2022年01月17日( 月 )
by データ・マックス

韓国経済ウォッチ~留学はペイするのか?(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

airplane 韓国で海外旅行が自由化されたのは、1989年1月1日である。その前の年である1988年までは、海外旅行をするためには、年は30歳以上で、公務、出張、留学などの明確な目的がないと、海外に行くことすらできなかった。海外旅行が自由化される前の88年の海外旅行者数は72万人であり、一方、去年の海外旅行者数は1,500万人を上回っているので、25年間で何と20倍くらい海外旅行者数が増加したことになる。
 この海外旅行自由化を一番歓迎したのは、大学生と新婚旅行をする夫婦であった。その前までは新婚旅行先といえば済州島であったが、自由化後は、新婚旅行先として海外にも出かけられるようになった。それからもう1つ、国内で受験に失敗した人や、国内では有名大学に入れない人に、新しい選択肢として海外留学が選ばれた。このような時代の流れとともに、海外留学は1つのブームにまでなった。

 私的な話になるが、筆者が日本に留学したのは81年で、海外旅行自由化の前である。その当時は、パスポートを取得するために、8時間の教育を受けて初めてパスポートが発行された。すなわちその当時は、自由に留学できる環境ではなかった。しかし、海外旅行が自由化され、また92年には中国と国交が樹立され、2008年にはアメリカに行くのにもビザが免除されることになったため、留学を目指す人が増えてきた。

 留学には、金銭だけでは計れない、目に見えない無形の効果があることはたしかだ。新しい世界で、新しい人との出会いは、観光だけでは得られない貴重な経験になる。「現在、韓国社会を引っ張っているのは、ウィスコンシン大学出身である」という冗談があるほど、韓国社会のいろいろな分野で、留学派が活躍しているのは、事実である。留学はこのように人生で別の情報の倉庫を持つことになるので、そのような意味では留学はお金だけでは計算できない大きな意味がある。

 しかし、留学後の現実を見ると、一概に留学を薦めるわけにもいかない状況であることも間違いない。海外で博士号を取って帰国をしても就職できず、苦労している人も多いからだ。
 それから韓国では早期留学というものがあって、それが大きな問題になっている。海外大学に留学して言葉の問題で苦労をしたことのある親は、子どもをできるだけ早く留学させたほうが言葉の壁を取り崩すことができると判断して、一時期、早期留学が韓国では流行った。その際、子どもだけを外国に行かせるわけにはいかないので、子どもの面倒をみるために母親も一緒に行く。父親のほうは韓国に残って、稼いで学費を送る。そのようなお父さんを「ギロギアパ(雁パパ)」と呼ぶ。すなわち、雁は季節ごとに移動をするように、パパは休暇を得て、年1、2回子どもを訪ねていく。その余裕すらなく、学費を送るだけで留学先に行けないパパは、「ペンギンパパ」と呼ばれている。これはまだマシな方で、父がリストラされたりすると、学費を送ることができなく、子どもは途中で帰国するケースもよくある。

 留学にはいろいろな要素があるが、留学の成否を決めるのは、やはり本人の意思があるかどうかだ。親の意思で計画された留学は、後で必ず適応の問題などを引き起こす。本人の意思と計画によって実行される留学、それから親の駐在経験によって、その国のことをよく知ったうえで行くことになった留学は、うまくいく場合が多い。

 それからもう1つ大事な要素は、財務力であろう。筆者の個人的な話で恐縮だが、筆者は子ども2人がアメリカにいる。毎月100万円以上の送金を数年間してきた。しかし、経済情勢が急激に変化した今、子どもへの送金は、とても大きな負担であった。他の費用と違って、学費は支払い時期を延ばすこともできず、本当に大変であった。勉強を途中でやめさせることになると、一生子どもに深い傷を与えることになりかねないので、何とか踏ん張ったが、大きな負担であったことは間違いない。今でも心の中で自分の選択は間違いないと自分を慰めているが、投資がペイするかどうかはわからなくなっている。

 留学は財務状況、本人の意思、投資効果など総合的に考慮したうえで、実行に移すべきことである。アメリカの場合、大学を卒業しても「いざ就職」となると、自国民を優先するため、留学生がアメリカで就職するのは、本当に難しい。奇跡的に就職できたとしても、1年後にランダムに抽選をして、その半分は本人の意思とは関係なく帰国せざるを得なくなる。子どもが卒業する頃になって初めて、私はそのような事実がわかるようになった。
 米国留学後に、米国での就職を夢見る学生も多いと思うが、現実はそれほど簡単ではない。今はインターネット時代で情報の格差が縮まり、留学派がむやみに重宝される時代でもなくなったので、留学をする前に、慎重にいろいろと調べてから実行する必要がある。

(了)

 
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