2024年05月04日( 土 )

23年下半期 福岡市の開発動向(前)

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計画戸数は減少傾向が続く

 福岡市内に設置された標識情報を基に、市内における2023年下半期(7~12月)の開発動向を追った。その結果、共同住宅(木造除く)の計画戸数は4,288戸となり、23年上半期(1~6月)比で314戸減少。22年下半期以降は、計画戸数が減少傾向で推移している。

 23年上半期は総戸数100戸超の計画が2棟だったのに対して、下半期の計画は5棟となったものの、市内7区のうち4区の計画戸数は上半期比で減少した。博多まで直通となった福岡市地下鉄・七隈線沿線エリア―とくに市南西部の城南区と早良区を舞台にした開発の活性化も期待されたが、少なくとも23年下半期における延伸効果は限定的なものだった。

 博多区とともに市内における計画戸数の牽引役を担ってきた中央区と東区では、1,000戸割れの状況が続く。それでも、中央区ではパチンコホール・プラザ赤坂跡地でJR九州と(株)長谷工不動産による「(仮称)赤坂一丁目プロジェクト」(RC造・一部S造の地上23階建、ワンルーム外161戸、延床面積2万2,763.01m2)が、東区では東宝住宅(株)による「(仮称)フリーディア和白2丁目計画」(RC造・地上12階建、ワンルーム外61戸、延床面積6,155.46m2)がそれぞれ計画されるほか、2区では複数の注目物件が計画されていることから、計画戸数の伸び悩みは、マンション用地の不足が要因だろう(【表1】参照)。

 博多区における23年下半期の計画戸数は1,600戸超で、23年上半期比で120戸超増加。JR博多駅周辺エリアに加えて、ショッピングセンター・ららぽーと福岡の誕生後は、近隣エリアの諸岡や東那珂でもマンション開発が活発化した。

 マンション以外では、日本貨物鉄道(株)(東京都渋谷区)による「(仮称)福岡市長浜地区商業施設」(S造・地上2階建、延床面積1万3,036.11m2)をはじめ、県外企業による店舗や優良老人ホームの開発が散見された。同長浜地区商業施設はざうお天神店跡地で計画されているもので、ケーズデンキの出店が決定している。このほか、エムエル・エステート(株)(東京都港区)による倉庫「(仮称)福岡松島プロジェクト」(S造・地上4階建、延床面積7,367.77m2)、(株)ラ・アトレ(東京都港区)によるテナントビル「(仮称)A*G六本松」(S造・地上9階建、延床面積1,675.68m2)などが計画されている。

 23年下半期は、ホテルの計画件数が0件だったが、老人ホームと倉庫は5件でほぼ横ばいとなり、事務所は10件以上を維持。福岡空港国内線複合施設などの「その他建築物」が増加したことで、延床面積の合計は23年上半期比で1万2,831.90m2増となった。コロナ禍も明け、市内ではインバウンドを含む観光需要が旺盛であり、止まっていた計画も再び動き始めるだろう。

博多区
盤石の1,000戸超え

 23年下半期の計画戸数は1,653戸で、23年上半期に続いて1位となった。博多駅まで徒歩20分程度で移動可能で、昭和の面影を残す商店街や大型複合施設・キャナルシティ博多の存在もあり、相応の生活利便性が確保されている美野島や住吉、福岡市地下鉄・空港線沿いの東比恵など、博多駅近隣エリアで再びマンション開発が活発化し、計画戸数を押し上げた。

 注目される物件は、博多駅から徒歩15分程度の市立東住吉小学校側で進む「(仮称)博多駅南2丁目計画」。建築物の概要はRC造・地上14階建、延床面積5,500m2のワンルーム外57戸。建築主は(株)ゼクシオンで、設計者は(株)手島建築設計事務所となっている。周囲には瑞穂公園など中小規模の公園が充実しており、子育て世帯にとって便利な生活環境が整っている。

 また、地下鉄空港線・東比恵駅から御笠川沿いに上牟田方面へ歩いて10分圏内の場所では、JR九州ビルマネジメント(株)による「(仮称)東比恵4丁目プロジェクト」が進む。建築物の概要は、RC造・地上9階建、延床面積1,647.13m2のワンルーム20戸・ワンルーム外17戸の全37戸。設計者は生和コーポレーション(株)で、24年2月中旬~3月上旬頃の着工を予定している。このほか、東比恵4丁目では(有)星座による「(仮称)東比恵マンション」(RC造・地上8階建、ワンルーム14戸、ワンルーム外14戸、延床面積1,550.02m2)が、同3丁目では(株)ケイ・エル・アイによる「(仮称)東比恵3丁目_184」(店舗付RC造・地上15階建、ワンルーム98戸、ワンルーム外28戸、延床面積5,900.18m2)が計画されている。

 ららぽーと福岡近隣エリアでの開発も依然として盛況で、東那珂では(株)ファミリーによる「(仮称)ファーネスト東那珂Ⅲ・Ⅳ」(Ⅲ:RC造・地上13階建、ワンルーム外59戸、延床面積4,962.89m2/Ⅳ:RC造・地上15階建、ワンルーム外56戸、延床面積4,875.28m2)などが計画されている。

 再興の兆しを見せる博多駅近隣エリアと、ららぽーと福岡の開業効果の持続により注目度が高まる博多南部エリア。3月16日には西鉄の新駅・桜並木駅が開業するため、博多区を舞台とした開発はさらに盛り上がっていくものと推察される。

(つづく)

【代 源太朗】

(中)

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