2024年05月21日( 火 )

「2024年問題」の解決策? 建設DXやBIMの現状──(前)

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認知度は全体の約7割、経営層の5割がDXを重視

 いよいよ2024年4月から、これまで猶予期間が設けられていた建設業界においても時間外労働の上限規制の厳格化が施行される。いわゆる「2024年問題」だ。

 この「2024年問題」の認知や対応の状況に関して、現場の効率化から経営改善まで一元管理できるクラウド型の建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供する(株)アンドパッド(東京都千代田区)では、幅広い職種で勤務する20~69歳の建設業従事者(n=1,442)に対しての独自調査を実施し、今年1月に発表。それによると、「時間外労働の上限規制厳格化」の認知については、「よく理解している」(27.8%)と「少し理解している」(39.3%)を合わせて67.1%となり、建設業従事者の約7割が認知しているという結果となった。

 「残業抑制への取組状況」については、「まだ取り組めていない」あるいは「わからない」が56.1%に対し、「すでに取り組めている」は43.9%となっており、全体の約4割がすでに残業抑制への取り組みを行っている。一方で、「残業削減の効果が出ている」は23.4%で、全体の約2割しか残業削減の効果を実感できていない結果となった。また、「残業抑制への取組内容」(n=634)では「労働時間・残業時間の管理」が最も多く、以下、「週休2日制の導入」「退社時間の呼びかけ・声かけ」「ノー残業デーの導入」「残業の事前申請制の導入」「工期設定の見直し」「DX化(ITツールやシステムの導入)」と続いている。

 「削減したい業務」(n=927)では、「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」がトップで、次いで「現場写真の整理」「発注・受注・請求に関する事務作業」と並んでおり、現場作業よりも事務系作業の削減が望まれている結果となった。時間外労働の上限規制に対応するうえでのDX化の重要性については、経営層(n=515)の49.2%が重要と考えており、とくにゼネコンや不動産、外構・エクステリア・造園などの領域で顕著だった。導入したほうが良いITツール・システムとしては、経営層(n=187)と一般社員・管理層(n=363)ともに「施工管理」に対してのスコアが高いが、一般社員・管理層でより高くなっており、経営層よりも現場からの要望が高い模様だ。今回の調査結果では、とくに現場に携わる一般社員からは、日頃の業務量が多い「報告書・図面・見積もりなどの書類作成」などのペーパーワークへの業務効率化が強く求められている結果となった。この分野を効率化できるDXツールの活用が、「2024年問題」への有効策の1つとなりそうだ。

 なお、同調査結果を公表したアンドパッドでは、建設DXツールのなかでも施工管理アプリでシェアNo.1を誇る「ANDPAD」を提供し、建設業界全体のDX化に貢献している。ANDPADについては、別項で詳しく取り上げているので参照されたい。

アナログ主体の建設業界、特定領域でDXの可能性

 「建設DX」とは、建設業界においてIoTやAIなどのデジタル技術を用いて業務方法やビジネスモデルの変革を行い、生産プロセス全体の最適化を目指す取り組みを指す。

 ただし、他の業界と比較すると建設業界でのDX化は立ち遅れている。その大きな要因として挙げられるのは、「アナログな業務が多い」という業界特有の特徴だ。2000年代以降、さまざまな業界・産業でデジタル化が加速していったが、アナログ的な現場作業が主体となる建設業界では、たとえば基礎工事の型枠組みや鉄筋加工、外構工事のブロック積みなど、熟練工の属人的な技術を必要とする業務領域が多く、デジタル化が困難となっている。また、現場作業を主体とするアナログな生産体制ゆえにITリテラシーが低く、デジタル化への抵抗感をもつ人材が多いこともDX化を阻む要因だ。

 ただし一方で、施工管理のリモート化や図面のペーパーレス化、ドローン技術を活用した測量といった業務領域では、デジタル活用が進みつつある。前出の調査結果でも、施工管理やペーパーワークでの業務効率化に寄与するDXへの期待が高いという結果が出ており、建設DXは当面この領域で進行していくことになるだろう。

 なお一口に建設DXといっても、技術的にはおおよそ7つに大別される。順に挙げると、人間の思考をシステムで再現する「AI(人工知能)」、安全性リスクのある斜面や高所の点検作業で使用される「ドローン」、データや業務システムなどをインターネット経由で利用できる「クラウド技術」、ネットワークを使ってコミュニケーションを取るほか、情報の共有や共同作業などを行う「ICT(情報通信技術)」、衛星を利用し精度の高い位置情報を取得する「RTK測位」、土木や建物などを3Dデータで表す技術である「BIM/CIM」、そして多数のデバイスや機器との接続が可能、超高速・大容量の通信ができる次世代移動通信規格「5G」だ。そのなかで今回は、とくに「BIM(ビム)」について取り上げてみたい。

属性情報を包含した、仮想空間上の3Dモデル

イメージ    BIMとは「Building Information Modeling」の略称であり、コンピュータ上の3次元の仮想空間のなかに、模型のように建物を組み上げる設計手法のことである。設計された3次元モデルは、建物を構成する材料や設備機器などのそれぞれの部材ごとに、「製品情報」「位置情報」「数量情報」「価格情報」などの個々の属性データが付加されており、それらを設計図や3次元モデルとリンクさせてデータベース化することで、設計から施工、維持管理までのあらゆる工程でこれらの情報を一元的に管理することが可能となっている。建築ビジネスの業務を飛躍的に効率化しつつ、建築デザインにイノベーションを起こす画期的なワークフローであるといえよう。ちなみに、BIMを手本として土木分野にまで適用したものは「CIM(シム)」(Construction Information Modeling/ Management)と呼ばれており、国土交通省(以下、国交省)では「BIM/CIM」として一体的に普及を推進しようとしている。

 現在、日本で使用されている主要なBIMソフトとしては、「Revit(レヴィット)」(米・オートデスク社)、「ArchiCAD(アーキキャド)」(ハンガリー・グラフィソフト社)、「Vectorworks(ベクターワークス)」(米・ベクターワークス社)、「GLOOBE(グローブ)」(日本・福井コンピュータアーキテクト(株))の4つがある。各パーツのもつデータ情報を生かし、データベースとしてのトータルBIM活用が可能な「Revit」、レイヤー機能があり、3Dオブジェクトが充実している「ArchiCAD」、コストパフォーマンスと汎用性に優れた「Vectorworks」、日本の設計手法や建築基準法などに細かく対応している「GLOOBE」など、ソフトごとに機能や特徴、操作方法、価格などが異なり、一概にどのソフトが優れているとは言い難いようだ。

高度な設計品質と作業効率化との両立

 BIMの最大の特徴は、属性情報をもった部材で組み立てられた3次元モデルという点だ。1つひとつの部材が、それぞれ性能や価格などの属性情報をもち、それがすべてデータとして集約されているため、たとえば「ビスが何本使われている」「どれだけの面積」といった情報がすぐに得られるほか、積算の際にも瞬時に正確な金額をはじき出すことも可能。設計・発注・施工の各段階において、設計の検討や工程管理、品質管理、コスト管理などの各種のマネジメント業務を行っていく「コンストラクション・マネジメント」方式との相性も良い。
 また、これまでの主流である2次元CADの場合は、完成形が3次元である建築物を2次元に投影して表現しなければならないため、「平面図」や「立体図」「パース」などを別々に作成する必要がある。もちろん積算図や建具表なども、それぞれの図面を別途作成しなければならない。その点、BIMでは仮想空間上の3次元モデルから必要な分を切り出すことで、こうした平面図や立体図、パースなどを瞬時に作成することが可能となっている。部分的な修正が発生した場合も、2次元CADのように関連する図面を1つずつ修正する必要はなく、大元となる3次元モデルを修正すれば、その他のすべての図面に反映される仕組みだ。

 3次元モデルという視覚的なメリットも大きい。たとえば建築や設計のプロであれば、2次元の図面から完成形である立体像を想像できるが、素人である施主はそうはいかない。その点、3次元モデルで見せられれば、建築物に対する施主の理解も早く、説明に費やす時間の短縮が可能となるほか、竣工後のイメージも湧きやすい。そのため、施主の意向による軌道修正なども早い段階で実施されるうえ、後になってひっくり返ることもなく、工程全体がスピーディーかつスムーズに進むというわけだ。また、施主だけでなく、実際に施工する業者の理解度も高くなり、施工途中のミスが起こりにくくなるという効果もあるという。

 さらに、BIMは熟達すれば、2次元CADと比べて作図時間が3分の1から4分の1になるともいい、作業時間の大幅な短縮なども期待できるという。建設業界における人材不足の問題が叫ばれて久しい一方で、「働き方改革」の加速化を強く求められている現在、高度な設計品質と作業効率化との両立が可能となるBIMは、これまでの建築設計の在り方に変革をもたらすだけのポテンシャルを秘めているように思われる。

(つづく)

【坂田 憲治】

(後)

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