2022年05月19日( 木 )
by データ・マックス

良貨を駆遂する派遣法改正(前)

改正労働者派遣法が9月30日から施行され、派遣元事業者にとっても派遣労働者にとっても大きな変化が訪れている。
 現在は水面下で見えにくいが、もっとも影響が大きいのは、特定派遣事業だ。特定派遣元は、経過措置がなくなる3年後までに新たに許可を得なければ、派遣事業を営めなくなる。
 派遣元事業者だけでなく、そこで常時雇用されていた派遣労働者にとっても深刻だ。特定派遣は、IT系技術者や、建築や産業機械、化学プラントの設計や開発などの技術者派遣に多い。


特定派遣業を廃止し許可制へ一本化

 今回の主な改正点は、許可制への一本化、派遣期間制限のルール変更、雇用安定やキャリアアップ措置などの派遣元事業主の義務の追加、労働契約みなし制度の4つ。前回(2012年)改正で導入された「労働契約申込みなし制度」も10月1日にスタートした。


 改正前は、派遣元事業者は、一般(許可制)と特定(届け出制)の2つに分かれていた。派遣元で常時雇用する労働者だけを派遣するのが特定派遣で、それ以外は一般派遣だったが、その区別をなくして、すべて許可制にした。この許可条件が、中小の派遣元事業者には厳しいハードルがある。派遣元の義務も強化された。
 特定派遣元にとって、廃業するか、許可を得るか瀬戸際に立たされる。


 「私らのような特定派遣は、届出制といっても、派遣切りや日雇い派遣と違って、これまで技術スタッフを常時雇用して、IT会社数社に継続的に派遣して、派遣先にも労働者にも喜んでもらってきたのに、私ら中小では、資産基準をクリアできるか…」。厚労省の説明会に来た特定派遣元事業者は、顔を曇らせた。


 資産基準というのは、従来から、一般派遣元の許可基準にあったもので、原則として、資産から負債を控除した資産基準額が、2,000万円掛ける事業所数以上、現預金額が1,500万円掛ける事業所数以上。
 暫定的な配慮として、1つの事業所だけで、常時雇用している派遣労働者が10人以下の場合、当分の間は基準資産額1,000万円以上・現預金額800万円以上に、また同じく5人以下の場合、2018年9月29日までの間は基準資産額500万円以上・400万円以上に引き下げられているが、小規模事業所には、ハードルが高い。


 規制緩和と規制強化のどちらが良いかという原理主義論争はさておき、この場合、規制を強めて良いことがあるかと言えば、常時雇用で比較的安定していた派遣労働者を雇用していた会社(特定派遣元)の存続を揺るがすおそれがある。悪質業者を退出させるのではなく、良貨を駆逐してしまうかもしれません。


 派遣労働者にとっても、マイナス面が大きい。「非正規」や「格差と貧困」の象徴となっている登録型派遣労働者には、大した改善が見込めそうもないうえ、比較的安定した常時雇用型で「専門26業種」への派遣労働者の雇用が脅かされそうだからだ。

(つづく)

 

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