2022年05月19日( 木 )
by データ・マックス

韓国経済ウォッチ~韓中FTAついに批准(前)

韓国経済ウォッチ
日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)


 韓中両国が2015年6月1日に署名した自由貿易協定(FTA)は、去る11月30日韓国国会の本会議で批准され、12月20日から正式に発効することとなった。両国間のFTA交渉がスタートしたのは、2012年5月、発行まで要した時間は3年7カ月。また、韓中両国の政府が自由貿易協定(FTA)の交渉妥結を宣言したのは昨年11月。つまり、妥結から発効まで約1年かかった。


 一方、韓米FTAの場合、交渉は2007年4月に終了したが12年3月に発効することになったので、妥結から発効まで5年という歳月がかかった。今回の韓中FTAは妥結から発効まで1年強しかかかっていないので、両国のFTAへの姿勢がよくうかがえる。今回の批准に向けて早く進むことができた理由は多分両国の利害関係が一致しているからだと思う。


 韓国の最大貿易相手国は、ご承知のように中国である。現在はアメリカと日本への輸出額を合計しても、中国への輸出額にはおよばない。中国への輸出額は、韓国全体輸出の26%を占めており、金額では160兆ウォンくらいになる。さらに中国は今後も成長し続けることが予想され、市場の拡大が期待されている。14億人という世界最大の人口を抱える中国は、内需の規模だけでも5,000兆ウォンほどと言われている。


 韓国政府は、中国とFTAを結ぶことは、韓国の貿易の拡大にプラスになると判断しており、その締結に力を入れてきた。一方の中国側というと、韓国は中国にとって3番目に大きい貿易相手国。またFTAを締結した国のなかでは、単独で韓国は経済規模が一番大きく、中国にとってもFTA締結の意義は大きい。中国はこの韓国とのFTA締結の成果をベースにして、日中韓FTAを推進し、それから東アジア地域包括的経済連携(RCEP)でも主導権に握ろうとしている。そうすることで、TPP陣営であるアメリカと日本に対抗したいという意図を持っているのだ。双方の利害が一致したので、今回、早期妥結に実を結ぶことになったと考えられる。


 では、今回の韓中FTAの内容をもう少し見てみよう。
 12月20日に韓中FTAが正式に発効されると、高周波医療機器など韓国製の958品目は、中国への輸出における関税が撤廃される。それから、5,779品目は、12月20日に1回目の関税の引き下げがあり、2016年1月1日に2回目の関税の引き下げが予定されている。関税の引き下げによる韓国の中国への輸出増加額は1兆5,000億ウォンに上るという韓国政府の試算が発表されている。関税引き下げは相互的なものなので、中国も韓国に輸出する際にメリットを享受することになる。たとえば、中国のエアコン、洗濯機、冷蔵庫の関税は、今までは6.5%~10%だったが、これが引き下げられることになる。そうなると、低価格品の中国製品が韓国市場で増加し、その結果韓国の中小企業は大打撃を受ける恐れがある。それ以外にも懸念材料はあるが、利益だけを求めて貿易協定を結ぶことはできないので、国内で上手く調整するしか道はない。


 一方、一部ではFTA発効の効果は、それほど期待できないという声もある。というのは、韓国が今後輸出を伸ばしたい石油化学、自動車などは、関税引き下げ品目から除外されており、中国が韓国への輸出を伸ばしたい農畜産物の場合、主要品目は関税の交渉対象から外されているからだ。それでもキムチ、えび、たこなどの一部品目は関税が下がるので、中国からの輸入は増えていくだろう。両国が今回FTAを締結することによって、10年後には5,846品目において関税がなくなり、20年後には7,428品目において関税が撤廃されることになっている。

(つづく)

 

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