25年は1棟完成
天神ビッグバンと同様に、福岡市が主導する都心部再開発プロジェクト「博多コネクティッド」。2019年1月に始動した博多コネクティッドは、博多駅から半径約500mの約80haを対象エリアに、容積率などの規制緩和や国の金融支援、税制優遇などによって、耐震性の高い先進的なビルへの建替えを促していくほか、交通基盤拡充などによって都市機能の向上を図っていこうというプロジェクト。天神ビッグバンボーナス(天神BBB)と同様の建替え促進のためのインセンティブ「博多コネクティッドボーナス」(以下、博多CB)もある。交通インフラ整備などの独自の取り組みもあるものの、基本的には“博多版ビッグバン”といって差し支えないだろう。
ビルの建替え目標は28年末までに20棟で、市の試算では目標を達成した場合の10年間の建設投資効果が約2,600億円、建替え完了後には年間約5,000億円の経済効果が見込まれるとしている。エリア内における25年3月末時点での建築確認申請数は32棟(19年1月~25年3月末)、竣工棟数は26棟となっている。
これまでに博多CBの認定を受けた大規模プロジェクトとしては、「博多イーストテラス」(22年8月竣工)と「コネクトスクエア博多」(24年3月竣工)の2棟のビルが完成・開業。そして25年は、新たに1棟のビルが竣工を迎えた。
博多駅前3丁目で25年6月に竣工したのが、中央日本土地建物(株)による「中央日土地博多駅前ビル」だ。同ビルは「(仮称)博多駅前三丁目プロジェクト」として進んでいたもので、他の再開発のように既存の建物をすべて取り壊して新たな建物を建てるのではなく、従前にあった「YJカード本社ビル」の躯体を一部再利用しているのが最大の特徴。建物は地上13階・地下2階建だが、地下部~地上2階の既存躯体を新築建物に再利用することで、解体時および新築時のCO₂排出を大幅に削減する環境配慮型の免震オフィスビルとなっている。1階ピロティ広場は周辺の緑や賑わいをつなげるとともに街の回遊性の向上にも寄与し、博多コネクティッドをはじめ、福岡市が推進する「都心の森1万本プロジェクト」および「Fukuoka Art Next」の取り組みを実施することで、博多駅周辺地区の国際競争力向上に貢献していくとしている。
駅前ランドマーク完成へ
そして26年は、博多コネクティッドの目玉プロジェクトの1つである「西日本シティビル」がいよいよ竣工・開業を迎える。
「西日本シティビル」は、かつて博多駅前・博多口のランドマーク的な存在だった「西日本シティ銀行本店本館ビル」を建て替えるかたちで現在進んでいる「西日本シティ銀行本店本館建替えプロジェクト」によって誕生する新ビルだ。事業主は(株)西日本シティ銀行と福岡地所が出資する「特定目的会社Walk」で、25年10月に新ビルの名称が「西日本シティビル」と発表された。
同建替えプロジェクトは、西日本シティ銀行と福岡地所が共同で西日本シティ銀行本店本館ビルを建て替えるもので、西日本シティ銀行保有ビルの連鎖的再開発の第1弾に位置付けられている。西日本シティ銀行の本店機能に加え、オフィスフロアや商業店舗を配置した複合ビルを計画しており、建物の構造は地上14階・地下4階建で、はかた駅前通り地下通路にビルの地下部分で直結する。
デンマークを拠点に活動する国際的な建築デザイン事務所「3XN Architects(スリーエックスエヌアーキテクツ)」が国内で初めて内外装のデザインを手がけ、博多駅前の新たなランドマークとなる洗練されたデザインを実現。地上部では建物のコーナー部を持ち上げることで人々を迎え入れる空間を形成し、9階では切り込みを設けて建物のボリュームを分節することで、周辺街区のスケールに調和させ、都市景観に配慮するほか、セレーション(鋸歯状)化されたタイルとガラスの外装により光の反射を抑え、周辺環境にも配慮している。また、敷地北東側には地上・地下の歩行者ネットワークの核となる大規模立体広場「コネクティッドコア」を整備し、博多駅から住吉通りやはかた駅前通りへの回遊性向上につなげる。さらに、オフィスフロアは博多駅前エリア最大級の基準階面積約1,190坪を有するハイグレードオフィスとなるほか、地下には約400人規模のホールも設置する。
新ビル名称とともに発表されたフロア構成では、新ビルの2階部分に西日本シティ銀行および西日本シティTT証券(株)の本店営業部ならびにグループ総合受付を配置。3階から9階の一部に(株)西日本フィナンシャルホールディングス(西日本FH)、西日本シティ銀行および西日本FHのグループ会社(一部)の本社機能を配置するほか、9階の一部から13階がオフィスとなる。また、低層部である地下1階と地上1階部分は商業店舗となるほか、地下2階に最大座席数約400席の多機能ホール「NCBホール」を配置する。
西日本シティビルは26年3月に竣工する予定。その後、西日本シティ銀行の本店機能などを移転したうえで、26年夏頃の開業を予定している。

西日本シティビル
事業主 :特定目的会社Walk
敷地面積:5,230m2
延床面積:7万5,678m2
規 模 :地上14階・地下4階建
用 途 :銀行、オフィス、店舗、駐車場
竣 工 :2026年3月(予定)
空中都市PJが中止に
一方で25年9月、九州旅客鉄道(株)(JR九州)はこれまで実現に向けての検討を進めてきた「博多駅空中都市プロジェクト」の中止を発表した。
同プロジェクトは、JR九州が19年3月に博多駅の線路上空を立体的に活用する「博多駅空中都市構想」の実現に向けてプロジェクトチームを立ち上げて検討を進めてきたもので、22年3月に「博多駅空中都市プロジェクト」として事業着手を発表していたもの。コロナ禍であった当時、ポストコロナに向けての国際ビジネス都市・国際観光都市にふさわしい機能を備えるとともに、博多口と筑紫口の回遊性を高め、賑わいのある街並みを創出すべく、最先端オフィスやラグジュアリーホテル、商業店舗などで構成される複合ビルを新築する計画で、28年末の竣工目標に向けて、現地ではビル工事にともなう仮設工事などを行っていた。
だが、同プロジェクトの計画地が博多駅の線路上に位置することで、その特殊性から施工の難易度が高く、昨今の工事費高騰の影響を大きく受けたことで、当初の想定よりコストが膨れ上がることが判明。当初の計画では事業計画が成り立たない状況となったことで、JR九州では建物規模や用途などの見直しを計画に反映し、収入やコストを含めたあらゆる面において、さまざまな可能性を模索し、事業の見直しに努めてきた。だが、同社の取締役会において、実行可能な事業計画を策定することが困難であるとの結論に至ったことで、計画中止を決定し、発表となった。
進む2つのPark-PFI
再開発とは少し毛色が違うものの、博多コネクティッドエリア内では現在、2つの公園で福岡市が進めるPark-PFIの活用によるリニューアル事業が進行している。
まず、前出の「西日本シティビル」のすぐ裏手では、Park-PFIを活用した「明治公園」のリニューアル工事が始まっている。同公園のリニューアル事業の優先交渉権者には、東京建物(株)を代表とし、(株)梓設計 九州支社、(株)ランドスケープむら、(株)旭工務店、木下緑化建設(株)で構成されるグループが決定。同グループによる提案では、「THE GATEWAY PARK “HAKATA MEIJI”」として、博多のおもてなしの心・都市のランドマーク・新たなライフスタイルへの“Gateway”となり、次代に受け継ぐべき未来志向の公園をコンセプトとしている。具体的には、九州の陸の玄関口である博多駅前に“新たな顔”を創出するとして、樹木と建築が一体となった新たなランドマークを誕生させていくとしており、公園敷地目いっぱいに広がる立体的・複合的な魅力あふれる空間デザインがなされた建物施設を整備する計画。建物1階部分には飲食系店舗およびトイレ、喫煙所が、2階部分には飲食系店舗やテラス状通路が配置され、3・4階部分にはジムやランニングステーション、サウナで構成される代表企業直営の健康増進施設が入居。そして施設内に張りめぐらされた「立体回廊」と、屋上部分に配置された「5つの広場」で構成され、上りたくなる屋外階段や、居心地の良いテラス、行ってみたくなる屋上広場など、空間デザイン上の工夫によって新たな体験価値 “New Park-Life”を創出していくとしている。
もう1つ、鉄道高架に隣接した博多駅南1丁目の「音羽公園」でも、Park-PFIの活用によるリニューアルが行われようとしている。25年8月には、大和リース(株)福岡支社を代表企業とし、axonometric(株)、(株)エスティ環境設計研究所、古賀緑地建設(株)で構成されるグループが優先交渉権者に決定している。同グループによる提案概要では、基本方針として「Switch Park~『憩う 音羽の森』都心の過ごし方の再編集」を掲げており、①空間計画(都市と森をつなぐ、1つなぎの森)、②管理運営(快適で安心な空間と利用者ニーズを反映)、③地域連携(地域との共働による開かれた運営、賑わい創出)の3つを提示。これらを軸に、ネイチャーポジティブや、市民のウェルビーイング向上を目指して、公園を居心地の良い空間へと刷新することで、緑豊かなまちづくりを推進していくとしている。具体的には、福岡市が進める都心の森1万本プロジェクトも踏まえたうえで、公園でもあり森でもあるような、屋上まで密に緑化された特徴的なデザインの建築物を整備していく計画。また、人々の活動を緩やかにつなげるゾーニングにより、賑わいと憩いを身近に感じられ、ファミリー層やビジネスマン、若者から高齢者まで、多様な人びとが居場所を得られる公園整備が計画されている。今後のスケジュールは、26年度中の着工および27年冬の供用開始を予定している。
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博多コネクティッドエリア内ではほかに、まだ具体的な建替え計画が公表されておらず、博多CBの認定も受けていないが、3つのビルでも建替えが検討されているという。博多駅前1丁目の博多新三井ビルディング(74年11月竣工)、博多駅前2丁目の福岡センタービル(72年3月竣工)、博多駅前3丁目の日本生命博多駅前ビル(74年11月竣工)の3つのビルで、これらは63年12月に博多駅が現在地に移転・開業した後に、駅周辺の都市化を進めるべく福岡市が制定した「ビル誘致条例」(67年10月制定)によるインセンティブや、博多までの新幹線開通(75年3月)などを受けて、同時期に建てられたもの。いずれもすでに築40年以上が経過して更新期を迎えており、博多コネクティッドを活用して今後再開発に踏み切る可能性は十分考えられる。なお、このうち博多新三井ビルディングでは「博多新三井ビル既存建物上屋解体工事」として現在、26年3月末までの予定で三井住友建設(株)の施工による解体工事が進められている。
徐々に進んできた感のある博多コネクティッドだが、もともと先行する天神ビッグバンに比べると、建替え目標棟数(天神ビッグバン:30棟/博多コネクティッド:20棟)が少なく設定されていたほか、スタートから間もなくコロナ禍が襲来したこともあって、進行中のプロジェクト数は少ない印象だ。さらに、JR九州による「博多駅空中都市プロジェクト」の中止もあって、すでに終盤戦に突入した天神ビッグバンとは違い、ここにきて勢いに陰りが出てきている感は否めない。今後、前述の博多新三井ビルディングなどの3つのビルで新たな建替えプロジェクトが発表されて巻き返しとなるか、それとも天神ビッグバンの後継プロジェクトと目される「グリーンボーナス」に取って代わられて尻すぼみとなるのか、引き続き動向が注目される。
【坂田憲治】

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