NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
今回は、11月7日付の記事を紹介する。
去る10月中旬、中国の新疆ウイグル自治区のウルムチ、クチャ、カシュガル各地を訪問しました。2度目の訪問ですが、10年前と比べると、公衆トイレなど依然として改善の余地は散見されるものの、人々の生活や社会インフラの整備、充実ぶりには目を見張るものがありました。ウイグル語と漢字が併記された看板が目立ち、民族衣装を身に付けた人々も多く、多民族文化の融合を身近に感じた次第です。
中央政府の方針もあるようで、中国国内のみならず海外からも訪問客が急増しているため、ホテル、レストランなど観光施設や交通網の拡充は北京や上海に引けを取りません。過去1年間で内外からの観光客は3億人を突破したとのこと。経済的恩恵も享受していることは容易に想像できました。
中でも、古代遺跡から発掘された多数のミイラを含め、多様な展示品を“所狭し”と陳列する博物館や歴史記念館の存在は他国の追随を許さないもので、「歴史を通じて中国の文化や先進性をアピールする」政策的意図を随所に感じさせられました。何しろ、中国各地には7,500を超える博物館が建設されています。まさに「博物館ビジネス真っ盛り」といった感じです。
なお、同自治区は中国の最西部に位置しています。甘粛省、青海省、チベット自治区と接し、それ以外にもインド、パキスタン、アフガニスタン、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、ロシア、モンゴルの8カ国と国境を接しています。国境線の総距離は5,700キロです。その意味では、中国政府が10年前から推進する「現代版シルクロード」こと「一帯一路」構想にとっては重要な拠点に他なりません。
また、新疆各地では石油やレアアースなど希少鉱物資源が相次いで発見されています。天然ガスに関しては中国最大の産出量を記録しているほど。まさに「天然資源の宝庫」でもあります。中国はEVやドローンなど先端技術製品に欠かせないレアアースで世界をリードし、アメリカとの関税戦争においても「最大の交渉材料」として活用している模様です。トランプ大統領も中国のレアアースには「ノー」と言えないわけで、その最大の産地である新疆ウイグル自治区は今後の経済発展が約束されていると言っても過言ではありません。
とはいえ、日本からの訪問者や企業の投資は「まだまだこれから」といった状況です。逆に言えば、「チャンスの宝庫」かも知れません。高市首相はAPEC首脳会議の場を活かして、韓国慶州にて習近平国家主席と初めてとなる首脳会談に臨みました。高市氏は首相就任前から人権問題に関連し、香港や新疆ウイグル自治区の状況に深刻な懸念を表明。これらの地域を直接、訪問した経験もないまま、中国への批判的な発言を繰り出すのは外交上の配慮に欠けるものと言わざるを得ません。
幸い、今回の日中首脳会談では「第3国市場での経済協力を進めることでも一致した」とする合意内容が確認されています。これは中国の進める「一帯一路」構想の中で、中央アジアなどでの日中協力案件の促進を想定したもの。カザフスタンやタジキスタンでは中国や日本製の商品への需要が急拡大中。この分野での日中相互支援ビジネスの可能性は有望であることは論を待ちません。
大事なことは、自らの五感を研ぎ澄ませ、未知の世界を理解しようとする「飽くなき好奇心」ではないでしょうか。その意味では、人権問題で批判を受けている新疆ウイグル自治区ですが、現地を定点観測すれば、日々これ変化を遂げていることに疑いの余地はありません。偏見は相互理解の天敵と言えます。
著者:浜田和幸
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