2024年07月21日( 日 )

【由布市問題(7)】お手盛り受給を黙認する由布市 公平な行政はどこにいったか(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 日本有数の観光地となった大分県・由布院。由布市は有力な旅館や観光関連団体の動向を配慮するあまり、地域で暮らす住民のことをおきざりにしたかのような歪んだ行政運営を続けている。由布観光の歩みを振り返るとともにその現状をリポートする。

排水問題の顛末

 玉の湯が建設中のサービスアパートメントは宿泊施設と医療施設の複合施設だ。由布市はその「排水問題」を強引に対処しようとしているが、改めて問題を振り返ってみる。長期滞在に対応した施設であり、コンセプトは、日常生活のように「暮らす」感覚で旅をし、体も心もリフレッシュする「滞在型保養温泉地」という触れ込みだが、建設に際し、地元住民の理解を得られる努力を玉の湯が行わなかったことで、住民と玉の湯の間に大きな亀裂が生じてしまった。時系列に説明する。

 22年6月頃に、桑野氏が社員をともなって、一部住民宅を来訪している。同年11月に地鎮祭が行われ、数名の住民が呼ばれたという。

 工事が本格化した12月に入って、施設が市道ぎりぎりまで建つことが判明した。そこで住民が話し合いを行い、市道が狭くなり安全性が懸念されるため、住民宅に隣接する水路にグレーチング(溝の蓋)を設置することなどを求める嘆願書を作成している。嘆願書には、5人の住民が連名し、地域の自治委員1人も名を連ね、市議会議員2人も加わるかたちで、市長に提出される予定となっていた。

 ところが事態が急変する。12月中旬、由布市役所地域整備課建設係の職員が、水路の確認に訪れたところ、水路が市の道路台帳に載っておらず個人所有のため行政が措置できないことわかった。市道の下には、別の排水管が敷設されているが、管を管理する民間団体が、接続料や使用料を要求したため、住民が利用している水路に放流することに変更された。

 さらに、工事現場から出る騒音や振動、粉塵がひどく、その対策の要望を行政や施工業者に行ったが、対応されなかった。被害を訴える住民は不眠症となり、心療内科に現在も通院している。

 そうした状況のなか、23年2月、住民は地元選出の高田龍也市議を紹介議員として、「由布市における開発事業に関する請願」を由布市議会に提出した。議会での請願審査は、6月議会で行われ、委員会では趣旨は採択されたものの、本会議において否決された。請願審査前の3月上旬、桑野氏の夫で、玉の湯近くでクリニックを経営する桑野愼一郎氏から請願に名を連ねた住民に圧力めいた電話があったという。

 玉の湯は3月8日に公民館で初めて工事について説明会を開いた。その席には、施工業者、桑野夫妻、玉の湯の従業員の7人と自治会長、住民側から4人が参加している。その席上で、サービスアパートメントから出る浄化槽の処理水について説明は行われていない。不可解なのは、前出の市長あての請願書は、2人のうちの1人の市議が預かったまま未提出になっていたことである。

 このような経過を経て、5月に「湯の坪の水路を守る会」が結成された。会のメンバーである住民は、6月9日に佐藤樹一郎大分県知事に面会するなど精力的に外部への働きかけを行った。一方、玉の湯側が代理人弁護士を立てたため、「守る会」も8月に弁護士を立てて、現在、双方は代理人弁護士を通じてのやり取りとなっている。

 この動きに慌てたのが由布市である。市は水路を住民所有としていたが、サービスアパートメントの建設が進み、住民の運動が組織化されると突然、「水路は市道の一部であり市の所有物。このため、サービスアパートメントからの排水を流す工事を行う」旨を通告してきた。水路は幅30㎝ほどで、住民宅やアパートメントサービス南側にある大分川に注いでいる。すでに水路に排水を流す工事は行われており、現在も雨水の排水が確認されている。

 大分川は大分県中部を流れる一級河川である。大分川源流(九重連山の東側に位置する由布岳の南西麓)から由布市挾間町の天神橋までは、大分県庁の大分河川事務所が管轄する県の管理区域で、天神橋から先は国土交通省九州地方整備局の大分河川国道事務所の国の直轄区域となっている。サービスアパートメントのエリアは、大分県の管轄地域である。

 サービスアパートメント周辺の近隣住民は、過去に床下浸水をともなう水害を経験しており、由布市のハザードマップでも50cmから3mの浸水想定区域とされていることから、サービスアパートメントの排水を放流することを住民は危惧している。

 高田市議は当社の取材に対し、「話し合いをシャットダウンして、次の工事を先に進めるっていうことは、本当にありえない。今からでも遅くないので、工事を止めて膝を突き合わして話をすれば、お互い納得できるのではないか」と語る。

 水路は本来、その周辺住民が利用することを前提とし、宿泊施設の大量の排水を想定していない。今年7月には、由布市内を流れる大分川水系支流の花合野川で作業中だった男性作業員2人が大雨で増水した川に流され死亡する事件もあり、住民の不安は大きい。取材班は9月、10月と数回にわたって現地を取材し、由布市役所建設課および環境課の担当者から経緯を聞いた。一方、玉の湯に対しても電話で取材を申し入れたが、回答はなかった。

(了)

【特別取材班】

(6)
(8)

関連キーワード

関連記事