「あらゆるハラスメント防止」福岡・小郡市で条例可決~八女では否決

人権啓発を掲げる小郡市役所
人権啓発を掲げる小郡市役所

 企業や行政などにおいて、さまざまなハラスメント対策が取り組まれるなか、福岡県小郡市議会は19日、市民や市内事業者・団体を対象にした「あらゆるハラスメントの防止を求める条例案」を全会一致で可決した。県内でも県議会や筑紫野市では、議会や行政を対象にしたハラスメント防止条例が制定されているが、市民を対象とした条例は全国的にも珍しい。

 条例では、ハラスメントの定義を「暴言や暴行、脅迫、過度な要求、性的な言動、その他の違法、不当な言動により、他者に身体的、心理的、性的、経済的な損害や不利益、苦痛を与える行為」とした。さらに「人格を不当に傷つけ、個人の能力を発揮する機会を奪うだけでなく、事業者の安定した事業活動の継続にも影響をおよぼす」として、「いかなる場においても、あらゆるハラスメントを行ってはいけない」と定めた。

 罰則は設けていないが、市民に対しては「他者に対する言動に必要な注意を払うよう努めなければならない」とする努力義務を課した。

 注目されるのは、事業者の定義を法人・個人を問わず「事業を営む者」とし、国や県の機関や民間団体も対象としている点と、「市民など」としたことで、市内に住む住民だけでなく、小郡市内の事業所などで働く人や、市内の学校に通学している人も対象とした点である。

 市としては、相談窓口の設置など具体的な取り組みを今年度中に明らかにするという。

 長年にわたる小郡市の人権啓発が基盤となり、今回、市民らを対象とした条例が制定された。一方、24年には小郡と同じ筑後地区の八女市でも「あらゆるハラスメントの防止を求める条例制定を求める請願」が市議会に提出されたが、僅差で否決されている。

 八女市では、一部議員が請願に「あらゆるハラスメント」とある点を問題視し、所管の委員会・本会議で反対多数で否決された。

 請願に賛成していた八女市議会議員は、「小郡市であらゆるハラスメント条例ができたが、八女では請願を可決していれば先にできていたはず。しかし、総務文教委員長が反対して潰された。これから検討することになるだろう」とコメントした。

【近藤将勝】

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