15年ぶりにチェコ原発受注の可能性に沸く韓国(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏チェコの原発とは
韓国電力公社の子会社である韓国水力原子力は、チェコのドコバニ原子力発電所1000MW(㎿) 原子炉2基の増設事業の入札で、フランス企業を抑えて、優先交渉権者となった。
今回の入札は、2022年3月にチェコの国際競争入札の一環としてスタートした。入札の初期には韓国水力原子力と、フランス電力公社(EDF)、米国ウェスティングハウスが競合していたが、最終的に事業候補はEDFと韓国水力原子力2社に絞られた。
ヨーロッパでフランスは原発の分野で最も影響力のある国なので、入札でEDFが優位に立つだろうという観測が支配的であった。しかし、いざ蓋を開けてみると、入札の結果は、韓国企業の技術力と経済性が評価されたかたちとなった。
事業の規模も最初は原子炉1基を増設する予定であったが、ロシア・ウクライナ戦争でエネルギーの安定的な確保が緊急課題となったうえに、AIブームによるデータセンターの増設、気候温暖化の影響による世界的な脱炭素の機運の高まりを受け、今年1月に事業規模は拡大され、最大4基となった。韓国企業が最終的にチェコの原発を受注することになると、アラブ首長国連邦(UAE)のバラカ原発受注以来15年ぶりの原発受注となる。
チェコの原発入札で優先交渉権者になった韓国水力原子力は、チェコの発注先であるチェコ電力公社(CEZ)の子会社ドバコニ原子力発電会社(EDU)と、今年の年末まで契約の細部事項について協議し、来年3月に最終契約を締結する予定である。原発の建設工事は29年に着工し、36年に商用稼働を目標としている。
チェコ原発の受注に韓国が成功した場合、今後ポーランド、ルーマニア、スウェーデンなども原発の発注を計画しており、ヨーロッパ市場攻略の足がかりとなり得る。しかし、優先交渉権者に指名されても、最後まで工事金額の交渉、工事資金のファイナンス条件などをめぐって激しい条件交渉が進められることになるので、今後どのような結果になるのかは誰も予想できない。とはいうものの、原発強国のフランスを抑えて韓国が入札で勝利したことの意味は大きいといえるだろう。
勝利の要因は
原発の建設には莫大な費用がかかるため、ファイナンス能力が重視される。今まで東ヨーロッパの国々は、巨額の資金を提供してくれるロシアの原発を選択していた。ところが、チェコ政府は国の安全保障を理由に、中国とロシアを入札の原発受注対象国から排除した。
韓国は原発においては、どちらかというと後発組であるものの、原発24基を現在も運用しているので、原発の経験が蓄積された国でもある。前政権で脱原発の政策を推進し、原発業界が厳しい時期を迎えてはいたが、韓国は製造業の基盤が強く、部品製造のサプライチェーンは温存されており、価格競争力があったことが、今回の成功につながった。
今回の成功要因のその他の要因としては、チェコの環境に最適な1,000MWの原子炉を提案したこと、世界最高水準の原発建設能力を韓国が保有していること、バラカ原発の運用経験などがあげられるだろう。
韓国政府は今回のチェコ原発入札に勝った勢いで、ヨーロッパの他の国にも原発を輸出しようとしている。米国、フランス、中国、ロシアなどの原発強国との競争で、韓国はどのような戦略で臨むかというと、価格競争力と、納期をよく守ることで優位性を出そうとしている。チェコ以外にもポーランド、オランダ、ルーマニア、フィンランド、スウェーデンなども、原発を導入するための事業妥当性検討などを進めており、ヨーロッパへの原発輸出が拡大される公算が大きい。
(つづく)
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