2024年05月04日( 土 )

今後の発展のためにも地雷撤去が不可欠〜カンボジア視察記(1)

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 日本とカンボジアが国交を樹立して今年で70周年を迎えた。両国は今年、関係を包括的戦略的パートナーシップに格上げし、協力を深めている。12日から18日、(一社)カンボジア地雷撤去キャンペーン(CMC、大谷賢二理事長)の主催するスタディツアーに参加するかたちでカンボジアの視察および取材を行った。現在のカンボジア情勢について報告する。

中国・タイ・ベトナムのプラスワンとして

カンボジア    ツアーは、まず首都プノンペンに入り、カンボジアの経済社会の課題について地雷問題を含め理解を深めたうえで、西部の地雷原と、地雷原跡地にCMCと日本の支援者によって建設された小中学校を訪問するというものである。

 12日夜のプノンペン到着時には、林立する高層ビル、高級車とバイク(親子4人乗りのバイクも見かけた)で埋め尽くされた道路に熱気を感じた。翌13日に日本大使館を訪問。大使に次ぐポストである公使と経済担当書記官に面会した。CMCの大谷理事長が昨年、外務大臣賞を受賞したこと、植野篤志駐カンボジア大使が大使公邸にてその受賞をお祝いしてくれたことなどへの御礼を伝えた。

 続けて公使と書記官がカンボジアの情勢について詳細な説明を行った。カンボジアの成長は著しく、IMFはカンボジアの来年の経済成長率がASEANで最も高くなるとの予測を示すほどだ。RCEP(地域的な包括的経済連携協定)の発効により、各種の関税や貿易障壁が徐々に縮小・撤廃していくなか、ASEAN内での経済連携の意義が高まっている。

 インドシナ半島において近年重要性が増しているのが、同半島をバンコクからホーチミンまで東西に貫く南部経済回廊であり、そのなかでカンボジアはタイとベトナムを結ぶ結節点に位置している。

 また、カンボジアは平均年齢が20代と低く、ワーカーの賃金が相対的に低いこともあって、中国・タイ・ベトナムのプラスワンとなる製造拠点の候補地としても注目を集めている。

地雷撤去は政府の最優先課題の1つ

 カンボジアとしても運輸・物流などの機能を高めることが求められているが、そこでネックとなるのが地面に埋まっている地雷、不発弾だ。南西部にはシアヌークビルという港湾もあるが、まずはタイとベトナムを結ぶ陸上交通網の整備が先だ。幹線道路は整備されているが、その周辺地域も含め、交通インフラのさらなる整備が求められている。

 しかし、地雷原とされる場所や、地雷が埋まっているかどうかも確認されていない土地が多くあり、それらの地域の地雷の撤去や安全性の確認には人手も時間も費用もかかる。公使によると、こうした事情から、地雷と不発弾の撤去をカンボジア政府も最優先課題の1つに位置づけているという。たとえば、先日ある州で地雷、不発弾の撤去が完了し、地雷ゼロ宣言が発出され、盛大に式典が開催されたという。残りの州でも今後数年をかけて撤去を行う予定だ。

 地雷の撤去が、過去の悪しき遺物から国民の生命と安全を保証するうえにおいて重要であるだけでなく、現在・未来において経済社会の発展を促すうえでも欠かせないことがよく理解できた。

 地雷に関して、カンボジアは日本など海外から支援をうけつつ、自国の経験を生かして国際社会への貢献も行っている。たとえば、ウクライナの地雷撤去要員に対して日本とカンボジアが共同で地雷探知機の使用方法などの訓練を実施している。カンボジアはウクライナのほか、ラオスやアンゴラ、イラク、コロンビアなどに対しても地雷撤去の支援を実施しているという。また、カンボジアは国連PKOの派遣国となっており、2006年以降延べ8,000人以上を地雷除去活動に参加させている。

 ツアー参加者一同、カンボジアに対するイメージを改めさせられた。

市内中心部からメコン川を臨んで。対岸の高層ビルは1年前より目に見えて増えているという。
市内中心部からメコン川を臨んで。
対岸の高層ビルは1年前より目に見えて増えているという。

(つづく)

【茅野 雅弘】

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