2024年10月09日( 水 )

「配管のことなら何でもそろう」を三世代にわたって追求し続ける

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三興バルブホールディングス(株)

三興バルブホールディングス(株) 長﨑洋也代表
長﨑洋也代表

 三興バルブホールディングス(株)は、戦後まもなくの創業から一貫して管材を手がけ、多くの顧客から信頼を勝ち取ってきた。三代目となる長﨑洋也代表取締役社長は、創業以来のテーマ「配管のことなら何でもそろう」を、現代ならではのやり方でさらに突き詰め、新たなかたちで顧客満足を実現し続けている。

戦後復興期からTSMCまで顧客満足を目指し続ける

 「配管のことなら、何でもそろう」。圧倒的な商品供給力で、九州一円の工事現場に部品供給を続けてきた三興バルブ継手(株)。2019年に三興バルブホールディングス(株)(以下、HD)を設立しホールディングス化、三興バルブ継手、武蔵鋼管(株)、(株)協和商会、(株)エフライズ、(株)翔栄エンジニアリング、(株)エル・シーの6社を傘下に置き、より幅広く顧客のニーズに応え、「困りごと」を解決する業務に邁進している。

 創業は、まだ博多の街に戦災の痕跡が残る1947年のこと。もともと鉄工所に務めていた創業者長﨑洋六氏が独立して立ち上げた三興商会が、すべての始まりだった。厳しい価格統制が行われた戦後復興の時代、顧客満足を第一にと滑り出した三興商会の将来を大きく切り拓いたのが、50年に始まった朝鮮戦争が引き起こした朝鮮特需だった。翌51年には三興バルブ継手として株式会社化。高度経済成長期を通じて業績は順調に伸び、九州各県に進出して支店や営業所などの拠点を設けた。

 81年、最初の事業承継が行われ、創業者・洋六氏が代表取締役会長に、二代目の洋臣氏(現・代表取締役会長)が代表取締役社長に就任した。2018年に三代目となる洋也氏が代表取締役社長に就任した。23年には熊本TSMC工場新設工事にも関わった。

 戦後の復興期から高度経済成長期、そしてバブル崩壊やリーマン・ショックなどを経るなかで、同社が一貫してこだわり続けてきたのが「何でもそろう」という創業以来のテーマだ。現代表の洋也氏は「在庫ヒット率」という指標を重視することでこのテーマの実現を目指している。

 在庫ヒット率とは、顧客から発注を受けた商品を在庫としてもっているかどうかを数値化した指標だ。創業者、二代目が口を酸っぱく「在庫を切らすな」と徹底してきた三興バルブの持ち味を、洋也氏は可視化することで徹底して追求している。

総アイテム数は3万を超える
総アイテム数は3万を超える

    「在庫ヒット率を指標とし始めた当初は、60%程度しかヒットしていませんでした。それから在庫アイテム数を増やし、倉庫のスペースを確保し、倉庫内でどう保管しておけば効率が良いかを検討するなどして、ようやく70%台まで伸ばすができました。23年は、国内の設備と規格が異なるTSMC関連の納品が増えたので50%台まで落ちてしまいましたが……。毎年2,000種ほどアイテム数を増やし、現在総アイテム数は3万を超えました。社内には在庫ヒット率向上を目的にしたチームもあるんですよ。今後もたゆまず追求していきます」(洋也氏)。

グループ内に社長20人を分社化で企業はより強固に

 創業以来のテーマを誠心誠意追い続ける三代目社長……というと、古風な一族経営企業、と捉える向きもあるかもしれない。だが洋也氏の経営者マインドは、そんな通り一遍のステレオタイプにはとても収まらない、オープンなものだ。

 そのオープンマインドを象徴するのが、「グループ内に10人の社長をつくりたい」という目標だ。三興バルブHDと三興バルブ継手は洋也氏が代表を務めているが、他の5社はそれぞれ別個に社長を置いている。

 「社長を経験する、つまり会社を経営する立場に立ったことがあるメンバーが多ければ多いほど、三興バルブグループは強くなる。だからどんどん分社化して、社員から社長を出していきたい。分社化ではなくて事業部なり部門なりでいいじゃないか、という考え方もあるかもしれませんが、社長と社内部門の長とでは裁量の範囲が違います。人材採用や予算管理などで、真剣さが変わってきます。集まって会議をすると、本当に活発に意見が出てきます。社長10人を目標に掲げましたが、そろそろ実現しますので、次は20人ですね」(洋也氏)。

 経営企画や事業計画、また経理や税務、総務などのバックヤード部門はHDが集約し、いわばシェアードサービスとして各社に提供しており、各社は事業そのものに集中して注力できる、というわけだ。

三興バルブホールディングス(株) 本社社屋
本社社屋

    さらに興味深いのが、ワーキンググループ(以下、WG)制。事業部・部・課などの社内組織を縦軸としたときに、その組織を横断してつくられるのがWG。たとえば新卒採用、マーケティングなどのテーマを推進するために、本来の所属とは関わりなくつくられるチームだ。興味深いのが、グループのリーダー自らがメンバーを社内からスカウトすることだ。誰がメンバーに相応しいか、リーダーになる社員は常日頃からほかの部署の社員にまで目を光らせておかなければならず、縦割りの組織ではとても実現できない試みだ。このリーダーとしての経験は、いずれ社長を目指す社員にとって得難いものだろう。

 三世代にわたって、「いつでも何でもそろう」を追求してきた三興バルブ。この令和の時代に見合った新しい企業風土へと生まれ変わりながらも、顧客満足を追求し続ける姿勢は変わらない。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:長﨑洋也ほか1名
所在地:福岡市博多区石城町12-1
設 立:1951年1月(三興バルブ継手(株))
資本金:4,500万円
TEL:092-281-2763
URL:https://www.sankovalve.co.jp

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