2024年07月19日( 金 )

空き家900万戸時代、福岡県の現状と対策とは(後)

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 空き家の増加に歯止めがかからない。国の最新の発表によれば、日本では空き家数900万戸、空き家率13.8%(いずれも2023年10月1日現在)であるという。空き家は景観や防災、衛生、そして資産価値など、まちづくりに悪影響をおよぼすとされる。今後も増加必至の空き家について、福岡県ではどのような状況にあり、どのような対策が行われているのだろうか。

「イエカツ」を創設

 福岡県では空き家の増加を防ぐため、どのような取り組みをしているのだろうか。大きく、「福岡県空き家活用サポートセンター(愛称=イエカツ)」の設置、福岡県版空き家バンクの創設がある。後者は、福岡県宅地建物取引業協会(福岡県空き家バンク)と、全日本不動産協会福岡県本部(ラビーネット福岡県空き家バンク)と協定を締結し、県内全域の空き家情報を提供するシステムを構築したもの。宅建事業者が仲介する市町村「空き家バンク」の空き家情報が横断検索できるようになり、空き家の利用希望者が効率良く物件を探すことができるようになっている。

 そして、前者は福岡県独自の取り組みとして実施されているものである。イエカツの特徴は、活用や処分の仕方について空き家所有者が専門知識を有する相談員に相談できる場で、相談員がその具体的な提案を行い、専門事業者(宅建事業者やリフォーム・リノベーション事業者など)とのマッチングまでをワンストップで行っている。市町村や地元の専門家と連携して、県内各地で空き家や住まいの終活に関する相談会やセミナーも定期的に開催している。

 また、空き家所有者などが相談しやすい環境をつくるため、空き家対策に積極的な専門事業者を「福岡県空き家活用応援事業者」として登録し、その情報をまとめた名簿の公表もしている。これにより、空き家所有者自身が容易に専門事業者の情報を得られるようになるほか、市町村職員などが住民からの空き家相談に対応する際、専門事業者の情報をスムーズに提供できるようにしている。

高まる県民の関心

 相談内容については、同センターの開設から3年半が経過するなかで年間400件、累計1,600件(24年3月末)の相談件数があり、そのなかには県外在住者で県内に空き家を所有している(する予定)人の相談にも応じているという。相談内容については【表③】の通りで、「売買・賃貸したい」の次に、「どうしたらいいのかわからない」が56.7%を占めている。「なかにはきちんと権利関係を調べたことがない相談者、たとえば固定資産税を払っているので所有していると思い込んでいた方もいらっしゃいます。ただ、寄せられる相談内容は10年前に比べれば確実に意識の高いものも増えており、空き家として放置をしたくないという意識が強まっているように感じられます」(高良課長)とし、そのことから県民の空き家問題に関する関心が高まっていることがうかがい知れる。

【表③】空き家活用サポートセンター作成
【表③】空き家活用サポートセンター作成

自分事として認識できるか

 いずれにせよ、公共機関で気軽に空き家に関する相談ができる窓口があるのは、県民にとって心強いことだろう。最後に、県として空き家問題に関して県民へ訴えかけたいことを聞いてみた。

 高良課長は、「住宅は私有財産であり、所有者自らの責任で対応してもらうことが、住宅・空き家政策の基本です。また、所有者がご存命のころからの対策、とくに権利関係を整理しておくことが後々の負担を軽減することに大きな効果をもちます。空き家は今後も増加するものと見られますが、空き家は適切に管理されていれば大きな問題にはなりません。ぜひ、自分事として空き家を捉えていただければと考えています」と語った。

(了)

【田中直輝】

福岡県空き家活用サポートセンター
(愛称=イエカツ)

サポートセンターの相談ブースの様子
サポートセンターの相談ブースの様子

    空き家の利活用に関して豊富な経験を持つ専門相談員が、空き家や将来、空き家になりそうな住宅を今後どうすればいいか、丁寧に相談に応じる公的機関。相談の流れは①状況把握と基本情報の提供、②権利関係の整理と活用・処分方法の検討・提案、③専門事業者とのマッチング。相談料は無料で、売却などの価格やコストの無料シミュレーションも行える。窓口と電話のどちらにも対応している。

<開設>
2020年10月20日
<所在地>
福岡市中央区天神1-1-1 アクロス福岡3階
((一財)福岡県建築住宅センター内)
<相談時間>
月~金(祝日、年末年始除く)午前9時~午後5時
<TEL>
092-726-6210

県内の空き家問題に関わる関係者が一堂に参集
「福岡県空家対策連絡協議会」開催

 5月21日、福岡県庁3階の講堂で「第11回福岡県空家対策連絡協議会」が開催された。福岡県のほか、国土交通省九州地方整備局(九地整)、県内の市町村、福岡県宅地建物取引業協会や福岡県建築士会、福岡県司法書士会など空き家に関連する団体の関係者が一堂に参集。全体を通じて、空き家問題への関係者の危機感が強く感じられた。

第11回福岡県空家対策連絡協議会の様子
第11回福岡県空家対策連絡協議会の様子

    会合ではまず、九地整の担当者から23年12月13日に施行された「改正空家対策特別措置法」についての説明が行われた。同改正法は、倒壊の危険性がある「特定空家等」の除去などの促進や、その状況になる前から活用の拡大や管理を行えるようにすることが盛り込まれたもので、その運用の在り方などについて説明が行われた。

 その後、福岡県の担当者から「2023年住宅・土地統計調査」の概要説明、福岡県建築住宅センターの担当者から「福岡県空き家活用サポートセンター(イエカツ)」についての紹介、大牟田市の担当者から「空家等情報のデータ化と活用」についての説明が行われた。さらに、福岡法務局の担当者による「相続登記義務化」についての説明、福岡県司法書士会の関係者による「空き家問題関連法令の改正」についての説明などが行われた。

(前)

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