「もう天井？」2024年地価公示、福岡はさらに上昇（1）

上昇の傾向変わらず

　3月下旬、国交省は今年の地価公示を発表した。全国平均は、住宅地（2.0％）および商業地（3.1％）が3年連続で上昇したほか、上昇率も拡大した。

　都道府県庁所在地では前年に続き、福岡市が住宅地（9.6％）、商業地（12.6％）ともに上昇率トップとなった。商業地は4年連続。都道府県でも福岡県の商業地（6.7％）は4年連続トップとなった。

　地点別の上昇率トップテン（全国）には、住宅地で福岡市博多区麦野3丁目（19.6％）が7位に入った。商業地は、上昇率1位の熊本県大津町、2位の熊本県菊陽町、3位・5位の北海道千歳市、9位の北海道北広島市など、半導体工場の立地に絡む地価上昇が目立った。福岡都市圏の動向はここ数年大きな変化はなく、「天神・博多の拡張」「ららぽーと開業効果」による影響が変わらず続いている状況だ。福岡県内で最も高い地価となったのは、これまでと変わらず旧天神コア前で、ｍ²単価は1,180万円（4.4％上昇）だった。なお、同地では、天神コアビルを含む福ビル街区（福岡ビル、天神コアビル、天神第一名店ビルなど）の一体的な再開発プロジェクトが進行中。今年12月の竣工、来春開業予定を控え、建設工事が進められている。

【住宅地】上昇率上位

    まずは、福岡県内の上昇率上位から見ていこう。住宅地の上昇率1位となったのは、「麦野3-17-24」で前年比19.6％増の19.5万円。2位の「諸岡1-24-10」は同18.4％増の21.2万円。これらはいずれも「ららぽーと福岡」の開業効果もあり、近年地価上昇が顕著なエリアだ。倉庫やオフィスなど、住宅と比べて区画が大きな建物が多かったエリアで、権利関係も複雑ではなく再開発が進みやすかったことから、近年はマンションや戸建住宅の開発が相次いでいた。

　3位の「山王1-84番」は、最寄り駅の地下鉄・東比恵駅から徒歩15分という立地ながら、博多の拡張とららぽーと開業効果もあり、4年連続で10％超の上昇率で推移しており、ｍ²単価は36.7万円にまで上昇した。なお、これまで賃貸マンション解体後はコインパーキングとして運用されてきた同地だったが、今年3月に新たな賃貸マンション（20戸）が完成している。

    4位の「赤坂2-2-11」は大きく上昇した前年（17.2％）から、さらに18.0％上昇し、ｍ²単価は79.5万円となった。赤坂駅から徒歩8分の舞鶴公園にも近い立地で、「ファミリー向けのマンション需要が非常に高く、マンション素地や建築費の高騰分を販売単価に転嫁しても、マンションの売れ行きは高い地域」と評され、一種単価130万円と高い評価を得ている。天神エリアに隣接する赤坂エリアでは、ザ・リッツ・カールトン福岡が入る福岡大名ガーデンシティが昨年3月に竣工を迎え、話題となったことも影響しているだろう。近隣の赤坂1丁目では、（株）ビーロット（東証スタンダード）がRC造・地上9階建のオフィス・テナント複合ビルを今年9月の竣工予定で建設しているほか、（株）モダンプロジェ（福岡市中央区）が賃貸マンション・Modern palazzo赤坂NEUROを2月に完成させるなど、開発も活発に行われている。

    5位の「大濠1-13-26」は、大濠公園を目の前に臨む福岡一の高級住宅地にあり、例年と比べても上昇幅が大きかった地点。同じく大濠公園の目の前では、自社の賃貸マンション跡に積水ハウス（株）（東証プライム）が分譲マンション・グランドメゾンの開発を予定しており、その後の地価にも影響を与えそうな高級マンションとして分譲される見通し。

（つづく）

【永上　隼人】