【BIS論壇№ 486】第2回米国政治経済研究会

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は6月21日の記事を紹介する。

 5月10日の第1回研究会に続き、本日、第2回研究会が開催されること。会場をご提供いただき、さらに種々ご支援いただいている立教大学・郭洋春前総長に深甚の謝意を申し述べたいと存じます。

 トランプ大統領の登場以来、5カ月で、WTO(世界貿易機関)の自由貿易規則にも違反し、同大統領が矢継ぎ早に打ち出した高関税政策で世界経済は混乱の度を深め、先のカナダでのG7首脳会議でも有効な対策を打ち出せず、G7の弱体化を露呈しました。 

 これに対し、トランプ政権が高関税対策の標的とした中国は、レアメタルを中心に対抗策を講じ、さらに、ASEAN(東南アジア諸国連合)、湾岸諸国を糾合し、トランプ政権の高関税政策に対抗しています。あわせてSCO(上海協力機構)、BRICS諸国を糾合。さらに中国が注力する広域経済圏構想「一帯一路」の有力国、中央アジア5カ国との経済協力会議を開催。会議を主導した習近平・中国国家主席はトランプ政権の高関税政策を強く批判。自由貿易を守り、「人類運命共同体」の精神の下、「一帯一路」の推進に努力を傾注しようと力説した。

 中国との貿易が最大となっているBRICSの南米の雄・ブラジルもトランプ政権の高関税策に反発、中国との関係強化に動き出している。

 かくしてグローバルサウスはトランプの米国一国主義、MAGA策に対抗し、発展途上国を中心に貿易拡大を模索している。

 このような動きからトランプの米国一国主義、高関税策は世界を混乱に陥れている。さらにイスラエルのガザ紛争、イランの核施設攻撃は中東情勢をさらに混乱させ、石油の価格高騰などで世界経済への悪影響を与えつつある。

 ここにおいて平和国家を掲げているわが日本は、今こそ率先して、ウクライナ、ロシア戦争、パレスチナ紛争、イラン核攻撃の防止に尽力すべき時であろう。

 あわせ、トランプ高関税策に対抗すべく、日本としては英国も参加したCPTPP(Comprehensive and Progressive Agreement for Trans-Pacific Partnership=「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」)を広く開放し、参加申請中の中国、台湾、さらにはアジア諸国、環太平洋諸国、中南米諸国、EU(ヨーロッパ連合)などにも広く門戸を開放し、米国の反対で機能不全に陥っているWTO(世界貿易機関)にかわる自由貿易機構として活用することが強く望まれる次第である。

 さらに影響力が弱体化しつつあるG7に代わり、発展途上国、グローバルサウスを糾合している、G20強化に努力することが肝要だと確信している。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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