2024年10月04日( 金 )

宿泊事業に本格参入、大英産業の新たな挑戦

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大英産業(株)

大英産業(株) 専務取締役 新規事業開発本部本部長
茅原嘉晃(かやはら・よしあき)氏

宿泊事業参入のきっかけは、産官学ビジネス共創

 北九州市を拠点に活動する総合不動産会社の大英産業(株)は今年3月、旅館業の営業許可を取得し、新たに宿泊事業を開始した。これまで分譲マンション・サンパークシリーズの供給を筆頭に、新築戸建、中古住宅、駅前再開発をはじめとした街づくり事業などに取り組んできた同社だが、宿泊事業への挑戦は初となる。

 宿泊事業を主導するのは、新規事業の創出に取り組む新規事業開発本部。新設されまだ間もない部でもあり、現在2名体制で宿泊事業の拡大に臨んでいる。同部の本部長であり、専務取締役・茅原嘉晃氏は、宿泊事業への挑戦のきっかけとして、「クアトロヘリックス(4重らせん)キャンプ」の存在を挙げる。

 「フォーアイディールジャパン(株)主催のクアトロヘリックスキャンプは、スタートアップ企業と、地元企業・自治体、大学生の4者で新たなビジネスを共創する場です。昨年北九州でも九州工業大学協力の下で開催され、当社は地産地消DXや宿泊・旅行業界向けのDXを推進する企業、そして、九工大の大学院生の皆さんと共創チームを組みました。新規事業についてアイデアを出し合うなかで、北九州観光の課題が明確化され、北九州の魅力をより体験してもらうために、当社がはたせる役割として宿泊事業に取り組むことになりました」(茅原専務)。

 北九州市の観光地点を訪れた観光客の実人数は約1,120万人。このうち、日帰り客が約946万人で8割以上を占める(市公表『北九州市観光動態調査(令和4年次)』参照)。同社の宿泊事業への挑戦は、市内における滞在型観光を後押しするものでもあり、地域活性化の一助となることが期待される。

1号物件が堅調、博多で新規取得へ

 同社は主に簡易宿所の営業を通じて、北九州市および近郊エリアの観光振興に寄与したい考えだ。記念すべき1棟目の物件には、地元・北九州市小倉南区で利用していた自社のモデルハウスを活用。「Casa Stay Kokura1(カーサステイコクラワン)」としてリニューアルし、3月の稼働開始から5カ月(取材時点)、評判は上々だ。

 「事業開始当初の宿泊客の割合は、日本人約2割、外国人約8割でしたが、日本人の宿泊客が増えるシーズンもあり、現在では平均して日本人3.5割、外国人6.5割の割合です。宿泊料金は平日と祝日で変化をつけるなど、需要に応じて柔軟に対応しているほか、駐車場も備えていますので、ここを拠点に市内の観光スポットや近郊エリア、なかには遠方まで足を伸ばされる方もいます。おかげさまで稼働率も順調に推移しており、市の観光課にも興味をもっていただきました。産学官共創が宿泊事業の出発点でもあります。地域とも連携しながら、宿泊客の皆さんに北九州を余すところなく、まるごと1つのコンテンツとして楽しんでもらえるよう、尽力していきます」(茅原専務)。


Casa Stay Kokura1(1階:60.45m2/2階:54.65m2
所在地:福岡県北九州市小倉南区葛原東2-2-2
チェックイン :午後5時〜午後10時
チェックアウト:午前11時

 好調なスタートを切るなか、同社は7月、不動産販売などを行う(株)グランディーズ(大分)との間で不動産の売買契約を締結。福岡市の都心部・博多で、RC造・地上7階建(建物面積741.94m2、客室数18室)の簡易宿所を取得した。決済・引渡(予定)は10月1日。3月のCasa Stay Kokura1の事業開始から矢継ぎ早の展開で、同社の宿泊事業拡大への意欲がうかがい知れる。

 福岡市内はインバウンドが急速にV字回復を遂げ、外国人入国者数もコロナ禍前を上回っている。市内都心部・博多での簡易宿所取得は、同社の宿泊事業の規模拡大に向けて大きな推進力となる。

 「総合不動産業者として培ってきた知見、ネットワークを生かした不動産の買取は当社の強みですが、宿泊事業の規模拡大を図るために、たとえば一括借り上げのうえ、簡易宿所を運営するという方法もあります。当社では専門業者協力の下、簡易宿所の運営にも携わっています。将来的には、簡易宿所の運営受託も可能になるかもしれません。運営に関するノウハウや運営を頼める企業が身近にいないために、宿泊施設の開発を躊躇うオーナーさまもおられるのではないでしょうか。当社が宿泊事業で実績を上げ、そうしたオーナーさまの力となることで、まずは地元北九州の観光振興に貢献していきたいと考えています」(茅原専務)。

 小倉城の天守閣を利用した小倉城ナイトキャッスルバーや、皿倉山麓に誕生した商業エリア・皿倉テラスなど、北九州市には新旧融合の観光コンテンツが少なくない。それらを十分に体験してもらうためにも、市内における宿泊拠点整備が重要になる。大英産業の宿泊事業への挑戦は、市の滞在型観光への移行を促す、呼び水となる可能性を秘めている。

【代源太朗】

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