【マックス経営講座】中小企業の生き残り戦略 (12)DX推進後の課題とその壁を乗り越えるための知恵
はじめに
前回は、DX推進や認定取得によって企業価値を高めた企業の成功事例を紹介しました。今回はその続編として、DX推進後に多くの企業が直面する「定着しない」「活用されない」「成果が続かない」といった“次なる課題”とその壁の乗り越え方についてお話ししたいと思います。
「DX推進の過程でぶつかる壁」
DX認定や初期導入がうまくいっても、中小企業の現場では以下のような課題が浮かび上がるケースが少なくありません。
❶ ツールは導入したけど、現場が使いこなせていない
•システムが難しい
•担当者任せになっている
❷ DX化の目的が現場に伝わっていない
•「なぜこれをやるのか」が曖昧である
•経営者と現場に温度差がある
❸ 成果の可視化・評価ができていない
•有効なKPIが設定されていない
•成果が出ているのか社員がわからない
乗り越えるための3つの知恵
(実務的アプローチ)
1.段階的に定着させる
- 一気に全社導入ではなく、まずは1部門・1業務から実施する。
- 「やってみて・振り返って・修正する」プロセスを繰り返す。
- 成功体験を徐々に他部門に広げ、自然な浸透を図る。
2.現場巻き込み型のコミュニケーション設計
- 経営者が現場に「なぜDXなのか」を語りかける。
- チームで対話しながら導入方針を微修正していく。
- 評価制度に連動させて、行動変容を後押しする。
3.“成果を見える化するKPI”の再設計
- シンプルかつ行動に直結するKPIの設定(例:業務処理時間/エラー件数/顧客対応数など)。
- グラフなどで、成果を現場も確認できるようにする。
- 朝礼や会議など、「成果を共有する場」を設定する。
成功例に見る
「乗り越えのヒント」
1.製造業の例:作業日報アプリ導入後、「記録が面倒」との声
→現場代表を巻き込んだ改善会議を定例化し、使い勝手を改善。半年後、記録定着率が90%超え。
2.小売業の例:新POSシステム導入時、全社員がKPIを貼り出す「可視化ウォール」を作成。
→社内全体の目標意識が高まり、売上高5%向上。
3.建設業:週1の“現場チャット振り返り”で、使いにくい点を即フィードバック
→現場の満足度が向上し、導入定着。
まとめ
DX化の第一歩を踏み出すことと同じくらい、「どうやって継続・定着させていくか」は経営上の重要課題です。中小企業がDXを「ただのIT導入」で終わらせず、“日常業務そのものを変える手段”として定着させるには、①現場との対話、②小さな成功体験の積み重ね、③継続的なKPIの可視化と振り返りが不可欠です。DX化の“次なる壁”を乗り越えるためには、中小企業がもつ「柔軟さと粘り強さ」を発揮して地道に取り組んでいくことが最も重要で、それでこそ自社の未来が切り拓けるんだと思います。
次回は、DX化を進めるうえで必ず必要になる「人材育成」に焦点を当ててお話する予定です。
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(株)コンシャスマネジメント代表取締役/中小企業診断士
西岡隆(にしおか・たかし)
大学卒業後、会計事務所、監査法人などを経て2001年中小企業診断士登録と同時に西岡経営管理事務所を開設。21年、事業拡張にともない(株)コンシャスマネジメントを設立