2024年10月15日( 火 )

「大きな福祉のまちづくり」実現へ 内覧会を巧みに活用する事業戦略

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(株)スエナガ
代表取締役 出口 洋一 氏

 障がい者向けグループホーム「YOKATOKO」など、福祉関連施設の建設・運営を行っている(株)スエナガ。同社では、施設竣工にあたって「内覧会」を開催しており、これを近年の業績拡大につなげる巧みな戦略を展開している。その開催の様子を探ることで、同社が福岡市周辺においてこの分野をリードしている理由が見えてくる。

社員・関係者が一丸となって実施

「YOKATOKO南片江」(左)と「たいよう片江館」

 (株)スエナガは7月21日と22日、有料老人ホーム「たいよう片江館」(75室)と、障がい者向けグループホーム「YOKATOKO南片江」(20室、いずれも福岡市城南区南片江2丁目)の内覧会を開催した。2日間で200人以上の来場者が訪れた。なお、たいよう片江館は(株)ttt(福岡県糸島市、内田啓太社長)、YOKATOKO南片江はスエナガがそれぞれ運営している。

 内覧会には同社社員のほか、ttt社ら協力事業者が一丸となって参加。利用を希望する人とその家族を対象とした施設の紹介だけでなく、周辺の土地所有者向けに土地活用の提案、各種サービス内容に関する説明、さらには周辺住民やOB顧客向けのリフォーム相談会が開催された。一見すると営業に特化した感のあるイベント。だが、その様子からは営業のみに止まらない、さまざまな狙いが見え隠れしていた。

(株)スエナガ 代表取締役 出口洋一 氏
(株)スエナガ
代表取締役 出口 洋一 氏

    その1つが、金融や不動産、施工などの関係者らが一堂に集結すること。これは内覧会が営業の前段階、つまり次の事業展開に向けた調整の場にもなっていることを表す。実際の施設のなかで行うことで、同社が狙いとする事業の方向性を関係者にイメージしてもらいやすくなる。出口洋一社長は、「その結果、たとえば土地情報についても、従来のものよりも精度の高い情報を得られるようになった」と話している。

 障がい者グループホームには高いニーズがあるものの、受け入れが可能な施設が少ないのが現状。YOKATOKOでは整った環境のなかで入居者1人ひとりが望む暮らしができる質の高いサービスに定評があるが、内覧会を開催しスタッフと接する機会を設けることで、利用者やその家族に安心感を与えている。そうした意味で広報的要素も強く感じられるイベントである。

 これまで9施設において内覧会を実施し、回を重ねるごとに内容に新たな工夫が加えられてきた。今回、とくに注目されたのが採用活動に役立てるための取り組みだ。LINEやホームページなどで、会社案内ブースを設けることを告知した結果、「福祉施設への就業希望者のほか、高等学校の進路指導の先生や専門学校の生徒にも来場していただけた」(出口社長)という。

さまざまな狙いに対応するイベント

スタッフ総出で行われた内覧会の様子
スタッフ総出で行われた内覧会の様子

    学生はもちろん、彼らを送り出す学校関係者にとっても、スエナガの企業風土や職場環境、従業員の様子がわかり、安心感を与えることになったことは想像に難くない。さまざまな業種で人材確保が難しくなるなか、対応策の1つとして注目される取り組みといえそうだ。このようにスエナガの内覧会は、単なる内覧だけでなく、商談や打ち合わせ、事業に関する広報、採用活動など、さまざまな目的に対して寄与するよう工夫されているのが特徴である。

 LINEの運用方法についても金融・不動産向け、施工関係者向け、一般顧客向けなどのアカウントを用意し、それぞれに合わせた情報提供を行っている徹底ぶり。イベント会場を借りて実施するケースも多いが、内覧会というかたちを取ることで開催コストを低減していることも注目される。

 ところで今回、有料老人ホームと障がい者向けグループホームを同一敷地に開設しているが、それにはスエナガが目指す事業のかたちが表れている。それは「福祉のまちづくり」で、その一環として10月には南片江の近接地にさらにもう1カ所のYOKATOKOが竣工する計画。これにより効率的な事業運営につなげる考えだ。ちなみに、この建物の設計については九州産業大学の香川治美教授(建築都市工学部住居・インテリア学科)の研究室と連携。学生コンペを行い、最優秀作品のデザインなどを反映させたものになるという。

 いずれにせよ、医療や介護、福祉の事業者との連携を強め、さらに広範囲な事業展開とする『大きな福祉のまちづくり』につなげるのが、スエナガの将来を見据えた展望。出口社長は「その実現のため、今年11月には『大きな福祉のまちづくりの会』を発足。さらに協力の輪を広げ、将来的には100社規模の組織をつくっていきたい。当社はこの2、3年で組織が大きく変わり、社員約240人を抱え、取引事業者を約500社もつまでに急成長したが、今後の持続的な企業経営、成長に向け、年に4回は内覧会を実施し、さらにブラッシュアップ、強みとなるようにしたい」と語っていた。

「たいよう片江館」の外観
「たいよう片江館」の外観

【田中 直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:出口 洋一
所在地:福岡市城南区堤1-13-30
設 立:2015年1月
資本金:3,700万円
T  E  L:092-874-4545
U  R  L:https://sda-suenaga.co.jp

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