2024年04月20日( 土 )

迷走する居酒屋チェーンの雄(後)

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ワタミ(株)

 「和民」「わたみん家」などの屋号で全国展開を行う居酒屋チェーンのワタミ(株)。近年、「ブラック企業」のレッテルを貼られ、苦戦を強いられていた同社だが、2015年3月期連結決算で126億円の巨額赤字を計上した。同社は自己資本比率も1ケタ台まで低下。現在、事業の建て直しに向けて、さまざまな取り組みを行っている。

15年度は126億円の赤字。「継続企業の前提」注記される

watami2 14年3月期は連結売上高1,631億5,500万円、経常利益は前期よりも大幅に減らしたが、21億3,300万円の黒字を計上していた。だが、当期純利益は閉店の意思決定を行った店舗および収益性の低下により、固定資産の減損対象となっていた店舗の固定資産について減損処理を行ったことに加え、事業会社のワタミフードサービス(株)が計上している繰延税金資産を取り崩したことなどにより、49億1,200万円の赤字を計上。上場以来初の赤字決算となった。

 15年3月期は巻き返しを図るべく、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」をグループスローガンに掲げて事業に取り組んだが、14年5月に立てた1,700億円の売上目標を大きく下回る連結売上高1,553億1,000万円となった。これにより、営業利益ベースで20億7,200万円の赤字に転落。経常利益も▲34億600万円、当期純利益▲126億6,800万円と、営業・経常ベースでも上場以来初の赤字に転落する事態となった。

 とくに基幹事業の国内外食事業は、12店舗を新規出店し、不採算店舗を中心に100店舗閉鎖したことなどにより業績回復への取り組みを行ってきたものの、既存店売上高が93.4%に落ち込むなど客数に伸び悩み、同事業の売上高は602億7,200万円と前年同期比で13.9%の減収、36億9,900万円の赤字を計上した。また、海外事業は16店舗出店した影響で、売上高こそ173億4,500万円と同比24%の大幅増収となったものの、香港や上海といった主力地域において売上の前年割れが拡大したことで、2億2,700万円の赤字に転落した。グループの稼ぎ頭である宅配事業と介護事業は黒字を計上したものの、前期と比べて利益が激減するなど、収益環境が大きく悪化。124億円の赤字が響き、14年3月期に227億6,800万円あった純資産が101億9,600万円に半減したことで、自己資本比率が7.79%と1ケタ台まで落ち込んだ。現預金はほぼ変動はないものの、短期借入金が前期よりも110億円以上増加している。また、株価は今年3月24日に年初来高値となる1,305円を付けたものの、第1四半期決算が発表された8月11日の翌日には年初来安値となる964円となった。これにより、有価証券報告書に「継続企業の前提=ゴーイングコンサーン」が注記される事態に発展している。

今期は黒字予想も、第一四半期は赤字

 今期(16年3月期)は売上高1,488億円、営業利益13億円、経常利益5億円、当期純利益10億円を見込んでいる。だが、第1四半期(4~6月)を終えた時点で、既存店売上高は前年対比で89.6%と、昨年よりも悪いペースで進んでいる。同四半期の売上高は345億1,600万円と同比12.5%の減収となったほか、営業利益から四半期純利益に至るまで、軒並み赤字となっている。8月には一部報道機関にて介護事業の売却検討が報じられるなど、引き続き厳しい局面を迎えている。

 右肩上がりの成長を続け、“時代の寵児”とも呼ばれた渡邉美樹氏を創業者とする同社であるが、「ブラック企業の影響は大きすぎる」との声もある。ただし、他の飲食業の台頭をはじめ、同社の業態やメニューのブラッシュアップが後手に回ったことも苦戦の理由と指摘する人もおり、決して企業イメージの悪化が業績不振の理由とは断定できないようだ。とはいえ、業界のリーダー的存在の企業だけに、今後の巻き返しを期待する声もある。分裂か継続か厳しい瀬戸際にあるが、同社の動向に注目が集まっている。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:清水 邦晃
所在地:東京都大田区羽田1−1−3
設立:1986年5月
資本金:44億1,028万円
業 種:飲食店経営
売上高:(15/3連結)1,553億1,000万円

仕入先:酒類及び食料品卸
販売先:グループ各社
取引行:横浜(蒲田)、みずほ(蒲田)、三井住友(蒲田西)、三菱東京UFJ(蒲田)

 
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