2024年04月29日( 月 )

福岡市・防災担当「大地震に備える防災のポイント」(後)

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福岡市 市民局
防災・危機管理部長 森山 浩一 氏

福岡市 市民局 防災・危機管理部長 森山 浩一 氏

 1月1日午後4時10分、マグニチュード7.6、最大震度7の地震では、能登半島を中心に甚大な被害が発生した。石川県の発表資料(2月13日午後2時)によると、その被害状況は死者241人、負傷者1,184人、住家被害が全壊、半壊、一部損壊を合わせて6万5,570棟。福岡市における大地震発生について、私たちにはどのような課題があり、対策ができるのか──。石川県を中心に大規模な被害が発生した能登半島地震は、災害に対する備えの重要性について改めて市民に問いかける。そこで、福岡市の防災を担う防災・危機管理部の森山浩一氏に話を聞いた。

問われるBCPの質

 ──福岡市は、今回の地震による被災地域・能登半島に比べ、事業所が多数あります。企業防災の観点からも、少しお話を聞かせていただければと思います。

 森山 災害が発生すると、企業としては①何が起きたのか(自社の被害や災害による自社への影響)、②何が足りないのか(人、モノ、資金、情報)、③何をいつまでにしなければならないのか、を把握してさまざまな課題に対応していかなければなりません。これらを迅速に対応できるようにするため、あらかじめ何が起こり得るのかを想定し、そのとき行うべきことを計画し、その計画が実行できるよう訓練しておくことが重要と言われています。これがBCP(事業継続計画)の本質で、BCPの有無によって被災によるダメージが異なるばかりか、事業再開までにかかる時間も大きく異なるとのことです。BCPの策定に当たっては、中小企業庁が策定運用指針を示していますので、参考にしていただければと思います。

 また、大規模地震などの発生時には、公共交通機関の運行停止などにより、多くの帰宅困難者の発生も予想されます。帰宅困難者が一斉に移動を始めると、混雑による集団転倒や建物の倒壊・落下物による怪我などの恐れがあるとともに、緊急車両が通行できなくなるなど、救助・救急・消火活動の妨げにもなります。それらを防ぐために、「むやみに移動を開始しない」という一斉帰宅抑制の基本原則を徹底するとともに、従業員が事業所で待機できるよう、事業所としても施設の安全点検方法の確認や3日分の食料などの備蓄をお願いしています。

注意したい通電火災

 ──能登半島地震では、木造建築物の密集地域において火災が発生し、大きな被害がありました。福岡市で大地震が発生した際、同様の懸念がありますが…。

 森山 地震後の火災については、まず、火を出さないことが重要です。技術の進歩により、「グラっと来たら火の始末」「地震だ!火を消せ!」は過去の常識になりつつあります。震度5相当以上の地震を感知したときに、ガスを自動でストップするマイコンメーターや、耐震自動消火装置が付いた暖房器具などが販売されていますので、火災を起こさないための対策をしっかり行っておきましょう。

 また、通電火災にも注意が必要です。通電火災は地震で起きた停電が復旧した後に、電気器具が倒れたままになっていたり、破損した電気器具や損傷・断線した電気コードに電気が流れることによって発生します。通電火災を防ぐ対策としては、ブレーカーを落とすことが効果的です。しかし、地震が起きたときにブレーカーにまで気を回すことができるとは限りません。地震の強い揺れを感知すると、ブレーカーを自動的に落とす感震ブレーカーという製品もあります。

 木造建築物が密集する地域で火災が発生した場合、大規模な延焼につながる危険性が高いことから、防火対象物ごとに講じる防火安全対策のみならず、平素から地域住民の方、自治会や商店街組合等の地域関係者が自ら出火防止対策や各種訓練を行っていくことが防火対策上必要です。福岡市では、市街地大火を防ぐ都市構造の形成に取り組んでおり、道路や河川、鉄道などによる延焼遮断帯を形成し、都市防火区域を設定しています。また、火災発生時に避難する場所となる公園などの整備だけでなく、民間の開発とも連携したオープンスペースの確保に努めるとともに、避難場所へアクセスする避難路を確保できるよう道路整備を進めています。とくに、幅員が狭い道路が多い地区は、建築物の倒壊などにより避難活動の障害になるとともに、緊急車両が通行できなくなるなど、消火・救助活動に影響を与える可能性があるため、狭あい道路の整備・改善により道路空間を確保していきます。

 また、地震発生時に火災が同時多発的に発生すると、消防力が分散され、延焼が拡大する恐れがあり、とくに老朽化した木造建築物が密集している地区ではその危険性が高くなります。地震による死傷者などの被害を最小限に抑えるために、老朽建物の建替や耐震化、不燃化を促進しています。

 ──最後に、全体を通して一言お願いします。

 森山 災害は、いつどこで起こるかわかりません。被害を最小限に食い止めるためには、自分たちの住む地域の災害リスクを知り、非常時にどう行動するかを事前に決めておくことが重要です。「自分や家族の命は自分で守る」という意識をもち、いざというときのために、日頃からしっかりと備えておきましょう。

(了)

【田中 直輝】

(前)

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