2024年05月14日( 火 )

「リッチ・ローカル 佐賀市」の実現へ

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佐賀市長 坂井 英隆 氏

コロナ禍でDXを進行

佐賀市長 坂井 英隆 氏
佐賀市長 坂井 英隆 氏

    ──佐賀市の強み・ポテンシャルについては、どのように考えておられますか。

 坂井 コロナ禍の影響で、デジタル技術の社会実装が、これまでなかったスピードで進みました。働き方や仕事の在り方が多様化していくなかで、都市と地方との関係性も大きく変化してきています。こうした状況は、佐賀市にとっては千載一遇のチャンスではないかと捉えています。

 日経新聞が以前行った「テレワークに適した環境が整う自治体ランキング」の調査では佐賀市が九州・沖縄地区で1位、全国10位となったほか、2017年に(株)野村総合研究所が行った国内の主要100都市対象の「成長可能性都市ランキング」では、佐賀市が「都市の暮らしやすさ」で1位、「子育てしながら働ける環境がある」で3位となるなど、佐賀市は非常に高いポテンシャルを秘めています。私自身、大学進学から約20年間離れていたのですが、帰ってきてから食の美味しさや自然の豊かさ、歴史や文化、人の温かさ、多彩な観光資源など、佐賀市の良さやポテンシャルの高さを改めて気づかされました。

 こうした良さを打ち出しながら、佐賀市に「訪れてみたい」「住みたい」という人を増やしていくべく、現在、「リッチ・ローカル 佐賀市」の実現を目指した取り組みを進めています。これは、今ある佐賀市の魅力を大切にしながら、そこに新しい技術や発想などを次々と取り入れていくことで、経済的な価値だけでなく、市民の幸福度や体験の豊かさなどの心の価値も高めていこうというもので、その実現のためには市民サービスなどのDX化が欠かせません。

 昨年7月に佐賀市スマートシティ宣言「スマート・ローカル!SAGACITY」を行い、今年4月には新たに「佐賀市公式スーパーアプリ」をスタートさせました。このアプリは“手のひらサイズの市役所”を謳い、暮らしに役立つ便利な情報が届いたり、オンラインで手続きができたりするなどの複数の便利な機能を集約したもので、デジタル田園都市の交付金において、九州で唯一複数のデジタルサービスを実装するなど「全国のモデルケースとなる取り組み」(いわゆるTYPE2)での採択を受けました。こうした先駆的な取り組みを進めながら、佐賀市を豊かな自然や文化と最新テクノロジーが共生する“日本一便利な田舎”にしていきたいと思います。

国スポ契機に賑わい創出へ

 ──今年5月に「SAGAサンライズパーク」が開業し、来年10月の「SAGA2024 国スポ・全障スポ」開催が迫ってきました。

 坂井 佐賀の地で48年ぶりに国体(国民体育大会)改め国スポ(国民スポーツ大会)・全障スポ(全国障害者スポーツ大会)が開催されます。全国から多くの方々が佐賀に訪れ、大きく注目を集める絶好の機会ですから、一過性のイベントとして終わらせるのではなく、今後も継続して「佐賀に来たい」と思っていただけるような“佐賀ファン”をつくっていきたいと思います。今年は、リハーサル大会というかたちで各競技の九州大会や全国大会が佐賀で開催されておりますので、そこで応援メッセージを書いたバルーンを係留したり、活躍した選手に佐賀の特産品を表彰として贈呈したり、会場で焼きたての丸ぼうろを振る舞ったりするなど、“佐賀らしい応援”というコンセプトでのおもてなしを行うことで、佐賀のPRを行っています。

 また、SAGAサンライズパーク内にある多目的施設「SAGAアリーナ」では5月の開業以来、B'zやNiziU、松任谷由実などの有名アーティストのコンサートや、アイスショー、大型の学会などが開催されており、毎週末のように満員御礼となっており、市営バスでもオープンから2カ月で土日に約1,200便増やし、3万人を運ぶなど対応しています。これまで佐賀市では、こうした非日常のワクワクするエンターテインメントが定期的に開催されることはありませんでしたので、大きな人の流れの変化が出ていることを実感しています。

(左)SAGAサンライズパーク/(右)ホテル機能などの誘致が検討される旧西友駐車場敷地
(左)SAGAサンライズパーク
(右)ホテル機能などの誘致が検討される旧西友駐車場敷地

 ほかに、JR佐賀駅とSAGAサンライズパークをつなぐ市道三溝線「サンライズストリート」では、SAGAアリーナでのイベント開催時などに多くの人の流れが生まれています。今年度、休憩スポットや地域の活動拠点などとして利用できるポケットパークの整備も3カ所で予定しており、賑わい創出につなげていきたいと考えています。こうしたさまざまな取り組みを行いながら、来年の国スポ・全障スポの開催を機に、佐賀のまちをもっと盛り上げていければいいな、と思っております。

 ──JR佐賀駅周辺の再整備事業も進んでいます。

 坂井 JR佐賀駅の周辺では21年5月に北口、22年11月に南口の駅前広場の整備が完了したほか、先ほどのサンライズストリートでも現在、道路拡幅や無電柱化などの整備を予定しております。また、駅前にあった西友佐賀店跡地では、20年6月に民間開発事業者による複合型商業施設「コムボックス佐賀駅前」が開業しましたが、その旧西友駐車場敷地で今後、新たな民間開発を誘導していこうと考えております。ここではホテルや飲食機能などを誘致したいと考えており、今後、関心のある民間事業者からのヒアリングなども行いながら、再開発に向けての検討を慎重に進めていく方針です。

地域の良さを次世代に

佐賀市役所
佐賀市役所

    ──近年、豪雨災害などが頻発していますが、防災面などの市民の安全・安心を守る施策はいかがですか。

 坂井 私は国土交通省で水害対策を担当していたこともあり、市長就任当初から市の水害対策にはとくに力を入れてきました。地形的に低平地な佐賀市は、有明海の干満の差の影響を受けやすく、水はけの悪さが最大のネックです。そのため、河川改修などで水をうまく流していくほか、既存の施設や機能を活用して水を一時的に貯めることも考えていかねばなりません。たとえば大雨の前にあらかじめ佐賀城のお堀の水位を下げておき、25mプール約180杯以上の水を貯めることができるようにするほか、「田んぼダム」も今年度に100haほど追加して計約282haにすることで、25mプール約900杯以上の貯水機能をもたせるなどの取り組みを行っています。併せて、先ほどのアプリを通じて市内29カ所の浸水状況の発信も随時行うなどの防災DX化も進めていくことで、豪雨災害時などの被害を最小限に食い止めていく方針です。

 ──広域的な交通インフラ整備も進んでいます。

 坂井 22年11月に諸富ICが開通したことで、有明海沿岸道路がいよいよ県境を越えて佐賀市までつながりました。また、佐賀空港では県において滑走路を現在の2,000mから2,500mへと延長する検討を進めています。こうした広域的な交通インフラ整備が進んでいくことで、有明海沿岸の佐賀・福岡・熊本の3県にまたがる13市8町で構成される「筑後佐賀エリア」の経済や流通の広域化が図られていきます。今年度から市南部地域における物流拠点構想の検討を始めましたが、佐賀市においても高次の都市機能が集積するチャンスだと考えており、今後の有明沿岸道路の全線開通や佐賀空港の滑走路延長には大いに期待しているところです。

 ──最後に、佐賀市の将来に向けての想いをお聞かせください。

 坂井 佐賀市では、昔からの地域コミュニティがいまだ根強く機能しておりますが、こうした佐賀市の良さをきちんと次世代につないでいくとともに、DX化などの取り組みを進めながら新たな良さも付加していくことで、地域の自然や歴史、文化などと利便性が共生する「リッチ・ローカル 佐賀市」を実現していきたいと思います。

【坂田 憲治】


<プロフィール>
1980年5月、佐賀市出身。東京大学法学部卒業、慶応義塾大学法科大学院修了を経て、2009年12月より東京都内の法律事務所で弁護士として勤務。14年11月に国土交通省に入省し、自動車局旅客課や鉄道局都市鉄道政策課、水管理国土保全局水政課で企画調整官や法務調査官を歴任。21年10月に佐賀市長に就任した。

▼佐賀市公式スーパーアプリ
https://links.odm.sagashi-superapp.city.saga.lg.jp/download

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