2024年11月12日( 火 )

【宮田学園異変シリーズ5】学園の経営状況 コロナ禍・某事件で経営難と思いきや…

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 シリーズ第2~4回まで、(学)宮田学園の理事長である宮田智栄氏の実家・中洲料亭「満佐」の遺産にかかわる羨ましい話をお届けした。

 庶民はただただ指を咥えて眺めるだけの世界であるが、ずっとそんな話ばかり聞いていると下衆の勘繰りは別のことを考え始める。「いやいや、人生そんな良いことばかりあるもんじゃない。きっと学校経営の方ではお金に苦労があるのではなかろうか」と。そうだ、当シリーズの本旨は何といっても宮田学園にある。すっかり中洲のきらびやかな世界に見とれて、日夜学校運営に励んでおられる理事長の苦労に思い馳せることを忘れていた。という訳で、宮田学園の財務状況を拝見することとしよう。

 その前に宮田学園と日本語学校をめぐる近年の経営環境を簡単に確認しておきたい。宮田学園は、前にも少し触れた通り、1992年に開校した西日本最大級の日本語学校「西日本国際教育学院」と、2014年に開校した専門学校「国際貢献専門大学校」を擁する。生徒のほとんどが外国人留学生で、学生数は最大時1,600人程度という福岡では最大規模、全国でも有数の規模を誇る外国人向け日本語教育機関である。

 しかし、20年に始まったコロナ禍によって、外国人留学生を主な生徒とする日本語学校は業界全体が大きな打撃を受けた。(一財)日本語教育振興協会の調べによる日本語教育機関の生徒数の推移をグラフで見ると、日本国内の日本語学校在籍者数は16年度の5万2,278人がピークだった。コロナ直前の19年度は4万1,600人、コロナが始まった20年度には2万4,253人に激減し、21年度は1万4,580人で底打ちとなり、22年度は2万7,609人まで回復している。

 そのような業界全体の打撃に加えて、宮田学園は、21年に発生したベトナム人留学生に対する拘束事件で、22年9月には出入国在留管理庁から新たな留学生の受け入れを5年間認めない処分を下されるなど、さらなる打撃を受けた(ただし、入管からの処分は、学校側による処分停止の仮処分が認められ、裁判は現在も係争中である)。

 そのような状況であるから、当然、経営難が予想されるが、実際の宮田学園の経営状態はどうであるか。

強い収益力

 まず、一般企業における損益計算書にあたる事業活動収支計算書を見る。本業にあたる教育活動の収入は、そのほとんどが学生の納付金であることが分かる。新型コロナが流行し、海外からの新規学生の受け入れが難しくなった21年3月期から納付金が段階的に減少し、22年3月期には19年3月期の半分近くにまで減少、その結果、22年3月期の教育活動収支は赤字となった。

 大幅な減収への対応として、23年3月期は教育活動支出である人件費と教育研究経費を大幅に圧縮させ、収支は大幅な黒字に回復している(教育研究経費の大幅な圧縮が生徒の学習環境に影響を与えていないか気になるところだが・・・)。

 寄付金は一貫してゼロ、補助金も比率として大きいものではない。教育活動外収支差額で毎年赤字が発生しているが、これは受取利息から借入金利払いを引いたもので、利払いがやや多いことが分かる。しかし、これも年々圧縮されている。

 純資産に組み入れられる総額となる基本金組入前当年度収支差額は、22年3月期以外は黒字で、23年3月期は大幅な黒字であった。以上の通り、コロナ禍と拘束事件というダブルパンチに見舞われたにもかかわらず、収益力の強さがうかがえる。

盤石な財務状況

 次に貸借対照表を見る。総資産に占める流動資産の割合が一貫して30%超あり、21年3月期には50%を超えていた。流動資産のほとんどは現金・預金である。固定負債のほとんどは長期借入金だが年々圧縮されている。流動負債のほとんどは前受金だ。

 コロナ禍後、固定資産の減少で総資産が減っているものの、固定負債(長期借入金)の圧縮により自己資本比率は上昇している。

教育環境への投資不足が気になるが、収益力・財務内容は問題なし

 21年3月期を最後に基本金の組入れがストップしていることや、事業活動収支計算書で見た教育研究経費が23年3月期に圧縮されていることから、教育環境を継続的に維持するための施策が十分に行われているかどうか気になるところである。しかし、以上見てきた通り、法人としての収益力・財務内容はいずれも問題ない。

 学校法人とは公益法人の1つであり、株式会社などと異なり、そもそも営利活動を行わない法人という位置づけになっている。そのため教育活動の本体から生じた利益に対しては法人税なども課税されない。

 本来収益性を目的としない法人格でありながら、寄付金にも補助金にもほとんど頼らずに、日本語学校経営において非常に高い収益性を確保しているのが宮田学園である。

 この後、宮田学園の経営実態を深堀りしていきたい。

<COMPANY INFORMATION>
理事長:宮田智栄
所在地:福岡市南区塩原4-17-17
TEL:092-541-8450
URL:http://miyatagakuen.ac.jp/

【寺村朋輝】

(4)
(6)

法人名

関連キーワード

関連記事