2024年04月29日( 月 )

急速に生活に浸透するAI その活用は人類に幸せをもたらすのか(中)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

 2022年11月30日に無料公開された「ChatGPT」が瞬く間に世界の人々から注目を集め、すでに企業、市民を問わず多くのユーザーを獲得している。このChatGPTの実現を可能とした技術の発展、隣国韓国での活用の事例などに触れつつ、人々が今後より適切にAIを活用していくためには何が必要かを考える。

韓国でのAIの活用事例

 人間には体力の限界があり、疲れると集中力が失われやすいが、AIはいうまでもなく24時間仕事をしても、疲れたり、集中力を落としたりすることはない。

 韓国のあるAI関連企業では、プラント契約書のような膨大な書類をともなう契約を行うとき、人間に代わってAIがその契約書類を検討する。契約書には多くの専門用語が使用されていることもあって、専門家でもその内容を検討するのには膨大な時間を要し、大変に感じるという。そうした業務を法律事務所に依頼することも少なくないが、費用が嵩む。また、契約書のなかに自社にリスクとなり得る条項が盛り込まれているかどうかを探す作業は、弁護士であっても骨の折れる業務である。それで敬遠されがちであるのが現実という。

 そこでそのような膨大なデータのなかからリスクとなり得る条項を探すため、作品に剽窃などがあったかどうかを探すためにAIが活用されている。

 韓国でAIをうまく活用して企業価値を向上させた企業はほかにもある。この会社はソウル大学出身の大学生4名によって創業された会社であり、そのビジネスモデルは学生が数学の問題を解く際に解き方がよくわからない場合、スマホなどのカメラで問題の写真を撮ってアップロードすると、それに対する解き方を教えてくれるというものである。このサービスは講師を募集し、学生の質問に答えさせていた。講師が問題に回答を出すと、会社は1つの問題あたり500ウォン(約50円に相当)を報酬として支払うシステムだ。

 さて、このサービスが人気を博し、会員がどんどん増えていった。時間が経つにつれて、大量のデータが蓄積されていく。そこで、以前に出されたことのある質問に関してはデータからAIが対応することとし、AIが対応できない問題だけを人間の講師が対応するようになった。AIが対応することによってスピードは速くなったし、会社からすると、講師に同じ問題に対して再度報酬を支払わなくても済むので、コストを削減できた。この会社は現在も成長を続けており、有料会員だけでも約8,000万人に達し、Googleなどが投資をするほどの有名企業に成長した。時価総額はすでに2兆ウォンを上回り、AIを学習に活用した成功事例となっている。

AI イメージ    そのほか、ヘルスケアなどにおいてもAIは活用されている。AIが最も得意としている分野は、実は画像分析であろう。ディープランニングを活用して大量の画像を学習させると、AIアルゴリズムは疾患に共通する特徴点を自分で見つけ出し、専門医と同等または、それ以上の精度で病名を特定することに成功している。レントゲン写真なども、生身の医者は診療の傍ら、写真から判読し続けるうちに疲れが溜まってくる。しかし、AIにはそのようなことはなく、同じ質を保ったまま疾病を診断し続けることができるようにあった。現在ではAIは補助的な役割を担うにすぎず、最終決定は医者がAIの診断を参考にしながら下すことになる。しかし、今後ガンの診断などにおいてAIの活用は増加するだろう。

 人材不足が深刻な食堂やレストランなどでも、ロボットの導入は増えている。料理を運ぶ搬送ロボットなどを韓国では最近よく目にするようになった。物流倉庫や自動車工場などの現場でも、ロボットの導入が増えている。ロボットは些細なミスを起こさないし、疲れることもなく、またストライキも起こさないので、生産性の向上に大きく貢献している。

 最後にAIを英会話にいち早く導入し、話題になった企業のケースを紹介する。外国語を勉強していると、ネイティブと会話したくなるのが一般的だ。しかし、外国人の講師を雇うとなると、ビザの問題を始めいろいろなハードルがある。相手が人間ではないことからある意味気軽に何でも自由に話せるということで、同社のサービスは人気が出ている。大量の文章が入力されており、人間の先生のようにロボットと会話を交わせるのが特徴である。このように韓国では、さまざまな場面でAIが広範囲に活用され始めている。

(つづく)

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