降った後でも歩きやすくしています。これは、都市部だとヒールを履かれている女性も多いだろうとの配慮から採用しています。プロジェクトは丸2年。学生のなかには、院生生活をすべてこのプロジェクトに費やした学生もいます。
――妥協せず、そこまで徹底的にこだわり抜いたからこそ、評価も受けました。
柴田 賞の審査員の方が、公園というよりは『広場』という解釈が相応しいと評してくださったことは、印象深く残っています。警固公園のように、いつも人で賑わっている公園というのは、全国でもなかなかないとおっしゃってくれて、貴重な成功事例として今後のお手本になるとも評してくださいました。ただ、仕事としてもかなり大規模なものでしたので、今回グッドデザイン賞をはじめ多くの賞をいただき、嬉しかったというのももちろんありますが、一番はほっとしたという感じです。警固公園は有名な公園ですし、利用される方の期待感や、再整備に携わった方たちの苦労は計り知れないものですから。新しいデザインを通して、『人が人を呼ぶ』という、自然な流れを園内につくり出すことができたことが、何よりの成果だと思います。(つづく)
【代 源太朗】<INFORMATION>
■福岡大学
所在地:福岡市城南区七隈8-19-1
創 立:1934年
TEL:092-871-6631
URL:http://www.fukuoka-u.ac.jp■景観まちづくり研究室
所在地:福岡大学キャンパス内 5号館別館3F
TEL:092-871-6631<PROFILE>
柴田 久(しばた・ひさし)
1970年、福岡県出身。東京工業大学大学院 情報環境学専攻博士課程修了。景観工学、都市計画学を専門とし、景観デザイン論、まちづくり演習等の講義を担当。土木学会、都市計画学会、建築学会等に所属。2014年に『グッドデザイン賞』、15年に『土木学会デザイン賞最優秀賞』『第26回福岡市都市景観賞大賞』を受賞するなど、数々の受賞歴を持つ。関連記事
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