2024年05月15日( 水 )

「BuildApp」で建設業界のフロントランナーへ

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野原ホールディングス(株) グループCDO 山崎芳治

野原ホールディングス(株)
グループCDO 山崎 芳治 氏

 7月1日、グループ4社を統合し、新たに「野原グループ(株)」が誕生。新会社には「BuildApp事業統括本部」が設置される。工場生産までのプロセスをBIMデータでつなぐことで、サプライチェーン全体の生産性向上を目指す「BuildApp」に軸足を置いた事業戦略を展開する野原ホールディングス(株)のグループCDO・山崎芳治氏に話を聞いた。

「BuildApp」を基盤にし、事業戦略を組み立てる

 ──4社統合により、新たに誕生する野原グループ(株)内に「BuildApp事業統括本部」が設立されます。

 山崎 設立はグループ統合の目的そのものです。「BuildApp事業統括本部」の下に、管理部門を除くすべての事業組織を置くことになります。当社はミッションに、「建設業界をアップデートする」と掲げていますが、まずは当社自身がアップデートしていかなければなりません。「BuildApp」を基盤にし、事業戦略を組み立て、ビジネスモデルも変革する意思表示ともいえます。

 5年後には、建材販売の手法は大きく変革していくことになるでしょう。「BuildApp」が普及していくと、営業担当者の足を使った営業は少なくなり、フロント(上流工程)である程度自動的に建材も決まっていくでしょう。見積もりが決まって流通段階に入ると、材料を手配する作業に限定され、営業マンの役割も変わっていくことになります。そういった変化を見越した組織設計の第一歩が、7月1日以降の「BuildApp事業統括本部」の設置です。「BuildApp」は新規事業でありつつ、グループの既存事業の成長戦略ツールとして位置付けています。これから野原グループ事業が2~3倍へと成長していくために、「BuildApp」が大きな役割をはたすのです。

 まずは、内装の野原産業(株)、外装の野原産業エンジニアリング(株)が連携して、「BuildApp」のサービスを展開中です。野原ホールディングス(株)内には、商空間・ディスプレイ業界に対し、幅広い商品とサービスを行う「CSカンパニー」を設け、ホテルや百貨店といった施設の内装にも対応できるよう「BuildApp」のサービスを進化させる予定です。

 また、鉄筋の販売・加工・工事のノハラスチール(株)や生コン・セメントの販売の野原産業セメント(株)もDX化やBIM対応も進め、「BuildApp」を展開いたします。

7月1日付の野原グループの新体制
7月1日付の野原グループの新体制

大手ゼネコン60社や地域ゼネコンにも拡大

 ──どれくらいの規模のゼネコンが「BuildApp」を利用しているのでしょう。

 山崎 スーパーから中堅ゼネコンまで幅広くご検討が進んでおり、最終的には50~60社のゼネコンが利用してくれると考えています。一定規模程度の建築物を施工しているゼネコンにBIMは向いていますので、扱っている建築物の規模から、地域のトップゼネコンも「BuildApp」を導入するメリットが大きいとみています。現在は、地域トップゼネコンにも普及を進めているところです。また、「BuildApp」は、新築だけでなくリニューアルにも活用可能です。

 現場作業の効率化によるコスト削減もそうですが、環境配慮に資する効果への期待の声も多くいただいています。こういった効果に期待して、多くのゼネコンと現場での実証実験を行っているところです。概ねご好評いただいていますが、「BuildApp」をいくらであれば活用してもらえるかというマーケティングも最終段階に入りました。正式な金額の発表は、2024年7月から25年6月のいずれかのタイミングを予定しています。

 「BuildApp」はまず「Autodesk Revit」「Archicad」など非住宅向けのBIMソフトからスタートしましたが、これからは住宅向けにもサービスも検討中です。現在、2~3階建ての集合住宅でBIMが使われるケースはほとんどありません。しかし、賃貸アパート(集合住宅)を手がけているビルダーはBIMに親和性があるといえます。

BIMが目指す、建設業界の製造業化

 ──業界内では、資材高騰による影響が顕著になっています。

 山崎 たとえば生コンでいえば、残コン・戻りコンの課題があります。残コン・戻りコンはリサイクルが可能ですがコスト高のため、現状は産業廃棄物になることがほとんどです。歩掛率が高いのです。BIMを活用した積算と工事現場での現場打設状況の見える化により、この歩掛率は下げられると考えています。

 これからは、加工工場と施工現場双方で効率化が推進されていくことになるでしょう。海外では工場でユニット化し、施工現場で組み立てる手法はより推進しており、日本でもハウスメーカーはこの手法を取り入れています。これから技術者や技能者が不足していくことになりますので、建設業界の製造業化はBIMが目指す方向性といえます。

建設業のサプライチェーンの未来
建設業のサプライチェーンの未来

【長井 雄一朗】

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