2024年03月29日( 金 )

日本古来の建築工法を後世に伝えたい

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(株)住幸房 代表取締役 池尾 拓

アルバイトがきっかけで大工の道へ

柱の根継・足固めの加工<

柱の根継・足固めの加工

 幼少期より物をつくることに熱中して、凝り性だったのも幸いしました。大工を志すようになったきっかけは、大学2年生のとき、アルバイトで壁の泥付け、木材塗装、丸太の皮剥ぎなどを経験させてもらったこと。もともと抱いていた大工への想いがきっちり固まりました。大学ではRC(鉄筋コンクリート構造)を学びましたが、本当は木造の構造を学びたかったのです。それでも大学時代の恩師はとてもユニークで、教え子たちに好奇心を持たせるのがとても上手な方でしたので、卒論もRC(CFT:コンクリート充鎮鋼管構造)に関してみっちり書かせてもらいました。

 そのなかで私が好きな古民家への理解が深まる発見もあったりして、振り返ってみると、大変役に立ったなと思います。伝統的な日本家屋―古民家には部材の曲げ・木材同士のめり込みなどの柔らかく抵抗する要素があります。その積み重ねにより家に耐震力、「ねばり」の強さをもたらします。現実には多くの古民家が長年にわたり、地震をはじめとする天災に耐え抜いて、21世紀の今日まで人々の生活の場として存在し続けています。

物づくりの面白味

 大工育成塾の塾生として工務店に弟子入りし、数多くの現場で経験を積みながら、28歳で独立しました。そして、独立した今は日本の伝統構法の家造りを実践し続けることで、日本の伝統技術を後世に伝えていこうと思っています。何よりも自分の手を使って、物をつくるというのが、一番魅力的です。

 今後、やっていきたいのは原木を仕入れて、自分が理想とするかたちやオーナーさまの理想とするかたちに製材することです。オーナーさまと一緒に山に入って、『この木が柱になるんですよ』と紹介するのもいいでしょう。資材1つへのこだわりで、家ができるまでの工程にストーリー性を生み出すことができますし、そのことがそのまま弊社の提案する住まいに付加価値を与えることにもなります。

建設業界へ来たれ若人!

 建設業の担い手を輩出してきた大工育成塾は、2015年4月をもって、塾生の受け入れを終了しました。今後は別のかたちで、若者たちが実地研修を交えながら業界への理解を深められる場所が必要となってきます。業界の問題は業界で解決するのが一番だと思います。助成金に頼るのではなく、たとえば工務店同士でネットワークを構築して、将来を担う人材への先行投資としてお互いに資金を融通し合い、周辺地域の学校に求人情報を提供するなど、もっと積極的に情報発信をしていく必要があると思います。もちろん本業を疎かにすることはできませんから、副業としてでも、まずは動き出すことが必要だと思います。

 お客さまは家という『夢の設計図』についてお話に来られるわけですから、対面する私たちはずっと幸せな顔を見ていられますので、雰囲気も自然と良いものになっていきます。もちろん苦労はありますが、ほかの業種に比べると、幸せな職場環境だと思います。経営者としては、忙しさのあまり財務処理や決算処理にあたふたすることもあります。でも私も社員も、本当に楽しいと思いながら仕事をさせてもらっています。(談)

■INFORMATION
(株)住幸房
代 表:池尾 拓
所在地:福岡県福津市花見が浜1-4-18
設 立:2010年8月
TEL:0940-39-3123
URL:http://sumai-koubou.com/

<プロフィール>
ikeo_pr池尾 拓(いけお たく)
1982年生まれ。長崎県出身。九州大学工学部建築学科卒業後、大工育成塾に入塾。2007年より(有)建築工房 悠山想で大工作業に従事。10年8月に(株)住幸房を設立。大工育成塾OB組織、全国大工志の会代表を務める。

 

関連記事