福岡・西区の龍神神社 小戸大神宮
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小戸大神宮とは
小戸大神宮は、生の松原や今津湾を望む景勝地・小戸公園内(福岡市西区)にひっそりと佇む神社である。小戸公園には、バーベキュー場やアスレチック公園、南西側にはヨットハーバーがあり、週末は多くの家族連れで賑わう。その小戸公園には、神社が2社ある。1つは本殿も拝殿も建物がない小戸妙見神社、もう1つが今回紹介したい小戸大神宮である。
小戸大神宮は、海から引き揚げられた銅矛二本が神宝とされ、1725(享保10)年に福岡藩六代藩主・黒田継高(つぐたか)が社殿を建立した。木製の剣や鉾を奉納すると瘧(発熱)が治ると信仰されていたという。境内には神功皇后伝説にまつわる御腰掛け石(安産石)もある。
今年は辰年ということもあって、龍神神社に関するパワースポットの情報は多い。これまでに紹介してきた龍神神社と呼ばれている志賀海神社(福岡市東区)、住吉神社(福岡市博多区)、櫛田神社(福岡市博多区)、宗像大社(宗像市)は比較的有名で訪問者も多いが、小戸大神宮はそれほど知られていない隠れた龍神神社である。
小戸大神宮は龍神神社?
まずは、祭神とその由緒について、説明と記紀(古事記・日本書紀)にある神話から紐解いていこう。祭神は天照皇大神(あまてらすおおみかみ)、手力雄命(たぢからおのみこと)、栲幡千々姫命(たくはたちぢひめのみこと)の三柱である。由緒については国産みの神である伊邪那岐(いざなぎ)と伊邪那美(いざなみ)の子どもである火の神・火之迦具土神(ヒノカグツチ)を産んだ際、伊邪那美は火傷を負い絶命する。それを蘇らせようと伊邪那岐は黄泉の国に向かうが、連れ帰ることは叶わず現生に逃げ帰って来る。黄泉の国はとても汚い国で、穢れを払うために「竺紫の日向の橘の小門の阿波伎原」に向かったとされている。それが福岡市西区小戸の小戸公園の周辺と考える説がある。小戸大神宮は伊邪那岐が汚れを祓う禊ぎを行った場所なのである。
伊邪那岐が禊を行う際、水のなかから生まれたのが住吉三神(住吉神社の祭神)、綿津見三神(志賀海神社の祭神)、渦から生まれたのが禍津日神(護国神社の祭神)であり、数々の神を生み出して最後に生まれたのが、三貴子と呼ばれる三神、伊邪那岐が左目を洗った際に顕現した天照大神(あまてらすおおみかみ)、右目を洗った際に顕現した月読命(つくよみのみこと)、鼻を洗った際に顕現した素戔嗚(すさのお)である。天照大神は櫛田神社、住吉神社、そしてこの小戸大神宮が主祭神としている。素戔嗚は櫛田神社の主祭神で、素戔嗚が生んだ宗像三女伸は宗像大社の主祭神となっている。
これらのことから、水に関わる神が龍神と呼ばれ、その神が祀られる神社は龍神神社と呼ばれることが多い。龍脈のエネルギーが沸き出し続ける場所を龍穴と呼び、陰陽道や古代道教、風水術において繁栄する場所とされ、現代ではそれをパワースポットと呼んでいる。この禊に関わる神々はいずれも水に関係しており、これらの神が祀られる神社を龍神神社と呼ぶことが多い。そういった意味では、福岡には龍神神社は多いといえる。禊を行った場所と考えられている小戸大神宮も、龍神神社と言って差し支えないだろう。
なお、当社の祭神の一柱である手力雄命は有名な天の岩戸の岩戸隠れの際、扉を少し開けたときに天照大神を引きずり出した神である。【外部ライター・奥野晃市】
建築様式
小戸大神宮の建築様式は神明造。弥生時代の穀倉や住居として用いられた高床式建築に類似していて、切妻造、平入りが特徴である。伊勢神宮の本殿もこの様式を取っている。珍しいのは、本殿と拝殿が分かれており、拝殿が本殿より一段低い位置に建てられていることである。参拝の際に鳴らす鈴が本殿、拝殿ともに設置されており、これも全国的に珍しい。
本殿は神が鎮座もしくは神体や宝物が奉納されており、拝殿はお参りをする建物で鈴や賽銭箱が設置されている。本殿と拝殿が別々に建てられている場合、その間に幣殿という通路のような建物でつなぐことが多く、幣殿は本来、通路ではなく幣帛(神前への供物)や献上物を授受する建物である。小戸大神宮は本殿と拝殿が分かれているうえにつながっておらず、その高さも違うので、拝殿から本殿に向かう際は両脇につくられた階段で上り下りすることになる。
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