2024年03月29日( 金 )

中国産アナゴを「日本海産」と偽装(後)

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(株)中村水産本社工場(島根県浜田市) 今回の偽装表示については、島根県の対応にも問題があると思われる。浜田保健所の課長に問い合わせたところ、(株)中村水産(島根県浜田市、中村勝平代表)が産地偽造を認めて商品の自主回収を始めたことから、「刑事告発は見送り、食品表示法に基づき適正に表示するよう是正を指示した」との回答があった。

 以下、浜田保健所課長との話のやり取りは、下記の通り

 ――中国産を国内産と偽装表示していること自体が、消費者を欺いた行為であり、刑事告発すべきではないのか。
 A. 偽装を認め、商品を回収していることから「指示』に留めた。それでも従わない場合、『命令』→『刑事告発』(営業停止)に進むことになる。

 ――もし匿名での『食品表示110番』通報がなければ、保健所の立ち入り調査もなく、偽装表示の商品がすべて消費者の口に入っていたはずなのに、偽装を認めて自主回収しているから『指示』だというのはおかしいのではないか。
 A. そういう解釈もできるが、食品表示法が改正(※2015年4月1日施行)されて間がないため、周知徹底されていないことや事例が少ないこともあり、今回の措置となったが、今後はそのような方向に進む可能性はあると思う。

島根県の偽装表示の対応について

 県は中村水産に対し、原因の分析や再発防止策をまとめた報告書を今月末までに提出させることにしている。また、アナゴやウナギの加工品を扱っている県内約30施設に立ち入り調査し、同様の産地偽装がないかを確認することにしている。
 だが、なぜ島根県は中村水産を刑事告発せず、「産地表示の是正と再発防止を指示」に留めたのだろうか。その裏には、大きな政治的判断があるのではないかと思われる。地方経済は人口の減少により縮小し低迷しているため、県は消費者ではなく、県内企業を救済する道を選んだとの見方もできるからだ。

 だが、中村水産にとってはたとえ『指示』に留まったにせよ、偽装表示会社の烙印を押されたことで、今後の営業活動に大きなハンディを背負うことになった。また、今回の偽装表示により、山陰の地域経済全体への影響も懸念される。消費者が日本海産の水産物に対して疑惑の目を向けるようになれば、島根県のみならず、鳥取県にもおよぶ山陰地方の水産業者は、大きな打撃を受けることになるからだ。むしろ島根県は、他県に先駆けて営業停止を命令し、刑事告発するなどの断固たる処置を行った方が、山陰地方の漁業関係者のためには良かったのではないかと思われる。

(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
(前)

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