2025年1月28日に埼玉県八潮市で起こった、下水道管の破損を原因とする大規模な道路陥没事故。この事故による復旧工事は、1年以上経った現在も続いている。国土交通省では、事故を契機とした有識者委員会において、インフラマネジメントの戦略的な転換を提言。提言で示された5つの論点を具現化するために、26年1月30日に「第1回インフラマネジメント戦略小委員会」(委員長=家田仁・政策研究大学院大学特別教授)を開催した。今後も複数回にわたり議論し、今夏をメドに中間とりまとめを行う予定だ。
埼玉県八潮市の事故現場(2026年1月31日現在)
市民も「自分ごと」に
初回は小委員会で検討する項目の整理と、委員からの意見聴取を行った。冒頭の挨拶に立った家田委員長は、八潮市での事故発生当時と比較して世間の関心が薄らいでいるにもかかわらず、復旧が完了せず困難な生活を送っている住民が数多くいる点に言及。「今までは、インフラは整備とメンテナンスは別との扱いが多かった。人口減少を考えると整備とメンテナンスは本来一体であるべきで、これを〝マネジメント〟と呼んで考え方を充実していくことを考えてきた。これまでの考え方を改めるのが基本ではないのか。委員の先生からも積極的な意見を求めたい」と小委員会の意義を語った。
今後のインフラのマネジメントを効率的、効果的という観点から、小委員会の主な審議事項をまとめた。審議事項としては、①地方公共団体管理分も含めたさまざまな分野のインフラに関する実態の把握、②維持管理の容易な構造の採用などを通じたメリハリのある維持管理、③AI・ロボット等の新技術の導入の方向性、④インフラのマネジメントを支える主体間の連携・協働体制、⑤今後のインフラのマネジメントの在り方―の5つを示した。とくに、①は提言でも指摘された「見える化」に通じるものとしている。
提言で指摘された「見える化」は、市区町村などの管理者や担い手の「見える化」と、市民への「見える化」の2つ。これらは、点検・調査・診断における新技術の導入やデジタル管理体制構築などテクニカルな面と、インフラ老朽化を市民の「自分ごと化」するための認知や理解を共有することの重要性を示したものとされる。
小委員会では、5つの審議事項を踏まえてインフラの点検・調査・計画・設計・整備・維持管理を議論する。具体的には、これらに関する予算の安定的な確保や財政上の支援、国の関わりの強化を検討。技術者不足に対する連携・協働体制、支援体制の強化やデジタル技術活用に向けた支援の強化、民間ノウハウの最大限の活用などを議論する。
自治体に専門家派遣へ
これまでの取り扱いとして、インフラの老朽化に対しては、2013年11月に関係省庁連絡会議において「インフラ長寿命化基本計画」を策定。国や地方自治体などの全分野にわたるインフラ長寿命化の計画体系を構築した。基本計画に基づき策定された国土交通省の行動計画は、期限が25年度までの計画であり、「26年度以降の計画を速やかに策定する必要がある」(国土交通省)状況となっている。
とくに、橋梁や水道、下水道では市区町村の管理が多くなっている。一方で、土木・建築技術系職員は約半数の市区町村で5人以下、約25%の市区町村が0人で、土木費も1993年度の約半分に減少している。
こうした現状を踏まえて、国土交通省では複数の自治体間の広域的な連携によるインフラマネジメントである「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」を推進。導入から実践までサポートする手引きを策定し、無料公開している。
インフラメンテナンスの新技術活用を促進するために、国土交通省が地方自治体に対して専門家などのアドバイザーを派遣する制度を検討しているという。
新たな時代に対応
「群マネ入門超百科 群マネの手引きVer.1」
がダウンロード可能
初回は、参加したすべての委員から自由な意見の聴取を行った。委員からは、法制度が社会課題や技術の変化に対応しきれていない点が指摘され、新しい時代にふさわしいインフラ関連の法制度が必要だとの意見が出された。また、別の委員からは、新しいインフラマネジメントを構築するうえで、課題を整理する必要があり、あるべき方向性をしっかり打ち出すべきとされた。
行政組織は技術職員がいることが前提の仕組みになっており、AIなど少人数で仕事する社会では見直しが必要であることや、財政面では自治体の身の丈に合った柔軟な制度の必要性、さらにインフラが市民のためにあることを行政側がきちんと伝える義務があるという意見もあった。群マネに関しても、委員からは県を超えての運用ができない点を小委員会で議論することを主張する意見があった。
多くの委員からの意見を踏まえ、家田委員長は「我々は崖っぷちにいる。社会資本整備の第2ステージとして、物事をオープンにしていく。基本的な考え方を明瞭にして、法制度を整備して制度的にバックアップする必要がある」とし、今後の議論でも委員からの積極的な意見表明を求めた。
<プロフィール>
桑島良紀(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

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