2024年05月01日( 水 )

日本IBMと北九州市がDXで連携協定

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日本アイ・ビー・エム デジタルサービス(株)
地域DXセンター事業部 九州DXセンター長
古長 由里子 氏

日本アイ・ビー・エム デジタルサービス(株) 地域 DX センター事業部 九州 DX センター長 古長由里子氏

 世界175カ国以上でビジネスを展開するグローバルITカンパニーIBMの日本法人・日本アイ・ビー・エム(株)(以下、日本IBM/1937年設立)は、5つの「価値共創領域」として①ITシステム安定稼働、②テクノロジーの活用、③サステナビリティソリューションの共創、④半導体、量子などの先端テクノロジーの研究開発、⑤IT・AI人材の育成、を打ち出している。日本IBMは昨年11月、北九州市で新たに「IBM地域DXセンター」を新設した。同センターについて、日本アイ・ビー・エム デジタルサービス(株)九州DXセンター長・古長由里子氏に話を聞いた。

地域共創をともに実現する

 ──北九州市にIBM地域DXセンターを新設された経緯をお聞かせください。

 古長 日本IBMと北九州市は昨年8月に連携協定を結び、北九州市のデジタル・トランスフォーメーション(DX)推進やデジタル人財育成の拠点となる「IBM地域DXセンター」を新設することを発表しました。北九州を代表する製造業を中心とした企業を支援する拠点であった北九州事業所を、さらに一歩踏み込んで、北九州市の産官学が一緒になって共創するDXセンターへと刷新しました。
 IBM地域DXセンターとしては、札幌、沖縄、仙台に続いて4カ所目になります。また、今年5月の広島に続き、7月には高松、9月には長野でも開設予定です。全国各地で積極的に採用を進めているところで、2024年末までに社員や地域のパートナー企業を含め、2,500名規模の人員確保を目標にしております。

 ──IBM地域DXセンターの役割を教えてください。

 古長 今回の連携協定の主な項目は次の3つとなります。まず1つ目は、【北九州でのビジネス&先進的なITサービスの提供】です。パートナー企業との協業も進めていて、人財交流も進んでいます。北九州市役所からは2名に出向していただき、IBMメンバーとして採用活動や地域企業との交流活動をリードしてもらっています。
 2つ目は【人財に関する取り組み】です。ここでは、豊富な教育コンテンツの提供や、理系の大学院にIBM講師の派遣を行うほか、SDGs・最新技術をテーマに高校生との共創ワークショップを実施しています。

 3つ目は【グリーン成長戦略への貢献】です。高度成長期の公害を乗り越えたエコタウンとして、先進的な取り組みをしている北九州市の「グリーン成長戦略」について、カーボンニュートラル実現に向けた産官学での取り組みを支援しています。

 ──DX人財の育成や雇用拡大に向けた取り組みを教えてください。

 古長 地域DXセンターでは、シニアの方やU・Iターンを積極採用するほか、子育て中・介護中といった生活環境の方の雇用も推進しており、移住生活や二拠点生活などのブームも相まって、多様な働き方ができる場所として貢献できると思います。当センターは、地元を盛り上げたいという志をもった40名ほどのメンバーで構成されています。地域の企業の皆さんや学生の方々との交流を通じて、スキル育成支援など、さまざまな形で北九州のDXのお役に立てればと思っています。すでに今のオフィスは手狭になってしまい、年内にオフィスを拡充するほか、来春に完成するBIZIA小倉への入居が決まっております。

100年越しDX時代に、再び連携

 ──北九州市がDX拠点として選ばれた理由は、何でしょうか。

 古長 日本IBMの歴史は、北九州市の主力企業・TOTOを創業した森村グループの歴史とつながります。森村グループの中核企業だったノリタケカンパニーリミテドは1925年、当時アメリカで人気だった陶器「ノリタケ・チャイナ」の受注拡大にともなう事務効率化を図るために、日本で初めてIBM統計機を導入しました。森村組(森村グループ)のNY支店長だった水品浩氏は、自ら技術を習得することで、IBM統計機の日本でのサービスを可能にしました。日本IBMの前身となる日本ワトソン統計会計機械(株)(1937年設立)の初代社長が、水品浩氏です。

 ほかにも、67年には八幡製鐵所の依頼で、椎名武雄氏(元日本IBM社長)の下、世界初となる24時間365日オンライン制御システムの構築を成功させたことで、世界中の鉄鋼メーカーでIBMのシェアを広げることができました。

 また、近年では2010年~15年に行われた北九州市スマートコミュニティ創造事業の実証実験に参画し、地域のエネルギー需要と供給を効率利用したまちづくりを目指した先進的な施策を世界に発信するなど、北九州市とともに多くのチャレンジを行ってきた歴史があります。

 ──古長さまは北九州市のご出身とお聞きしました。

 古長 私は、若松区の生まれで高校までこのまちで育ちました。IBMでは、AIやクラウドのビジネス開発、マーケティング、コンサルティングに従事しました。このDXセンターの設立が決まってからは東京と北九州を行き来しながら立ち上げに携わり、今年2月に専任として着任しました。稀有なご縁が重なって故郷で仕事することに、感慨深く思っています。

モノづくりのまちにストーリーを

IoT事前学習の様子
IoT事前学習の様子

 ──北九州市の地域特性や課題についてお聞かせください。

 古長 北九州市は、移住や企業誘致に関する制度が整っていて、私たちもお世話になりました。地元にはすばらしい企業が多く、経営者や社員の方々や教育者、自治体の方も熱いパッションをもっていらっしゃる方が多いと感じます。大学は10校以上あり、当社と親和性のある理工系も多いのですが、残念ながら多くの卒業生は県外へ出て行ってしまっている状況です。今回の取り組みなどを通じて、若者から「このまちは面白い。このまちで何かをしたい」「北九州市で暮らし続けたい」「もっと多くの人に北九州の良さを知ってもらいたい」というシビックプライドをもってもらえたらいいなと思います。

 ものづくりのまちとして高度経済成長を支えた北九州市の資産や人財は非常にすばらしいものが豊富にあります。そのモノづくりのレガシーを顧客視点の発想でコトづくりやサービスに転換していくことが、大事になると私は感じています。そのためのDXやストーリーづくりといった点で、当社はお役に立てると思います。

 今回、地元に根付いたDX拠点にしたいという会社の意向で、九州DXセンター長という重責を拝命しております。システム開発センターとしてだけでなく、地域の一員として、産官学の地域共創でDXを加速し、次世代のモノづくり都市の活性化に取り組んでいきます。

「テクノロジーで北Qの未来を加速する」ポスター(北九州市立高校×IBM)
「テクノロジーで北Qの未来を加速する」ポスター
(北九州市立高校×IBM)

【松本 悠子】


<プロフィール>
古長 由里子
(ふるなが・ゆりこ)
北九州市出身。外資系IT企業でエンタープライズ・マーケティングを歴任後、IBM入社。AIやクラウドのビジネス開発やマーケティングに従事。IBMコンサルティング事業本部にて「IBM Future Design Lab.」を設立。2023年2月にIBM地域DXセンターに着任。北九州市での開発/ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)センターの拡充に加え、産官学連携でのDX/GX推進や人財育成にも注力。全国地域DXセンターのブランディングを担当。


<COMPANY INFORMATION>
日本アイ・ビー・エム デジタルサービス(株)

北九州市小倉北区浅野2-14-2
小倉興産16号館ビル12F
(日本IBM北九州事業所)

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