2024年05月05日( 日 )

CBRE不動産フォーラムが4年ぶり開催

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 10月26日、グローバル事業用不動産サービス会社・シービーアールイー(株)(東京都千代田区/以下、CBRE)は、CBRE不動産フォーラムを開催した。リアル開催は4年ぶり。フォーラムでは、オフィス市況や物流市況に加え、JR九州(東証プライム)による「博多駅周辺におけるJR九州の取組みについて~不動産事業を中心として~」の講演も行われ、273名が聴講した。今回は、フォーラムで公開されたCBREによるオフィスに関する分析を紹介する。

事業用不動産の投資動向

CBRE リサーチ-リサーチヘッド 大久保寛氏
CBRE リサーチ リサーチヘッド 大久保寛氏

 低くなってしまった東京の利回りよりも高い利回りが期待できるとして、海外投資家も注目しているという福岡の事業用不動産。

 CBRE リサーチ リサーチヘッド・大久保寛氏が発表したCBREの統計によると、福岡市内では毎年約3万から3万5,000坪のオフィス募集床が消化されており、今年も第3四半期終了時点で、約3万坪ほど消化している状況だという。新規開設や拡張移転など、動きのあるテナントの属性は、コールセンターやIT、システム開発、金融系で、数百坪から1,000坪単位の契約が見受けられたという。

 CBRE福岡支店で実務を手がける江頭秀人氏によると、「福岡のオフィス需要の強さには3つの背景がある」という。まず、1つ目が再開発にともなう立ち退きの需要。天神ビッグバンや博多コネクティッドによる再開発では、築50年以上が経過したオフィスビルもまだまだ数多く、建替えを計画しているビルオーナーが立ち退きを進めるケースも増えており、それにともなう移転需要は向こう2~3年続く見通しで、空室消化につながるマーケット環境にあるようだ。

 2つ目は、郊外エリアからの移転増加。たとえば博多・天神といった主要エリアの周辺エリアから、利便性の高いエリアへの移転という事例が増えてきているという。

 3つ目は、採用強化やブランディング向上のための移転増加。オフィス環境の変化などにともない、とくにIT・システム開発系の会社が好アクセスなハイスペックビルへ移転するニーズが増えているという。こういった企業は、働きやすい環境づくりのため、執務スペース以外にカフェスペースや休憩スペース、打ち合わせスペースといったようなコミュニケーションスペースを拡充させる傾向にあるようだ。

CBREプレゼン資料より
CBREプレゼン資料より

オフィス賃貸市場

 CBREは、今後の新規賃料について「緩やかな低下」を予測するが、リサーチが難しい継続賃料は「上昇余地がある」と強調した。

 新規賃料というのは、テナント退去によって新たに募集を開始した際の募集賃料を指す。継続賃料というのは、たとえば、リーマン・ショック後(2008年頃)から契約しているテナントが、今に至るまで継続して借りている賃料を指す。

 江頭氏はオフィス賃料について、「リーマン・ショックによる景気減退、新規供給が5万坪あったことも影響し、2012年の新規賃料の水準は、坪当たり9,790円まで下がっていた。それに対して現状は、1万6,050円まで上昇してきた。20年から新規賃料は下落傾向にあるが、12年の水準からすると、約63%上回っている状況。たとえば、博多エリアのトップレートのビルなら3万円/坪に迫る水準まで、博多の大通りに面する大型ビルでは、2万円/坪まで引き上がっている」と話した。

 一方、継続賃料については、次のように話した。「リーマン・ショック後の水準から次第に引き上げられてはいるが、そのペースは新規賃料に比べはるかに緩やか。新規賃料を20~30%下回っている状況。既存テナントの契約更改のタイミングで、賃料交渉が行われており、徐々に引き上がっている」(江頭氏)。

 新規と継続で20~30%のギャップが生じている理由については、「福岡の契約形態」をまず挙げた。たとえば、東京や大阪ではリーマン・ショック頃でも定期借家契約が一般的だったが、福岡では普通借家契約が一般的であったことが要因となっているようだ。福岡でも定借が増えつつあるものの、まだまだ普通借家が一般的なのだ。つまり、賃料を増額できるチャンスがある定借と半ば自動的に更新される普通借との違いが、新規と継続のギャップを生み出しているのだという。

 「博多の大通りに面する大型ビルの継続賃料は、平均して1万円台前半/坪だが、新規賃料は、1万円台半ばから後半のレンジで募集されている。競争力の高いビルでは、2万円を超えてきて、トップレートでは2万円台後半にもなる。契約の更新時期に、約15%以上の値上げに成功した事例もあるが、一般的には5%から10%の値上げで落ち着くケースが多いようだ。逆にいえば、競争力の高いビルであればあるほど、アップサイドが見込めるともいえる」(江頭氏)。

オフィス売買市場

    投資家が福岡のオフィスビルに期待している利回りは、「2023年時点で4%半ばの水準。東京とのスプレッドというのは1%ない状況。実際の取引事例では、最近はフォワードコミットで取得しているケースも見受けられるようになった。フォアフォワードコミット型でリーシングリスクをともなう取得手法でも、取引はNOI4%フラット。市内中心部でリースアップされている既存のオフィスが売却物件として出てきた場合は、3%半ばまで下がっている印象」(CBRE 福岡支店・寺崎公彦氏)だという。

 投資家・プレイヤーの属性についても変化が見られるようになったという。これについて寺崎氏は、「利上げやウクライナ問題によって、外資系ファンドらは投資マネーを引き始めた。それ以降は、日系ファンドやインフラ系企業の取得が目立っていた印象。ただ、ここ1カ月(10月26日時点)、外資系ファンドに動きが出始めた。世界をポートフォリオとして見ると、日本への投資を強化する動きがあり、さらにこれまで日本への投資といえば東京・大阪が一般的だったが、東京・大阪・福岡というように変わってきた」と話した。

【永上 隼人】

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