消費税減税維新吉村代表の正論

政治経済学者 植草一秀

 いま何よりも求められる経済政策は消費税減税。そもそも消費税は二重課税である。個人が消費する際に誰のどのようなお金を使うのか。一般的には自分で働いて得たお金を使う。労働者が手取りを受け取る前に何が行われるか。税金を差し引かれる。社会保険料も差し引かれる。この負担が極めて重い。

 働いて得た収入から所得税や社会保険料が差し引かれる。差し引かれた後のお金を「可処分所得」という。この「可処分所得」を使って消費する。すると何が起こるのか。消費した金額の10%、あるいは8%がさらに追加で奪われる。これが消費税である。

 所得税を取られたあとの「可処分所得」で消費すると、さらに「消費税」が取られる。完全なる二重課税なのだ。消費税を取られないようにするにはどうしたらよいか。方法は一つしかない。消費をしないこと。消費をしないことが消費税でお金を奪われない唯一の方法だ。

 多くの個人がこの行動を取るとどうなるか。日本全体の消費が落ち込む。日本のGDPの約半分が個人消費。個人消費が落ち込めば経済は成長しない。実際に日本経済はまったく成長していない。1994年以降の日本の実質GDP成長率は平均で0.6%だ。ほぼゼロ成長が30年も続いている。

 このなかで個人消費の推移を見ると重要な事実が明らかになる。わずかだが増え続けた個人消費が、あるときを境にまったく増えなくなった。増えなくなったというより、減り始めたのだ。あるときとは2014年4月。2014年4月を境に個人消費が減少トレンドに転じた。

 何があったのか。消費税増税だ。日本の消費税率が5%から8%に引き上げられた。この瞬間から日本の個人消費が減少に転じた。消費税率が5%のときまでは、辛うじて日本の個人消費は増えていた。しかし、5%を超えると減少に転じた。

 日本の経済を良くしようと考えるなら、消費税率をまずは5%に引き下げるべきだ。これが一番効果的な景気対策になる。高市首相は2月の選挙で、食品消費税率ゼロを2年間実施することを公約にした。2025年度内に実施すると言った。約束した以上、実行してもらわねばならない。

 ところが、「国民会議」という名の「悪徳会議」が消費税減税つぶしに動いている。推進者は財務省と日本経済新聞・読売新聞を中心とする新聞業界。新聞は新聞の軽減税率廃止を恐れている。維新の吉村代表が、食品消費税率ゼロは公約だからやらねばならないと述べた。珍しくまともなことを言った。だが、ネットのニュースサイトがこの事実を大きく伝えない。

 高市内閣が公約違反に突き進む場合、国民は高市首相を退陣に追い込むべきだ。日本保守党の代表も食品消費税率ゼロをつぶそうとする国民会議を批判する。財務省から「指導」を受けた業者が消費税率ゼロを実施するのに、システム改変に1年の時間がかかるという「虚偽証言」をしている。そんな事業者はいまの世の中で生き残ることはできない。馬鹿げた話だ。

 財務省は日本経済新聞と結託して消費税減税つぶしに突き進んでいる。財務省に政策を仕切られたら終わり。財務省のデタラメ経済政策で日本経済は40年を失った。財務省は財務省の利益しか考えない。社会保障支出は際限なく切り刻む。財政再建のためではない。利権財政支出に回す資金が圧迫を受けるからだ。利権財政支出は青天井でバラマキを行う。利権財政支出は財務省に見返りがある財政支出。ここには糸目をつけずに金をばら撒く。

 税の調達で最大の優遇を図るのが大企業と富裕層。大企業には租税特別措置で大恩典を与える。大企業の法人税実効負担率は著しく低い。富裕層には20%の分離課税を認める。所得税には収入が増えると税率が上昇する「累進税率構造」が用いられているが、金融所得課税は適用外だ。富裕層、大企業株主の収入は利子配当などの金融所得。税負担率は20%に向けて低下の一途をたどる。

 大企業は巨大利益を使わずに社内に溜め込む。「内部留保」と呼ばれるもの。2025年3月末の残高は637兆円。企業は内部に金を溜め込まずに賃金を増やしたり、投資を拡大したりすべきだ。これを行わず、企業内部にお金を溜め込むなら、その内部留保に課税するべきとの声が上がる。すると出てくる反論がある。「二重課税」だ。企業が法人税を支払った課税後利益の処分での一形態が内部留保。内部留保に税を課すと二重課税になるとの反論が出る。

 ちょっと待て。消費税はどうなのか。消費税はれっきとした二重課税だ。個人が二重課税を強いられているのだから、企業の内部留保に課税してもおかしくない。日本の国税収入は2020年度から2025年度までの5年間に年額で20兆円増大した。20兆円の自然増収が生まれている。合計で20兆円ではない。1年あたりの税収の上振れが20兆円。これが今後も続く。

 20兆円の恒久増税が行われたということ。これを国民に還元するのが「責任ある積極財政」だ。高市内閣がやっているのは、20年度に大膨張して25年度までゆっくり圧縮してきた財政支出を、25年度に一気に再拡張させた利権バラマキ財政である。利権財政支出を再増大させるのではなく、20兆円上振れした税収を国民にお戻しすることを軸に、財政政策の軌道修正を行うべきだ。

 消費税率を5%に引き下げると税収が国と地方合わせて15兆円減る。しかし、国だけで税収が20兆円上振れしたのだから、これを財源にして消費税率5%を恒久措置として実施できる。こんなまっとうな政策提案さえ出てこない国民会議は、単なる「獄民会議」。消費税減税つぶしを絶対に許さない。すべての国民がこの点で結束しなければならない。


<プロフィール>
植草一秀
(うえくさ・かずひで)
1960年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒。大蔵事務官、京都大学助教授、米スタンフォード大学フーバー研究所客員フェロー、早稲田大学大学院教授などを経て、現在、スリーネーションズリサーチ(株)代表取締役、ガーベラの風(オールジャパン平和と共生)運営委員。事実無根の冤罪事案による人物破壊工作にひるむことなく言論活動を継続。経済金融情勢分析情報誌刊行の傍ら「誰もが笑顔で生きてゆける社会」を実現する『ガーベラ革命』を提唱。人気政治ブログ&メルマガ「植草一秀の『知られざる真実』」で多数の読者を獲得している。1998年日本経済新聞社アナリストランキング・エコノミスト部門第1位。2002年度第23回石橋湛山賞(『現代日本経済政策論』岩波書店)受賞。著書多数。
HP:https://uekusa-tri.co.jp
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