2024年05月05日( 日 )

中国のイメージ悪化を目論む

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のメルマガ記事を抜粋して紹介する。今回は、処理水の海洋放出をめぐって政府寄りの報道を批判した8月27日付の記事を紹介する。

 処理後汚染水の海洋投棄に反対する識者は多い。市民の多くも反対している。反対しているのは中国だけでない。しかし、主要メディアが言論を完全に統制している。

 どの部分が言論統制であるのかといえば、処理後汚染水海洋投棄に反対する人々の論拠をまったく伝えないこと。海洋投棄を是認する側の論拠は明確だ。ストロンチウム汚染水は海外でも海洋投棄されており、日本での海洋投棄は基準値以下に抑制したものであるということ。

 IAEAは海洋投棄するとされる処理後汚染水のトリチウム濃度が「国際的な安全基準に合致している」とした。このことをもって処理後汚染水海洋投棄を正当化している。海洋投棄に反対する者はこの事実を全面的に否定しているわけではない。

 この説明を鵜呑みにはできない懸念があること、またフクシマの汚染水が特殊なものであることを挙げている。新華社は8月27日に「福島汚染水の海洋放出はいかにして決まったのか」と題する記事を掲載。https://x.gd/ikNsC このなかで、懸念される事項を列挙している。いくつかを紹介する。

 1.原発敷地内の貯水タンクには放射能汚染水が約134万m3保管されており、うち133万m3余りが処理済みとされているが、東電が定義する「処理水」の基準を満たすのは3割程度にとどまり、基準に満たないいわゆる「処理過程水」がおよそ7割を占めている。

 2.東電が提出した放射能汚染水の処理やその他関連データに対し、専門家や環境保護団体は科学的な見地から、幾重もの疑念を抱いている。

 同記事は次の専門家見解を紹介している。「米ミドルベリー国際大学院のフェレン・ダルノキ・ベレス教授は、日本が提出するデータは「不完全、不正確、不一致で一面的」だと指摘。日本の環境保護団体「FoE Japan」は東電の「処理水」という呼び方について
1)ALPS「処理」水の一部でヨウ素129やストロンチウム90などの放射性核種が依然として基準値を超えている
2)東電がこれまでに検査した水サンプルは貯蔵汚染水のわずか3%に過ぎず、検査結果は代表性に乏しい
3)福島の「処理水」は溶融炉心と直接接触しており、通常運転の原発からの排水と同列に論じることはできない
などの問題を指摘している。」

 3.東電にはデータの改ざん、原発安全問題の隠ぺいといった「黒歴史」がある。

 これらの論拠があり、処理後汚染水の海洋投棄に反対する見解が提示されている。しかし、日本のメディアは反論の根拠を一切示さない。「科学的根拠に基づく評価をしろ」と日本政府が主張していることだけを報じる。

 この報道は問題を解決するためのものでなく、中国を悪に仕立て上げるためのもの、問題をよりこじれさせるためのものといえる。実際、そのために、こうした偏向報道が強められているのだと思われる。

※続きは8月27日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」「中国のイメージ悪化を目論む」で。


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植草一秀の『知られざる真実』

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