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2015年11月13日 09:46

地球のための1%、パタゴニアらしさの1%(2)~ビジネスの手法を変える挑戦

パタゴニア日本支社長 辻井 隆行氏

成功の2つの要因、「環境にいいから買ってください」はしない

 ――到達するプロセスが大事という話でしたが、ビジネスとしても成功している理由は。

パタゴニア日本支社長 辻井 隆行 氏<

パタゴニア日本支社長 辻井 隆行 氏

 辻井 パタゴニアがビジネスとして成功しているのは、2つの要因があると思っています。1つは、マーケットのニーズがちょうど、私たちがやっているのと同じような方向に変化してきたこと。何かを買う時に、スペックや価格、デザインだけではなくて、その背後にあるポリシーみたいなものが大切だというカスタマーの数は年々増えているように感じます。そもそもマーケットのニーズがそうした方向に進んでいることもあるし、パタゴニアが一貫性を持ってそうしたメッセージを発信し続けていることによって、そうしたニーズが高まっているという側面もあるのかも知れません。同時に、たとえば食品や女性用の洋服など、製品の背後にある素材調達やサプライチェーンの労働環境などを大切にしている会社が増えることで、社会全体でそういうポジティブなスパイラルが加速しつつあると感じています。

 もう1つは、アウトドアスポーツを実践する人たちのニーズに合致した製品を作るために、品質については妥協をしないという姿勢にあると考えています。製品の品質を最も大切に考えて、それについては絶対に妥協しないこと。
 「環境に良いことをしているから買ってください」とは言わないようにというのは、昔からイヴォンも口にしています。環境に配慮している一方で、防水性が劣る製品では役に立たないし、アウトドアの厳しい環境では危険ですらあるかも知れません。それではメーカーのエゴになってしまいます。

 ――今年の夏、オーガニックコットン100%に加えて、水や化学薬品、エネルギーの使用量を大幅に減少し、染色工程を見直した新しいデニム製品を出しました。「環境に良いことをしているから買ってください」はやらないが、環境主義との関係は。

 辻井 それは、私たちがプライベートカンパニーで、オーナーが実現したいことを実践する組織であることと直結していると思います。ビジネスを継続するためには、理由が必要です。たとえば、企業の責任には、通常、雇用を守ること、働いている方々やその家族の健康を守ること、利益をきちんと生んでいくこと、株主に利益を還元することなどがあります。パタゴニアは基本的には他の企業と99%は同じで、イヴォンは、その99%のことをないがしろにしろと言っているわけではなく、むしろ、そこをきちんとやることが大切だと言っています。その一方で、私たちには独自性があり、それは全体から見ると「1%の違い」かも知れませんが、私たちにとっては大きな意味を持ちます。私たちの究極的なミッションは、ビジネスを使って環境問題を解決するとことです。先ほどお話した、4つのコアバリューも、このミッションを支えるために非常に大切です。
 イヴォン・シュイナードという人について言えば、個人的な資産の形成といったことに興味がないことは間違いありません。日ごろから彼に接している社員は皆、そう感じていると思います。イヴォンという人がビジネスを続けている一番大きな理由は、環境問題を解決するツールとして、ビジネスそのものやパタゴニアという組織が力になるということを長い経験の中で実感しているからだと感じます。そこをベースに考えると、一企業であるパタゴニアが事業という枠を超えて環境問題の解決にコミットすることは、自分たちにとっては自然なことです。アクティビストであるということを会社はすごく奨励するし、コアバリューのなかの環境主義にも、単にものをつくるときに環境に配慮しようというビジネスの手法を通じたインパクトの出し方と、個人の生活のなかで環境問題に積極的に活動する人や組織を支援するという2つの要素が含まれます。

 ――パタゴニアがオーガニックコットンを100%使用するなど、ビジネスの手法を変えたと言われます。「99%」と「1%の違い」が対立することはないですか。

 辻井 私たちは直営の工場を持っていないので、世界中の工場に製品を作ってもらうわけですが、例えば、納期直前にデザイン変更を加えたとして、工場の人に不当な残業を強いるようなことになれば、それは私たちのバリューに反してしまいます。ほかの企業が効率的にビジネスを行うためにとっている手法についてはちゃんと勉強して、良いものは取り入れないといけないですが、そこに私たちのバリューを持ち込むと、場合によっては新しいやり方が必要になってくるかもしれない。「99%」と「1%の違い」はそういう関係だと思います。

 ――イメージが伝わってきます。イタリアの手工業、カバンや靴など、小ロットで昔ながらのマイスター的な作りであれば、日本にもあるし、その規模なら維持するのも可能だと思いますが、それをパタゴニアの規模で、ここまでビジネスとして到達したのは素晴らしいことですね。

(つづく)
【山本 弘之】

<プロフィール>
tujii辻井 隆行(つじい・たかゆき)
1968年生まれ。早稲田大学卒業、実業団サッカー部所属。引退後、早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シーカヤックインストラクターを経て、1999年、パタゴニアにパートタイムスタッフとして働き、2000年に正社員。2009年から日本支社長。

 
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