ロードサイド店舗の木造化、佐賀ではオートバックスも

高い環境性能を実現

　ロードサイド店舗は、これまで鉄骨造やRC造が主流だったが、さまざまな業種や企業による木造・木質化の動きが見られるようになってきた。

　（株）オートバックスセブンは4月18日、「オートバックス佐賀大和インター店」を新規オープン。国内1,006店舗（同日時点）あるグループ初の木造店舗だ。新店舗は店舗・自動車の整備場（事務所含む）とタイヤ売場の2棟からなり、総延べ床面積は677.97ｍ²。いずれも平屋建の建物となっている。

    ツーバイフォー材（厳密にはツーバイシックス材）を主に使用した枠組壁工法によるもので、北米産材の集成材によるトラス架構が採用され、柱や間仕切りがない大空間を実現。トラスの露出で木材による温かみがある店内が演出されている。大きな特徴の1つが、「BELS」の5つ星と、「ZEB Ready」を取得したこと。建築物省エネ法第7条に基づき建築物の省エネ性能を表示する第三者認証制度であり、この店舗では同じ木造建築の条件下の物件と比較して、冷暖房と照明などの一次エネルギー消費量を約56％削減できると認証されている。

　同グループでは非財務目標の1つとして「環境配慮型店舗の設置によるCO2の削減」を掲げており、佐賀大和インター店はその実現に向けた取り組みを象徴するものといえる。使用された木材は約110tのCO2貯蔵量効果があるとされる。従来店舗の構造体の素材である鉄骨は、その製造や輸送の過程で大量のCO2を排出するが、木材はそれが少なく、建物建設後も長く内部にCO2を溜め込むことから、環境配慮の面で優れているというわけである。オートバックスセブンは、「今後も木造建築の採用を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献」するとアナウンスしている。

ベースは2×4住宅技術

　佐賀大和インター店の建物は、全体施工をこれまでオートバックスの店舗施工を担当してきた建設会社が担ったが、部材の供給や構造設計、建方施工を行ったのは大手ハウスメーカーの三井ホーム（株）だ。同社は近年、住宅におけるツーバイフォー低層住宅建築のノウハウを生かし、「モクシオン」ブランドによる中高層集合住宅の建設、さらには中規模商業施設の建設など木造建築物の普及に注力をしており、その一環として今回のように建築部材を外販する事業も展開している。この建物については、それらで培った独自技術により、店舗に必要とされる大開口、無柱空間などを実現した。

「環境経営」で木造化

　オートバックスセブンは、以前から木造店舗の出店を検討していたという。しかし、「大空間が可能な会社が見つからず断念していた。三井ホームの技術であれば大空間や大開口が可能ということを知り」（同社担当者）、店舗の木造化に踏み切ったのだという。鉄骨造が主だった従来店舗とは建設スキームが異なるほか、建設コストなどいくつかの課題が存在したことが想像されるが、オートバックスにとって、木造店舗の展開は「環境経営」のためにも、チャレンジすべき価値があると認識されたようだ。

　ところで、このような木造店舗の展開は、高度な安全性が求められるガソリンスタンドの新規出店でも一部で始まっている。たとえば、2022年に出光興産（株）が環境配慮型のガソリンスタンド1号店として、高知県南国市に「スマートエコステーション南国バイパス」を国産木材で建設。これは給油所の屋根や建屋にCLTを使用したもので、同社ではその後もタイプグリーンの店舗を開設している。また、直近で国内最大手のハンバーガーチェーンが、既存店舗の木造・木質化に動いているという情報も耳に入るようになった。

　建築物の木造・木質化では、都市部における高層ビルの建設に関するニュースが注目されがちだ。しかし、今回紹介したような低層の店舗などに比べ、高層建物のニーズは限られる。そのため、低層店舗における木造化・木質化がより一層広がれば、地域の建設会社や住宅企業の参入も可能になり、地域経済の活性化につながるとの見方もある。

【田中　直輝】

＜COMPANY INFORMATION＞
（株）オートバックスセブン
代　表：堀井 勇吾
所在地：東京都江東区豊洲5-6-52　NBF豊洲キャナルフロント
設　立：1947年2月
資本金：339億9,800万円
ＵＲＬ：https://www.autobacs.co.jp/ja/index.html

三井ホーム（株）
代　表：池田　明
所在地：東京都新宿区西新宿2-1-1号 新宿三井ビル53階
設　立：1974年10月
資本金：139億70万円
ＵＲＬ：https://www.mitsuihome.co.jp/