2024年06月26日( 水 )

いま世界で何が起きているのか?(4)

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広嗣 まさし

ペリーが迫った日本の選択

    現代世界は19世紀以来の植民地主義、あるいは帝国主義から抜け出していない。この認識のもとに、近代の日本を振り返ってみたい。

 まず日本の歴史を大きく変えたペリー来航。19世紀半ばのことだ。当時のアメリカに帝国主義的な意図はなかったかもしれないが、先住民族を消滅させつつ西部開拓を続けていた時代であり、自分たちは文明を「未開」の人々にもたらすのだという意識がそれを支えていた。日本に到着したペリーも、そうした認識のもとに日本を見たはずだ。

 ペリーは日本が単なる「未開」の地だとは思わなかった。しかし、自国の利益のためだけでなく、「文明」を広めたいという使命感があって、日本を開国させたいと思ったのだ。彼の来航を機に、日本は鎖国から開国へと踏み切る。そして、西欧を中心とする世界史に参入する。植民地主義の時代であったから、必然的にこの流れに巻き込まれることになる。となると、残された選択肢は植民地にされるか、それを免れるかのいずれかであった。

 日本政府は迷いなく後者を選択するが、そこでまた新たな選択肢が生まれる。欧米列強の植民地にならず、しかもそれまでのように孤立を保つのがよいのか、それとも欧米列強のように植民地主義の国になるのか、そのいずれかである。国際情勢を考えれば、前者の選択はほぼあり得なかった。日本は当然のごとく後者を選んだ。

ウクライナ情勢と酷似する日露戦争の構図

 「富国強兵」を掲げた明治政府は一気に、欧米型植民地主義の路線を歩み始めた。まずは北海道開拓によるアイヌ民族の征服。日清戦争に勝利すると、台湾の植民地化。日露戦争に勝利すると、現在の中国の東北部と朝鮮半島を植民地化する。

 こうして名実ともに列強の一員となり、やがてアジアから欧米勢力を撃退し、自らが盟主になろうという野望を抱く。その野望の行き着くところが中国との戦争であり、英米との戦争となる。そこでついに敗北を喫し、その後は戦勝国アメリカの傘下に入り、現在に至っている。

 さて、こうした日本近代史で見落としてはならないことがある。日露戦争が現代史の先駆けであったことだ。この戦争は日英同盟が機縁となっており、日本はイギリスとアメリカの後押しのもとにロシアと戦った。現在のウクライナが英米の支援のもとにロシアと戦っていることと、構造的に近似している。

 日本は当時のロシアの国情が不安定であったことで勝利した。強権を誇るプーチンのロシアと戦うウクライナの劣勢とは比べられない。しかし、英米に対するロシアという構図はすでに日露戦争にもあり、それが今はウクライナ戦争となっているのである。ウクライナが英米に踊らされているとすれば、日露戦争時の日本も英米に踊らされていたことになる。これを見逃して、近代日本史を語れないだろう。

アメリカと敵対せずに主張することができるか

 現在のイスラエルも帝国日本を彷彿させる。コロンビア大学のサックスがいうように、「神国思想」で舞い上がっているイスラエルは、アメリカが後押ししてアラブ勢力を封じ込める政策に踊らされているのだ。しかも、大日本帝国が大東亜共栄圏を目指したように、イスラエルは大イスラエル主義を掲げ、神国思想に取り憑かれている。「歴史は繰り返す」というが、イスラエルを見ていると他人事とは思えない。

 イスラエル人はパレスチナ人を人間扱いしていないと聞く。これにつけても、中国人を「ちゃんころ」と蔑視し、韓国人を「チョン」と呼んで馬鹿にしていた日本人が思い出される。植民地主義が横行するところでは、どこでもこうした差別を見ることができる。アメリカでは支配勢力である白人が先住民を「インディアン」として蔑視し、黒人のことを「ニガー」と蔑んできた。アメリカも本質的に植民地主義の国なのである。

 では、そのような世界史の流れのなかで、日本は今後どのようにしていくべきか。まずいえるのは、アメリカ勢力圏から早急に抜け出すことはできないと心得るべきだということだ。なぜなら、完全独立を主張できるほどの「根性」は今の日本にはないから。

 しかし、だからといって、常に「アメリカさまのおっしゃる通り」という姿勢で臨むべきではない。それを続ければ、アメリカは喜ぶどころか、かえって怪しむだろう。もう少し「本音」を出すべきである。

 言い換えれば、アメリカに対してもう少し気楽に発言できるようにならなくてはならない。アジアの一員であり、中国やロシアと隣接する国なのだから、アメリカからは見えない部分があるはずで、それをしっかり見とどけて、そこからアメリカに向けて提言を発すべきなのだ。これをすることで、アメリカとは敵対せずに、少しずつ自らの立場を構築できる。

 日本は、ロシアや中国とうまくやっていかなければならない。そのためには、アメリカの望む対立構造に組み込まれないようにしなくてはならない。アメリカに歯向かうことなくそれができるか? できるようにならねばならない。

(了)

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