インドは遠い
福岡からインドへの直行便はない。一般的には香港、シンガポール、仁川(インチョン)経由が主流だ。このシリーズの第1弾で述べたように行きは乗り換え時間を含めて11時間を超える。帰りは1時間減って10時間はかかる。インドと福岡の往来数の現状では直行便の実現は無理である。また福岡に定住しているインド人の数は少ない。カレーライスレストランのオープン時に5店を取材したことがあるが、すべてネパール人の店であった。歴史的また人的交流を振り返れば疎遠であった。だが、インド経済の大躍進を活用して自社の経営伸長のチャンスとしないことは、経営者としては失格である。
リックスインド【バンガロール】工場
3日目、(株)リックスのインド工場視察に出かけた。この日が製造開始の日であった(会社沿革は後述する)。北九州市に鉄鋼製造業者は無数にあるが、福岡における三大メーカーとしては、同社以外には、昭和鉄工、正興電機製作所が挙げられる。インド新工場の敷地内でリックスの安井卓社長から話をうかがった。
インドへの初進出は、2018年のムンバイであった。もともと、インドの代理店とは取引があった。インド市場を深掘りするには直接、進出することが賢明であると結論を下した。同社は回転軸メーカーだが、商社としての実績もかなりある。ムンバイの売上実績の伸びとインド市場の進展ぶりから工場建設を決定した。ちなみにインド工作機械の伸びは年率9%であった。
21年あたりから工場用地を物色し始めた。それと同時に広大なインド市場を勘案すると「工場はバンガロールが適切ではないか」という考えに集約されてきたという。グッドタイミングでバンガロールにおける工場団地計画を耳にし、不動産確保に走った。8,000m2の用地を確保して、25年10月に1,800m2の工場を立ち上げた。その期間にほかに4社が同用地で工場建設に着手した。4社の工場団地進出の現実を目の当たりにして安井社長は「工場建設の判断は間違いない」と確信を深めた。①バンガロールから北西に車で2時間という利便性、②工場団地の条件が良いという利点がある。

人材確保は合格点
海外での工場建設は13年の大連以来、12年ぶりになる。「さて、どう幹部たちをそろえるか?」と安井社長は秘策を練り、日本(福岡)からバンガロール工場の責任者2名を抜擢した。リックスの中堅幹部たち2人は喜んで快諾した。「観光、遊びでインドに来ることは考えてもいませんでした。しかし事業となると話は別です。肌感覚でもわかります。インドは今後10年間で世界の経済大国になるでしょう。こういう経済大発展ができるところで我が社の製品を市場に浸透させるビジネスにはやりがいがありますね」と意気込みが違う。この人事からも「日頃から社員たちが会社を誇りに思っている」社風が垣間見える。
では現地インド人の教育はどのように行っているのか。福岡工場を中心に国内へ招いて、6カ月から8カ月の研修を行った。大半が20代であった。工場で全員と挨拶を交わしたが、全員目の輝きが違う。「すばらしい機会を得ることができた」と嬉々としている。日本研修生全員と挨拶を交わした。日本語も達者である。
安井社長の見解は次の通りだ。①インドの産業は多面的で深みがある。同業も力をつけてきている。こちらも技術の深掘りに専念する。②やはり勝負処は経済成長が大きくなされる市場である。インドである程度の伸長実績を上げれば確実にほかの領域に波及すると確信している。③その為には工場への投資を怠らないことが重要だが、まずは地元インドの方々を良き人材に育成することである。「地元で尊重してもらえる企業になれたら、また新たな道が拓かれると思っています」と語る。









