福岡県・朝倉市両議会で外国法人による土地取得制限意見書を可決

 福岡県議会と朝倉市議会は19日、外国法人等による不動産の取得及び利用を制限するための法整備を求める意見書案をそれぞれ可決した。意見書は高市早苗首相や林芳正総務大臣などに提出される。

県庁に抗議が殺到

 朝倉市では、中国在住の人物が代表者を務める不動産会社によるマンション建設計画をめぐって「移民反対」を主張する人々からの抗議が市や県庁に殺到。朝倉市や福岡市でデモ行進も行われた。SNSで「県が建設を許可した」「2万人の中国人が移住する」という事実と異なるデマが拡散され、県が緊急会見を開催するなど行政の業務に混乱を生じさせる事態へと発展した。

 県議会では、10月9日の決算特別委員会で吉松源昭県議が「外国資本によるマンション取得と県民生活、安全保障への影響」について質問し、「県としても安全保障上の懸念および相互主義に基づき、外国資本による不動産取得に制限を設けるよう国に要請すべきと考える」と知事の答弁を求めた。

 服部知事は「県といたしましては、これまでも国民の安全・安心な生活を確保するため水源地域など公益性の高い土地については、安全保障上の観点から外国資本を含む土地取引の規制を行うよう国に対し要望を行っている」としたうえで、「7月、県議会の皆様とともに土地取引の規制を含む法令の整備について、関係省庁に対し要望を実施した」と述べた。

排外主義への懸念

 県議会と朝倉市議会が同趣旨の意見書を可決したのは、外国人住民の急増による不安やトラブルを背景とした移民反対論の高まりとともに、政府も安全保障上の重要施設周辺や国境離島での土地・建物の取得状況について調査結果を公表。国土交通省も実態把握を開始し、参政党や国民民主党など野党からも外国法人の大規模な土地取得の規制を求める声が上がっていることがある。

博多駅前の移民反対運動と抗議する市民
博多駅前の移民反対運動と抗議する市民

    経済安全保障の視点が重要である点は否定しないが、外国人受け入れの規制強化は、我が国が国際社会に対し、「排外主義的世論が高まり、政府もそれを容認した」と受け止められる可能性があり、人権尊重と矛盾が生じる。博多駅前で行われた移民反対デモに排外主義反対派がカウンターと呼ばれる抗議を行い、治安維持のため多数の警察官を動員しての警備が実施される事態もあった。外国人との共生を図る道を模索すべきだ。

<県議会が可決した意見書>

 近年、全国各地で外国の法人又は個人(以下「外国法人等」という。)による不動産の取得が進み、一部地域においては、水源地、農地、森林や我が国の安全保障や国土保全にかかわる重要施設周辺の土地などが外国法人等により取得される事例が相次いでいる。

 また、外国法人等によるマンション等の投機目的での取得が不動産価格の高騰の要因の一つではないかとの懸念もある。

 国においては、令和4年9月に重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用規制等に関する法律が全面施行されており、防衛関係施設等の重要施設の周辺や国境離島等の機能を阻害する土地及び建物の利用を制限しているが、取得そのものの規制には至っておらず、住宅地、農地、マンション等は対象に含まれていないため、今後もこうした不動産が外国法人等により取得され、我が国の主権が脅かされるおそれもあり、安全保障上の重大な問題に発展することが危惧される。

 また、我が国は、外国法人等による土地の取得及び利用を制限する権利を留保せずに世界貿易機関のサービスの貿易に関する一般協定(GATS)を批准しているため、国内外において差別的な取扱いとなる立法を行うことは認められていない。しかしながら、GATS加盟国においても、安全保障上の観点から、外国法人等に対する不動産の取得を制限する権利を留保することや例外規定を援用することにより、自国の国内法で外国法人等の不動産取得の制限を可能にした国もある。

 よって、国におかれては、外国法人等による不動産の取得及び利用を制限するため、必要な法整備に早急に取り組むよう強く求める。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 令和7年12月19日

福岡県議会議長 藏内勇夫

衆議院議長  額賀福志郎殿
参議院議長  関口昌一殿
内閣総理大臣 高市早苗殿
総務大臣   林芳正殿
法務大臣   平口洋殿
財務大臣   片山さつき殿
農林水産大臣 鈴木憲和殿
国土交通大臣 金子恭之殿

【近藤将勝】

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