改正区分所有法

 2026年4月に施行予定の区分所有法等の改正法は、建設業や宅建業者にとって実務上の大きな転換点となります。今回の改正は、国民の1割超が居住するマンションについて、建物と居住者の「2つの老い」が進行し、外壁剥落等の危険や集会決議の困難化といったリスクが増大している背景を受けて、管理と再生の円滑化等を目指すものであり、合意形成の円滑化と再生手法の多様化のための整備などがされています。

合意形成の円滑化
出席者ルールの見直し

岡本弁護士
岡本弁護士

    総会の普通決議は「全区分所有者」の過半数による決議が必要でした。そのため、実務上、決議に参加しない無関心な区分所有者や連絡が取れない「所在等不明区分所有者」が多数存在し、出席者が少ないと決議要件を満たせず、管理組合としての合意形成の障害になっていました。そこで改正法では、建替え決議など区分所有権の処分をともなう決議を除き、従来の「全区分所有者」の多数決から、「集会出席者」の多数決で決することが可能となります。

 さらに改正法では、裁判所の認定を受けることで、所在等不明区分所有者をすべての決議の母数(分母)から除外できる制度が新設されます。これにより、多数決の要件を満たしやすくなり、停滞していた案件についての合意形成が期待できるようになります。

マンション再生手法の拡充と要件緩和

 これまでマンションの「建替え」には5分の4以上の賛成が、それ以外の「敷地売却」や「一棟リノベーション」には原則として全員同意が必要であり、いずれも事実上困難でした(24年4月現在でマンションの建替実績は累計297件のみです)。そこで、次のような改正がされ、再生が円滑に進むことが期待されます。

ア 決議要件の引き下げ

 ①耐震性の不足、②火災に対する安全性の不足、③外壁等の剝落により周辺に危害を生ずる恐れ、④給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となる恐れ、⑤バリアフリー基準への不適合等の一定の客観的事由がある場合、建替え決議等の要件が5分の4から4分の3へ緩和されます。

イ 新たな再生手法の創設

 ①建物・敷地の一括売却、②建物を取り壊して敷地売却、③建物の取り壊し、④一棟リノベーション(建物更新)については、建替えと同様の多数決(原則5分の4、客観的事由があれば4分の3)での決議が可能となる制度が創設されます。区分所有者にとっては再生の選択肢が増えることになりますし、建設業者にとっては、全面建替えだけでなく、既存躯体を生かした大規模な一棟リノベーション工事の受注機会が拡大する可能性があります。

 その他にも、再生事業を推進するうえでネックとなっていた占有者の立ち退き問題についての「賃貸借の終了請求」の整備や隣接地や底地の権利を、再生後のマンションの区分所有権に権利変換できる制度など、より円滑に再生できる制度ができています。

 今回の法改正で、高経年マンションの再生を加速させることが期待されます。建設業・宅建業の皆さまにとっては、新制度を熟知し、管理組合に対して「建替え」か「一棟リノベーション」かといった、多様な出口戦略を提案できることが必要になってくるでしょう。


<INFORMATION>
岡本綜合法律事務所

所在地:福岡市中央区天神3-3-5 天神大産ビル6F
TEL:092-718-1580
URL: https://okamoto-law.com/


<プロフィール>
岡本成史
(おかもと・しげふみ)
弁護士・税理士
岡本綜合法律事務所 代表
1971年生まれ。京都大学法学部卒。97年弁護士登録。大阪の法律事務所で弁護士活動をスタートさせ、2006年に岡本綜合法律事務所を開所。経営革新等支援機関、(一社)相続診断協会パートナー事務所/宅地建物取引士、家族信託専門士。ケア・イノベーション事業協同組合理事。

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