九州電力グループにおいて、再生可能エネルギー発電事業を手がける九電みらいエナジー(株)(福岡市中央区)。同社では、太陽光発電をはじめ、風力発電、バイオマス発電、地熱発電、水力発電と、各種再生可能エネルギー発電の事業化を行っているが、現在、新たな再生可能エネルギーとして、潮の満ち引きで発生するエネルギーを活用した潮流発電の商用化に向けた取り組みを行っている。
潮流発電とは、潮流による海水の流れの運動エネルギーを、プロペラの回転を介して電気に変換させて発電させる方式である。太陽光や風力発電とは異なり、一定の規則性をもった潮汐力によって年間を通じて安定的で、予測可能な発電方式であることから、海洋国・日本においては、そのポテンシャルの高さが注目されている。
環境省でも「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けた施策の1つとして、離島等の特定地域の導入ポテンシャルが高く、地域の脱炭素化を打ち進める手段になり得る潮流発電システムの商用化を目指している。そこで環境省では、22年1月に「潮流発電による地域の脱炭素化モデル構築事業」の公募を実施し、22年3月に九電みらいエナジーを事業実施主体とする提案が採択された。

1,100kW潮流発電機(同社発表資料より)
同社では、これまで2019~21年度の環境省事業として、長崎県五島市沖の奈留瀬戸(なるせと)の海底に潮流発電機(500kW)を設置し、実証試験を実施。そして今年2月には、この潮流発電機(500kW)を国内初となる商用スケールの大型潮流発電機(1,100kW)へと改造を施す工事を行った。
この改造工事では、発電量を増やすために、潮の向きに応じて発電機の向きを変える「ヨー制御」のほか、発電出力を高めるため、流速に応じて羽の傾斜を変える「ピッチ制御」を導入。改造工事完了後に、海底への設置工事を開始した。

(同社発表資料より)
そして今年5月には、経済産業省から電気事業法に基づく使用前検査(※)の合格証を受領。その後は五島市内の電力系統に接続し、実際の送電を行うなど、商用化を目指した実証運転を進めていく計画だ。
※電気事業法では、新しいタイプの発電設備(今回の潮流発電所など)を設置する際、安全性を確保するために、 国の検査(使用前検査)に合格することが必要となる。
同社では、現在手がけている環境省からの「潮流発電による地域の脱炭素化モデル構築事業」を通じて、我が国における潮流発電の商用化に向けた技術的実証を進めるとともに、潮流発電のビジネスモデル構築を目指していくとしている。
【坂田憲治】