高市首相が総選挙で詐欺的発言か──減反政策回帰の鈴木農水大臣との食い違い明白

鈴木農水大臣

    「高市政権(首相)は詐欺的発言をしても選挙で勝てばいいという姿勢なのか」と疑いたくなる会見での質疑応答があった。3月10日の鈴木憲和・農水大臣会見で、以下の質問をぶつけたときのことだ。

 「高市総理・総裁は、総選挙で食料安保の重要性を強調しながら、『食料自給率100%を目指す』と言っていたが、これを聞いた有権者は、『石破前政権の米増産に戻すのか』という印象を受けたと思うが、これは単なるリップサービス、詐欺的発言なのか、それとも鈴木大臣に対して『減反政策に戻すような発言は控えるように』『石破前政権の米増産に戻す』という指示があったのか。どちらなのか」

 これに対して鈴木大臣はこう答えた。

「農林水産省としては、まず(食料・農業・農村)基本計画で、今後お米については791万トンから818万トンに増やしていくと。これは主食用米だけではなくて、輸出用や米粉やさまざまなものを含めて増やしていくことは基本計画ですでに決まっているところです。だから、その方針に基づいて、今後お米については多様なパターンで増産をしていくということは、もともとから変わるところではない」

 理解困難な発言だった。コメ政策の経過を振り返ると、石破前首相はコメ増産を打ち出し、小泉進次郎・前農水大臣(現・防衛大臣)が牽引役となっていた。だが、高市政権が昨年10月に誕生、鈴木農水大臣に代わった途端、就任会見で「需要に応じた生産が基本」と発言。そして石破前政権のコメ増産方針との整合性を指摘されても「見直すと捉えるのであれば見直しになる」と強調、コメ増産から実質的な減反政策に戻す方針変更をしたのは明らかだった。それなのに、鈴木大臣は一連の経過を否定するような発言をしたのだ。

 そこで、「鈴木農水大臣になって、米増産の(石破)前政権の政策が変わったという印象を与えているが、それは単なる誤解、誤った理解ということなのか」と再質問をしたが、鈴木大臣は「この基本計画に基づいて全体として増やしていく方針は変わらない」と強調、コメ増産の方針に再び戻したとは認めなかった。

 結局、選挙中の「食料自給率100%を目指す」という高市首相発言は、単なるリップサービスで、有権者を騙す詐欺的発言だったのではないか。鈴木大臣のコメ増産見直し発言を撤回、石破前政権の政策に戻すと宣言しないと実現は困難で、整合性が取れないからだ。

 食料自給率100%を目指すのに不可欠な「農業者への所得補償」についても、具体的内容が不明瞭なままだった。そこで最後に、「米増産、食料自給率100%を目指すには、農業者への所得補償が不可欠だと思うが、いつ頃までにどんな予算規模で決めるのか。野党が選挙中に制度創設の重要性を訴えていたが、自民党、高市政権としては、いつまでにどの規模でやるのを決めるのか」と聞くと、鈴木大臣は以下のように答えた。

「私たちとしては、これから水田政策の見直しを来年に向けてやる。それは、6月までに結論を得たいというふうに思っているので、そうしたところのなかで議論したいと思う」

 これも、高市首相の総選挙中の決意表明「食料自給率100%を目指す」とギャップがあるのではないか。来年6月は1年3カ月後。農業者への所得補償制度を求める野党は遅すぎるとして、創設時期の前倒しを訴えていたからだ。また予算規模についても無回答だった。

 選挙中の高市首相発言については、整合性があるのか実現性をともなうものなのかを厳しくチェックしていく必要がありそうだ。通常国会での与野党の論戦が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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