2024年05月06日( 月 )

カスハラへの対応

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 以前の記事でパワーハラスメント(パワハラ)などについてご説明しておりましたが、今回は、ここ数年問題となることが多い、カスタマーハラスメント(カスハラ)についてご紹介します。

 カスハラは、法律上の定義はありませんが、顧客や取引先など(顧客等)からの理不尽なクレームのことをいいます。たとえば、店員を怒鳴りつけたり、土下座を要求したりすることなどが挙げられます。

 顧客などからのクレームには、商品やサービスなどへの改善を求める正当なクレームもあり、これらのクレームを踏まえて、より良い商品・サービスを提供していけるきっかけになることもあります。他方で、過剰な要求を行ったり、不当な言いがかりをつける悪質なクレームを放置すると、矢面に立たされる従業員が疲弊し、生産性の低下や離職者の増加などの事業遂行上の不利益が発生する可能性がありますし、従業員が精神的なダメージを負った場合に、安全配慮義務違反として、従業員から損害賠償を請求されるリスクもあります。さらに、時間、労力、費用の浪費、ブランドイメージの低下、クレーム対応に労力を割かれて業務遅滞が生じて、他の顧客などに迷惑をかけるなどの事態も発生しかねません。そのため事業者としては、カスハラに適切に対応する必要があります。

岡本弁護士
岡本弁護士

    しかしながら、正当なクレームか、カスハラかの判断が難しい場合もあります。カスハラと判断する1つの尺度として、①顧客等の要求内容に妥当性はあるか、②要求を実現するための手段・態様が社会通念に照らして相当な範囲であるかという観点があります。

 そのため、顧客等の主張に関して、まずは事実関係、因果関係の調査・確認をし、自社に過失がないか、根拠のある要求がされているかを確認し、顧客等の主張が妥当か否かを判断するとともに、その要求手段が社会通念上相当なものかを確認することになります。商品の瑕疵などがある場合、謝罪とともに商品の交換・返金に応じることになるでしょうし、逆に過失も瑕疵もない場合には、顧客等の要求には正当な理由がないと考えられます。同時に、顧客の要求を実現する手段・態様が、暴力的・威圧的・継続的・拘束的・差別的、性的である場合には、社会通念上不相当であると考えられ、カスハラに該当し得ます。

 なお、業種や業態、企業文化などの違いから、カスハラの判断基準は企業ごとに違いが出てくる可能性がありますので、各社であらかじめ判断基準を明確にしたうえで、その考え方、対応方針を統一し、現場と共有しておくことが重要です。

 また、カスハラとして取り扱うか否かとは別に、顧客などからのクレームによって、就業に支障をきたすようであれば、従業員からの相談に応じる、複数名で対応する等の措置も必要になります。

 厚労省の指針でも、労働者の就業環境が害されないよう、次のような取り組みが望ましいとされています。

(1)相談・適切な対応のために必要な体制の整備
(2)被害者への配慮のための取り組み(メンタルヘルス不調への相談対応、1人で対応させない等の取り組み)
(3)被害防止のための取り組み(マニュアルの作成、研修の実施、業種・業態等の状況に応じた取り組み)


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本  成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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