小川幹事長が首班指名での政権交代を呼びかけ──無効票投じたら議員辞職だと牽制

立憲民主党 小川淳也幹事長    11日に新幹事長への交代が取り沙汰されていた立憲民主党の小川淳也幹事長が9日の会見で、首班指名選挙での政権交代を目指すべきと強調、無効票を投じた国会議員は議員辞職すべきだと牽制もした。総裁選一色になりそうな空気に一石を投じた発言で、すぐにネット上で会見内容を紹介する記事が相次ぎ、なかでも9日の産経新聞は「『首相指名で無効票投票なら議員辞職を』立民・小川氏 国民・玉木氏と参政・神谷氏念頭か」と詳しく報じた。

 この日の会見で小川氏は、石破首相辞任にともなう総裁選関連の質問に対して、「簡単に自民党新総裁に新首相の座を譲り渡すべきではないと思っている」と切り出し、総裁選後に行われる首班指名について次のように訴えたのだ。

 「当然、自公は過半数割れしているわけですから野党が一致して協力すれば、首班指名によって政権交代が論理的に可能なわけです。ですから私は野党第一党として、模索すべきだという考えをもっています」

 まさに正論だ。メディアは「新総裁=新首相」を前提にしたような報道合戦(自民党によるメディアジャック)が始まっているが、これに小川幹事長は異論を唱えたのだ。

 こうした発言を受けて私は、執行部人事に絡めた関連質問をした。

 ──新しい執行部が明後日(11日)、誕生するということだが、「首班指名選挙で政権交代を実現する、野田連立政権、あるいは野党統一候補政権を誕生させる」という布陣になるのか。幹事長が交代する可能性があると先ほどから言っていたが、昨年の秋の総選挙後、維新と国民民主党が無効票を投じて石破政権を延命させたことを厳しく繰り返し批判していたのが小川幹事長であり、今後も「維新や国民民主党に働きかけて首班指名選挙で政権交代を実現したい」と言っていたが、であれば、昨年の秋の経験も踏まえて(幹事長職を)継続したほうが(新たな野田執行部の)布陣としてはプラスではないかと思うが、幹事長自身の意気込みを含めて聞きたい。

 小川幹事長(以下、小川) 具体的な人事は代表の専権事項で、何も私から申し上げることはない。基本的に政権交代を目指しているというのは指摘の通りだと。そこはまったく同感、共感だ。

 ──本当だったら今すぐにでも、国民民主とか維新と政策協議をして野田連立政権誕生のための話し合い(基本政策の擦り合わせなど)を始めていないとおかしいと思うのが、続投を希望して「(幹事長を引き続き)やらせてください」と(野田代表に)言っていないのか。

 小川 人事に関連して代表とどういう話をしたのか、していないのかはこの場でいうのは相応しくないと思う。

 幹事長続投か否かについて小川幹事長の発言は抑制的だったが、首班指名選挙については「せっかくのお尋ねなので」と言いつつ、次のような踏み込んだ自論を訴え始めた。

「首班指名選挙について、何党の誰であれ、総理大臣の首班指名選挙で無効票を投じるなら議員辞職をすべきだと私はそれぐらいの考えをもっている。無責任極まりない。それから『自党の党首に投票してください』と(ほかの野党が呼び掛ける場合がある)。(首班指名選挙の)一回目はいい。二回目は一着と二着の人のどちらかという選挙に臨むわけだから、それでもどちらかに書けない人は議員辞職をすべきだ」

 小川幹事長は昨年秋の総選挙で自公過半数割れをしたのに、首班指名で国民民主党や維新が無効票を投じたことに対して「石破政権延命をアシストした」と批判した。  

国民民主党 玉木雄一郎    たとえば、国民民主党所属議員は、石破首相と野田代表の一騎打ちとなった二回目の決戦投票で「玉木雄一郎」と全員が書いて無効票となり、野田連立政権誕生(政権交代)の芽をつぶし、自公政権延命に手を貸した。このことを小川幹事長は当時、厳しく批判したが、今回の総裁選後の首班指名でも繰り返すことがあってはならないとの思いから、「議員辞職すべき」とさらに踏み込んだのだ。それと同時に小川氏は「あらゆる選択肢を排除しない」とも明言。かつての細川政権と同じように、首班指名での野党統一候補として玉木代表を担ぐ選択肢も否定しない立場を取ってもいた。「玉木連立政権」の選択肢も示していたともいえる。

 こうした野田連立政権だけでなく玉木連立政権の可能性も匂わせてきた小川氏は、こう注文をつけた。

「その前提で申し上げるのだが、仮に『自党の党首に投票してください』と党首なのか幹部なのかがいう場合には、その投票が無効票にならないように努力をする責任がある。従って野田代表は昨年の秋、(首班指名選挙について)野党第一党の責任において各党に協力を要請したわけだから、(今回の総裁選後に)仮に二度目同じことが起き、そこで(野党)第二党、第三党、第四党、第五党が『自らの党首に投票しろ』と所属の議員団にいうならば、それが無効票にならないように『私に投票してください』と各党に呼びかける責任がある。『首班指名選挙で無効票を投じるなら議員辞職をしろ』というのが私の基本的な考えです」

 要は、再び国民民主党が首班指名選挙決戦投票で「玉木雄一郎」と書くのなら、立憲民主党などに対しても「野田代表ではなく玉木雄一郎を野党統一候補にして政権交代を実現しましょう」といった働きかけをすべきだと訴えたのだ。

 この力強い発言を受けて私は「いまおっしゃったことをこれから訴えればいいではないか。これだけ迫力のある訴えをしたのであれば、野田代表に続投をお願いして、いま言ったことを(国民民主党や維新など)各党と話し合っていけばいいのではないか。何でやらないのか」と再質問をしたが、小川幹事長はこう答えた。

「それは私が考えることではない。代表があらゆることを総合判断されることだとかねてから言っている通りだ」

 なお冒頭で紹介した産経新聞の記事には「国民・玉木氏と参政・神谷氏念頭か」という見出しもあった。国民民主党の玉木代表は昨年秋と同様、「基本的には『玉木雄一郎と書いてくれ』ということになる」と9日の会見で表明。参院選では「自民党を下野させる」と訴えた参政党の神谷宗幣代表も、首班指名で野田代表に投じることを否定。代表の名前を書く方針を明らかにしている。

参政党 神谷宗幣代表    現時点では、国民民主党や参政党などが首班指名選挙で野田代表や玉木代表ら野党統一候補にそろって投じる兆しはほとんどなく、自民党新総裁に新首相の座を譲り渡すことになる。

 こうした事態に対して、このまま小川幹事長が続投なら異議申し立てをしていくことになるだろうが、仮に新幹事長に交代した場合、小川氏の考えがきちんと引き継がれるのかが注目される。10月4日の総裁選投開票日まで政治報道がほぼ自民党一色で染まるのか、それとも野党が一致団結をして政権交代を実現していくのかの重要局面にあるためだ。永田町から目が離せない。

【ジャーナリスト/横田一】

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